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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・36アワーズ

悲しい真実

悲しい真実


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・36アワーズ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 クリスティーン・フリン(Christine Flynn)
 好奇心旺盛で、それが執筆に生かせることを喜んでいる。作家として、人間関係を探り、とくに男と女のほろ苦い関係を描くことが楽しみだという。

解説

 母の死による残務整理をするため、イブはグランド・スプリングスに帰省した。慣れない雑務に追われる中、ある男性が訪ねてきた。リオ・レッドトリー――六年前イブがすべてを捧げて愛した人。町を去ったとき、なんの連絡もよこさなかった人。以来イブはひとり傷心を抱えて生きてきた。今さらなんの用だろう? 彼は、母の死についての記事を書くため、取材しにきただけだという。冷ややかな彼の瞳を見据えながら、イブは再び傷ついていた。
 ★市長の死にまつわる重要なエピソードが本作でお読みいただけます。★

抄録

 リオはゆっくりと彼女の体を腕のなかに包みこんだ。彼の胸を頬に感じた瞬間、イブはあらがう気力がなえていくのを意識した。自分自身とリオの両方に抵抗するのは無理だった。
 力を抜いて、イブは彼のたくましい体にもたれた。リオは彼女の髪を繰り返し撫でている。その手の感触に、彼女は慰められた。こんなふうに彼に抱きしめられるところを、何度想像したことか。
「悪くないだろう?」
 イブはうなずき、彼のシャツにしみこんだ石鹸《せっけん》とすがすがしい大気の香りを吸いこんだ。柔らかいシャツの下で脈打つ胸の鼓動が感じられる。岩のように堅牢《けんろう》な彼の支えを、イブは必要としていた。
 リオはイブの背中に置いた手を、腰へと滑りおろした。「きみがどんなに華奢《きゃしゃ》か忘れていたよ。だがいまなら、きみは壊れないと確信できる。初めてきみを腕に抱いたときは、壊してしまうんじゃないかと心配になったけれど」
「そうだったの?」イブの声は聞きとれないほど小さかった。
「ああ」
 イブは驚かされた。なにかを心配する彼など、想像することもできない。「でも、わたしは壊れなかったわ」
「ああ。きみは見た目よりずっとたくましい。きみ自身が思っているよりずっと」
 視線を上げたイブは、リオの唇に笑みが浮かんでいるのを見た。褒められたのはうれしかったが、彼のことに関しては、どうしても自信が持てない。
 そう言おうとしたとき、彼女の唇へと視線を下ろしたリオの瞳から、微笑が消えた。ふたたびイブの視線をとらえた瞬間、彼の体はかすかにこわばったかのようだった。リオは彼女を抱きしめるべきか、手を離すべきかためらうように、その顔をのぞきこんだ。そして、乱れたイブの髪をそっと撫でつけた。
「大丈夫だ。きみなら乗り越えられる。時間がかかるだけだよ」
 もちろん、リオの言うとおりだった。だが、なぜ彼の言うとおりなのか、イブにはわからなかった。いまなんの話をしていたのかすら思いだせない。わかっているのは、リオの腕のなかにいると、守られているような安心感に包まれるということだけだ。彼に抱きしめられていれば、怖いものはなにもない。不安も疑問も痛みも、ふたりのあいだに入りこむ余地はなかった。たとえその安心感が幻であったとしても、いまのイブにはそれが必要だった。
「リオ?」彼女の声はかすれていた。「今夜は帰らないで」
 イブの髪を撫でていた彼の指が止まった。「きみがそう望むなら」ややあってから、リオは答えた。「ぼくはソファで寝るよ」
 イブは首を振った。「そばにいてほしいの。抱きしめていてほしいのよ」
「……それはできない」
 どちらがよりショックだったか、イブにはわからなかった。リオの否定の言葉か、それとも彼のまなざしか。懇願した自分を恥じて、彼女はうなだれた。
「ハニー、そういう意味で言ったわけじゃないよ」
「いいえ、いいの」
 リオは悪態をついた。「いや、よくない」我慢強い彼女がこんなことを頼むなんて、よほどの孤独を感じているからだとわかっていた。それなのに、さらなる孤独に追いやってしまった。「ぼくはきみを抱きしめたいだけだと言ったが、あれは嘘なんだ」最初は、たしかに慰めるだけのつもりだった。しかし、腕のなかに包みこんだ彼女が体の力を抜いてもたれかかってくるのを感じた瞬間、欲望が理性を上回った。「きみを求めるのをやめたことは一度もなかった。あれから何年もたったというのに、きみに会うたびに、ベッドのなかのきみを想像せずにはいられないんだ。気づいていなかったのかい?」
 胸を高鳴らせながら、イブはゆっくり首を振った。「わたしとふたりきりでいると、あなたはわたしのそばに寄ろうとしなかったわ」
「ああ、そうするしかなかった」
 熱っぽい視線で見つめられ、イブはリオの言葉の意味を理解した。冷静沈着に見えるその裏で、彼は欲望と闘っていたのだ。そして、イブはそんな彼を求めていた。
「泊まるよ」ときに夜がどれほど長く孤独に感じられるか知っていたので、リオは言った。イブをひとりにしたくなかった。「だが、同じベッドで寝たらどういうことになるかわかるだろう?」
「わかっていると思うわ」イブは震える指で彼の胸に触れた。「だけどずいぶん時間がたったから、また一から教えてもらわなければだめかもしれない」
 リオはイブの手をとり、口もとへ引き寄せて手首にキスをした。彼の唇の下で、イブの脈は飛びはねた。「自転車に乗るようなものだよ」リオはささやき、彼女と指をからめあった。「すぐに思いだすさ」
 リオにキスされ、イブの膝から力が抜けたが、彼の腕がしっかりと抱きとめてくれた。
「明かりを消そう」リオは言い、キッチンを出ながら彼女に明かりを消させた。
 玄関ホールを横切ったとき、玄関の照明はリオが消した。ポーチと二階の廊下からの明かりを頼りに、彼はイブを抱きあげて階段をのぼり、ドアが開けっぱなしになっているモリーの部屋の前で立ち止まった。
「モリーは大丈夫かい?」
 すやすや眠っている娘を見て、イブは大丈夫だとささやいた。リオは静かに彼女の部屋へ向かい、なかに入った。
 カーテンが開いたままになっていたので、屋根裏部屋のようなこぢんまりとした部屋には、月明かりが差しこんでいた。片側の壁際にベッドが置かれ、反対側には椅子とドレッサーがある。リオはイブを床に立たせると、手を伸ばしてドアを閉めた。
「ぼくはソファで寝てもいいんだよ」リオはそう言いながら彼女の腕を撫でおろし、片手を彼女の手に重ねて指をからませ、もう一方の手でその髪を撫でた。
 イブは首を振った。少なくとも、振ったつもりだった。リオのまなざしと、頬を撫でおろす彼の指しか感じられなかった。
「ここにいてほしいの」リオを不安にさせないために、ようやくイブは答えた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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