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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・アシュトンズ

求婚の理由

求婚の理由


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・アシュトンズ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 エミリー・ローズ(Emilie Rose)
 大学生のころからつき合っていた夫と四人の息子とともに、ノースカロライナで暮らす。十二歳のころからロマンス小説が好きだった。趣味はキルトづくり、料理(特にチーズケーキが得意)、そしてカウボーイに関すること。息子たちの野球の試合を熱心に観戦する母でもある。

解説

 マーセデスは父にひどい仕打ちをされた経験から、人を愛することはしないと心に決めていた。親友のジャレドがいれば生きていける。ある日元恋人に金目当ての結婚を強要され、思いあまったマーセデスはジャレドに相談した。「結婚しよう」予期せぬ彼の提案に驚きながらも、最善の策だと自分を納得させ、彼女はうなずいた。親友の彼となら仲よく暮らせるだろう。だが、思わぬ誤算が待ち受けていた。マーセデスは花婿に恋してしまったのだ。

抄録

 いよいよマーセデスが戸口に立った。ジャレドは息がとまりそうになった。なんてきれいなんだ!日ざしが降り注ぎ、ヘアピンについたパールやドレスにあしらったビーズをきらめかせている。だが、彼女は結婚する相手を間違えている。冷えきった心の持ち主ではなく、もっと情熱あふれる相手と結婚するべきなのだ。何があっても彼女を支えられるような強い男と。
 強い男になってみせる。ジャレドは背筋を伸ばして肩を怒らせ、花嫁が歩きだすのを待った。


 なんとか呼吸を整えようとしていたマーセデスは、噴水の前に立って真っすぐ自分を見つめているジャレドと目が合ったとたん、息をすることすら忘れた。
 ルーカスにしっかりと腕を取られ、マーセデスはジャレドの力強いまなざしに導かれるように短い階段を下り、れんがの通路を歩きだした。美しく咲き乱れる花々やハーブの香り、噴水のまわりに並べられたアロマキャンドルの香りが庭じゅうに漂う。ハープが美しい調べを奏でる中、微風が髪や肩を撫でていく。シルクのドレスがかすかなきぬずれの音をたて、ひんやりとした生地が素肌に触れるたびに胸のふくらみの先が硬くなっていくのをどうすることもできない。それでも彼女はひたすらジャレドを見つめ続けた。
 噴水の前まで来ると、ジャレドが手を差し出した。これでいいんだ、と濃いブルーの目が語りかけているようだ。ルーカスが手を離し、頬にキスをして彼女をジャレドに引き渡した。温かな指にしっかりと手を握られると、マーセデスの心は落ち着いた。大丈夫、親友が一時的に夫になるだけよ。これまでも親友として今以上に困難な状況を乗り越えてきたじゃないの。
 マーセデスはジャレドの気持ちを思い、できるだけクロエのときと違う結婚式になるよう考えたつもりだった。クロエは自分で書いた誓いの言葉をジャレドと読み上げ、特別注文した結婚指輪を交換した。二、三百人の招待客が見守る中、十二人の花嫁のつき添いが教会の通路を踊るような足取りで歩き、ソプラノ歌手が祝福の歌を歌った。マーセデスは簡素でエレガントな式を希望し、母とジリアンが見事にそれに応《こた》えてくれた。
 牧師が式を始めた。これまでに何度も聞いた言葉が張り詰めた神経を鎮めてくれる。ジャレドが取り出した指輪を見たマーセデスは思わず息をのんだ。シンプルな指輪がいいと伝えておいたのに、四角いカットのダイヤモンドの婚約指輪とゴールドの結婚指輪のセットリングだったのだ。だが左手の薬指に滑り込んでぴったり重ねづけされると、二つの指輪は美しく溶け合って輝いた。
 ジャレドは確信に満ちた声で、牧師のあとに続いて誓いの言葉を繰り返した。
 マーセデスの声は震え、ジャレドの指にゴールドの指輪を滑り込ませる手も震えた。指輪の交換が終わると、ジャレドが温かく力強い手で彼女の両手を包み込んだ。これが正しかったか、間違っていたかはわからないが、いずれにせよ二人は結婚した。彼女は親友を夫にしたのだ。
 牧師が聖書を閉じてほほ笑んだ。「ジャレド、花嫁にキスを」
 マーセデスの心臓が早鐘のように打ち始めた。どうしてこのことを忘れていたのだろう?うろたえた目で見上げると、ジャレドはこわばった顔で肩に手をかけてきた。義務は果たすつもりなのだ。指先から溶岩が流れ出すようにマーセデスの全身に熱いものが広がっていく。彼女は無意識に乾いた唇をなめた。ブルーの目がはっとしたようにその動きを追う。一瞬、激しい炎がその目に燃え上がったような気がしたが、それ以上考える余裕はなく、目を伏せたジャレドの顔が近づいてきた。
 これまで親友として数えきれないほど抱き合い、頬にキスをしてきたが、唇にキスした記憶はない。あらためて見ると、彼の唇はなかなか魅力的だ。鋭い輪郭の上唇とふっくらした下唇がわずかに開いてマーセデスの唇に重ねられた。その瞬間、足元を大きくすくわれたように彼女の世界がひっくり返った。
 目をぎゅっと閉じ、鋭く息を吸い込んだ拍子にジャレドのオーデコロンの香りが鼻孔を満たし、マーセデスは軽いめまいを覚えた。溺《おぼ》れて水面がどの方向かわからなくなったような感覚に似ている。膝から力が抜け、彼女はとっさにジャレドのジャケットの襟をつかんだ。すると力強い腕がウエストにまわされ、彼女の体はたくましいジャレドの体にぴったりと押しつけられた。
 熱い。熱くてやけどしそうなほど。
 マーセデスがあえぐと、その下唇を彼の舌が軽くなぞり、そのまま口の中に入ってくる。マーセデスは両手を首にまわしてキスに応えた。スパイシーで甘美なキスに酔ってしまいそうだ。
 ジャレドの熱いてのひらがウエストから滑り下りてヒップを包み込む。マーセデスは下腹部に熱いものが押しつけられるのを感じて、体がとろけそうになった。
 欲望にぼうっとする頭に歓声と笑い声が聞こえてくる。ジャレドがはっと我に返ったように、いきなり唇を離して一歩後ろにさがった。マーセデスは呆然《ぼうぜん》とジャレドを見つめた。彼の顔にも衝撃の色が浮かんでいる。
「ここにお二人が晴れて夫婦となったことを宣言します」牧師の声に、マーセデスはようやく我に返った。参列者の視線がいっせいに二人に注がれている。
 マーセデスは心の動揺を隠しながら、幸せそうな花嫁の笑顔を作った。
 どうすればいいの?夫に欲望を感じてしまうなんて。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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