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イケメンこれくしょん 上

イケメンこれくしょん 上


発行: キリック
シリーズ: イケメンこれくしょん
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆2
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解説

 今や女性の間で知らない人はいない『イケこれ』。
 スマホの無料アプリとして配信されたそれは「イケメンこれくしょん」の略称で、すでにユーザー数が三百万とも言われる超人気ゲームだ。その内容は、理想のイケメンたちと出会い、デートを重ね、コレクションしていくといったもの。ただしプレイヤーが収集するのは、キャラクター自体ではなく、二人の交際の記録だった。
 都内の大学に通う高瀬理沙もそんな『イケこれ』にはまっている一人。もともと人付き合いが苦手な彼女は、自分を変えるために地方から東京に出てきたものの、いわゆる「大学デビュー」に失敗し、さみしく「ぼっち」生活を送っていた。もちろん、彼氏いない歴イコール年齢である。ゲームの仮想恋愛が現実との境界線を越えてしまうのは、当然の帰結といえた。
 そんなある日、お気に入りキャラのタカシが話しかけてくる。これからは「現実」の世界でも理沙に逢える、と。
 『イケこれ』にはある都市伝説があった。特定の相手と関係を深めていくと「ゲーム内のキャラが実体化して現れる」というのだ。そして、「リアル実装」と呼ばれるその噂が本当になったとき、異常事態であることを認識しながらも、理沙は禁断の恋に身を委ねるのだった……。

 ゲームキャラとリアルで結ばれる……そんな常軌を逸した事態の裏にあった狂気の設定とは? 鬼才・梅津裕一が放つロマンスホラー巨編、上巻!

目次

 第一部
 第二部
 第三部
 第四部
 第五部

抄録

 反射的に体が震えた。
 タカシが、またきた。
 夢ではない。幻でもない。
 これは現実だ。
「な、なんだよ……あんた」
 隆弘は狼狽しているようだった。
 いきなり男に注意されたかと思ったら、その相手がゲームの登場人物なのである。
「この人……高瀬さんの、知り合いなの?」
 それを聞いて、理沙はきょとんとした。
 まさか、隆弘は「イケこれ」の一ノ瀬タカシを知らないのだろうか。
 雰囲気がちょっと似ている、などと周囲に言われていたので当然、知ってるものと思っていた。だが、ここで「この人はイケこれに出てくる一ノ瀬タカシだ」などというわけにもいかない。
「とにかく、高瀬さんは困っているみたいなんだ。悪いが、今日は帰ってくれないか」
 タカシがいつもとは違う、低い、しかし確固たる意志をこめた口調で言った。
「ねえ、高瀬さん。この男、なんなの?」
 隆弘にはまだ状況がのみ込めていないらしい。
「実はこいつと付き合っていたとか、そういうの?」
「そ、なんていうか……」
「そうだ」
 タカシが、断言した。
「俺は高瀬さんの恋人だ。文句あるか?」
「そんな……」
 隆弘の顔は赤くなったり白くなったりしていたが、やがてわけのわからない声をあげると逃げ去るように駆けていった。
「とりあえず、厄介者は追っ払ったけど……あれで、よかったのかな」
 タカシが照れたように言った。
 なんといってよいか、理沙にはわからない。とにかく、ここだと人目がある。
「あの、こんなところで立ち話もなんですから、どうぞ、上がってください」
「え……その、いいのかな」
「は、はい」
 口に出してから後悔した。
 みすぼらしい現実の自分の部屋を見たら、きっとタカシは落胆するだろう。
 違う。問題はそんなことではない。
 得体の知れない男を、部屋に上げてよいものなのか。
 異性を自室に入れるなど、初めてのことである。
 また夢のなかでもさまよっているような気分になってきた。
 よくよく考えてみれば、美月にも注意されたばかりではないか。これは、オニオン・コーポレーションの上層部が考えついた、趣味の悪いいたずらかもしれない。
「じゃあ、おじゃまします」
 三和土《たたき》で靴を脱いで、タカシが畳に上がった。
 コーポなどとはいっても、フローリングではない畳敷きで、なんとなくみすぼらしい。
 それがたまらなく恥ずかしかった。
「意外と、地味な部屋に住んでいるんだね」
 タカシはどこか居心地が悪そうだった。
 内気なゲームのなかのキャラと、まるで変わらない。
 照れ屋で、はにかんでいる。
「すいみません。こんな地味な部屋で……」
「あっ、その、別に、悪い意味じゃなくて……」
 やはりリアルとゲームでは違う。
 あるいはネットで知り合った相手と実際に初対面のときは、こんな感じになるのだろうか。
 もっとも、相手はネットどころかゲームのなかから現れた人物なのだが。
「あの……とりあえず、麦茶でも……」
「いろいろ、なんだかすみません」
 とりあえず麦茶を二人ぶんグラスに注いだ。緊張していたのか、タカシが麦茶を飲んだ。
「喉渇いていたせいか……すごくおいしい」
「それは、よかったですね」
 困った。会話が続かない。
 理沙もタカシも、かちこちに固くなってしまっている。お互い、意識し合っているのがわかる。
 いったい、なにを話せばいいのだろう。
 何度も深呼吸してから、思いきって理沙は訊ねた。
「あの……タカシさん。これ、いたずらとかじゃないですよね」
「いたずら?」
 タカシは驚いていた。
「ごめん。意味がよくわからない」
「つまり……ゲームのなかから人が出てくるって、その、ありえないでしょう?」
 厳密にいえば、もはや科学もなにもかも無視した超常現象である。
「そうか。そうだね。理沙ちゃんからすれば、そう思えて仕方ないよね」
 タカシはあっさりと言った。
「でも、俺は本当に、『あっち』からきたんだ」
「あっちって……ゲームのなか、ということですよね」
「うん、『こっち』だとね」
 どういうことだろう。
「でも、俺にとっては『あっち』も立派な現実なんだ。たとえば、理沙ちゃんだって、自分がゲームの登場人物だ、とか言われたらびっくりするだろう?」
 たしかに、それは驚く。
「俺も、『あっち』にいるころは、そんなことは知らなかった。つまり俺にとっては、ゲームのなかも立派な現実なんだ。実は自分がゲームのキャラだと知ったときは驚いた……というか、信じられなかった」
 これが演技だとしたら、とんでもない役者だ。
「でも、ゲームということは、つまり情報ってことですね……情報が、なんていうか、肉体を持つとか、ありうるんでしょうか」
「うん。俺も同じことを思ったけど……ありうる、としかいいようがない。というより、実は『こっち』もある意味では、『人は情報で出来ている』といえないかな」
 難しい話で、ぴんとこない。
「情報……ですか?」
「そう。たとえば人間にはまず遺伝情報というものが細胞それぞれに入ってる。それに、体じゅうの全細胞の位置や数、骨格なんかのデータは、すべて数値として情報化できる、と思うんだけど」
 理屈としてはわからぬでもない。
「筋肉の付き方、内臓の状態……もちろん、膨大な量のデータになるけど……理論的には不可能じゃないはずだよ」
「けど、いまの技術では、それは……」
「うん」
 タカシは素直に認めた。
「でも、オニオン・コーポレーションの技術というのは、現代科学の最先端のさらにその先を行っている、みたいだ。って、俺が言うのも変な話だけど」
 クローン人間、という言葉を思い出した。
 あるいはここにいる「タカシ」は、そのあたりの技術で誕生したのではないか。安っぽいSF映画のようだが、そういうこともありうるかもしれない。
 だとすれば、「イケこれ」のキャラが本物の人間のように振る舞っていたのも理解できる。ある意味、彼らは「本物の人間」なのだ。
 いままでは「ゲームの世界」を「現実の世界」として認識させられていたとしたら……。

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