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イケメンこれくしょん 下

イケメンこれくしょん 下


発行: キリック
シリーズ: イケメンこれくしょん
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

 今や女性の間で知らない人はいない『イケこれ』。
 スマホの無料アプリとして配信されたそれは「イケメンこれくしょん」の略称で、すでにユーザー数が三百万とも言われる超人気ゲームだ。その内容は、理想のイケメンたちと出会い、デートを重ね、コレクションしていくといったもの。ただしプレイヤーが収集するのは、キャラクター自体ではなく、二人の交際の記録だった。
 都内の大学に通う高瀬理沙もそんな『イケこれ』にはまっている一人。もともと人付き合いが苦手な彼女は、自分を変えるために地方から東京に出てきたものの、いわゆる「大学デビュー」に失敗し、さみしく「ぼっち」生活を送っていた。もちろん、彼氏いない歴イコール年齢である。ゲームの仮想恋愛が現実との境界線を越えてしまうのは、当然の帰結といえた。
 そんなある日、お気に入りキャラのタカシが話しかけてくる。これからは「現実」の世界でも理沙に逢える、と。
 『イケこれ』にはある都市伝説があった。特定の相手と関係を深めていくと「ゲーム内のキャラが実体化して現れる」というのだ。そして、「リアル実装」と呼ばれるその噂が本当になったとき、異常事態であることを認識しながらも、理沙は禁断の恋に身を委ねるのだった……。

 ゲームキャラとリアルで結ばれる……そんな常軌を逸した事態の裏にあった狂気の設定とは? 鬼才・梅津裕一が放つロマンスホラー巨編、下巻!

目次

 第六部
 第七部
 第八部
 第九部
 第十部
 第十一部

抄録

『お前はどこのポリアンナだ』
「ポリアンナ?」
『有名な話だぜ。主人公がポリアンナって名前の外国の小説だったか……そいつはどんなひどい目にあっても、いつも前向きで、楽天的に物事を考える。不幸になっても「よかった探し」つって、よかったことを考える。絶対に希望を失わない。まあそんな話だけど……』
 いい話に思える。
『一見すると、いい話だが、これ実は、結構えげつねえ話だろ』
「え?」
『要するにポリアンナってのは「現実のいやな部分から目をそらしているだけ」なんだよ。だから、英語にはポリアンナイズムだったかな、スペル忘れたけどそんな言葉まであったはずだ』
「どういう意味?」
『「バカバカしいほどの楽天家」だ。どっちかというと、相手を揶揄するときに使う言葉だよ。いまの理沙、お前みたいな奴を表現するにはぴったりだ』
「私は……」
『楽天主義が悪いって言ってるわけじゃない。ただ、どうみてもヤバイときに楽観論でしか物事を考えられないってのは、本人に不幸しか招かないぞ』
「じゃあ、絶望しろっていうの?」
『そうは言ってねえ。現実的に物事を考えろって言ってるだけだ』
 たしかに、楽観主義者と言われても仕方ないかもしれない。しかし、いまは一縷の希望にすがるしかないのだ。そうでないと、心が壊れてしまう。
 ふいに、スピーカーから発せられたとおぼしき声が聞こえてきた。
 性別も年齢もわからない、あの不自然な声だ。
『困りましたね……北島アキラさん。そうやって、高梨リナさんをいじめるような真似をしてもらっては……』
 携帯のむこうからも、声が聞こえてくる。
 つまり摩耶の部屋でも、同じ音声が流れているということだ。
『おい……ちょっと、待てよ! なんであたしが悪いんだよ!』
『私はコレクションみんなを愛しています。でも、一つのコレクションが他のコレクションの心を傷つけるのを看過するわけにはいきません』
 おかしい、と思った。
 コレクターはあきらかに「この状況を愉しんでいる」ように感じられる。
 本来ならば、罰せられるべきはむしろこの自分ではないのか。諦めずに外に出ることを考えよう、と言っていたのだから。
 にもかかわらず、コレクターは摩耶を責めている。
『仕方ない……アキラさんには、少し懲罰を与えましょう。実に心苦しいのですが』
 嘘だ。
 やはりコレクターは、摩耶をいたぶることを愉しんでいるとしか思えない。
『高梨リナさんには、アキラさんが苦しんでいるところは聞かせたくないので、携帯の回線を一時的に切断させてもらいますよ』
 すると本当に携帯が勝手に切れた。
 どんな改造をしてあるのかはわからないが、コレクターが携帯を自由にいじれるのは確かなようだ。
「待ってください。なんで、摩耶が……むしろ、罰せられるのは……」
『高梨リナさんは優しいですね。ですが、たとえ愛おしいコレクションであっても、他のコレクションを傷つけることは許せない』
 それきり、部屋のなかは静かになった。
 いったい、これから摩耶はどうなるのか。
 心臓がどきどきしてきた。
 鹿島アミが正気を失うほどの罰。
 想像するだに恐ろしい。
 なにも考えまいとするほど、どんどん想像力がたくましくなっていく。
 あるいは、物理的な拷問でも加えられるのだろうか。
 できることならコレクションを傷つけたくないとコレクターは言っていたが、もうそんな言葉も信じられない。
 自分たちがここに集められたのは、単にコレクターが「コレクションを弄ぶため」ではないだろうか。
 愛情はあるのかもしれないが、それはかなり歪んだものだ。
 コレクターは、ある種のサディストということもありうる。
 わざとこちらを怯えさせ、理由をつけては罰を与える。
 さまざまな拷問法が、脳裏をよぎった。
 爪を剥ぐ。電流を流す。指先をおろし金ですりつぶしていく。
 歯の間に小さな釘を打ち込む。唇をホチキスで閉じる。ガラスの粉を眼球にまぶす。まぶたを切り取る……。
 なぜ、こんな忌まわしいことを思いつくのだろう。
 自分の想像力が呪わしかった。
 やがて、どこか遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。
 絶叫、というのがふさわしいかもしれない。
 まず間違いなく、摩耶の声だ。
 耳をふさいでも、声は理沙の鼓膜を執拗に震わせ続けた。
 果たしてどんなおぞましい責め苦をうけているのだろう。
 またいろいろな想像をしてしまう。
 ふと思った。
 ひょっとすると「これは同時に自分に対する罰」ではないのかと。
 あれだけ声が出るほどの精神的、あるいは肉体的な苦痛なのだから、相当にひどい目にあっていることだけはわかる。問題は「その苦痛の原因がわからない」という点なのだ。
 恐怖でかたちづくられた妄想だけが、頭のなかに充満していく。
 もしそこまで計算しているとしたら、コレクターはかなりの嗜虐《しぎゃく》趣味の持ち主だ。
 それが流星だとはやはり信じたくない。
『高梨リナさん……聞こえますか』
 いきなりコレクターの声が聞こえてきて、びくっと理沙は体を震わせた。
 心臓がばくばくいっている。今度は自分の番なのだろうか。
『まったく、アキ姐さんにも困ったものです……ですが、ご安心ください。あなたには罰は与えませんよ……まだ』
 まだ。
 それはつまり「いずれ理沙も罰せられる」ということではないのか。
『私は愛しているのです、すべてのコレクションを。本当ならば、誰も傷つけたくないのですが……』
 その瞬間、スピーカーのむこうからかすかな声が聞こえてきた。

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