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著者プロフィール
菊地 秀行(きくち ひでゆき)
1949〜
千葉県銚子市に生まれる。青山学院大学法学部卒業。在学中に推理小説研究会で活躍。卒業後は、フリーライターで雑誌等に寄稿のかたわら、小説を執筆。1982年『魔界都市〈新宿〉』で鮮烈なデビューを飾る。1985年から『魔界行』『妖魔戦線』『妖獣都市』等、超伝記官能バイオレンスを発表し人気爆発、超売れっ子作家に。少林寺拳法をたしなみ、ホラー映画を愛し、とにかく小説を書くのが好きな好漢。
1949〜
千葉県銚子市に生まれる。青山学院大学法学部卒業。在学中に推理小説研究会で活躍。卒業後は、フリーライターで雑誌等に寄稿のかたわら、小説を執筆。1982年『魔界都市〈新宿〉』で鮮烈なデビューを飾る。1985年から『魔界行』『妖魔戦線』『妖獣都市』等、超伝記官能バイオレンスを発表し人気爆発、超売れっ子作家に。少林寺拳法をたしなみ、ホラー映画を愛し、とにかく小説を書くのが好きな好漢。
解説
ローラン共和国の無法地帯“貧民夜会地区”を拠点に、おれは、“プリンス”救出の行動を開始した。コーネル“処理班”のラジャを手玉に取って聞き出した隠し場所へ向かったものの、間一髪の差で“プリンス”は今度はエニラ師の手に移っていた。まさに三つ巴、争奪戦は熾烈になるばかりだ。そしてその夜、ヤンガー大佐から会いたいとの伝言が届いた。エニラ師打倒の共闘申し入れだ。
目次
第一章 Tシャツの怪魔
第二章 暗殺夜
第三章 戦闘三昧
第四章 “プリンス”の祖母
第五章 懐かしき再会
第六章 “プリンス”を奪還せよ
あとがき
第二章 暗殺夜
第三章 戦闘三昧
第四章 “プリンス”の祖母
第五章 懐かしき再会
第六章 “プリンス”を奪還せよ
あとがき
抄録
身長一九五センチ、体重一三〇キロ、上腕部の太さ三〇センチ――これだけのデータが頭の中に閃いた。
プラス・常人離れの怪力。
結論――改造人間。
どのような体格の人間が限界を超えた訓練を積んでも、あれだけのパワーは不可能だ。骨と筋肉自体の強さは人間みな同じだからである。
瘤だらけの顔の中で、異様に細い眼がおれを睨《ね》めつけた。
冷たい光だった。蛇でもこんな眼はしていない。要するに――意志なき瞳なのだ。
黒いTシャツから突き出た腕が閃いた。顎へ来たとわかった。両手を上げて受けた。遅かった。衝撃はもろ、脳天まで抜けた。
一瞬だが、おれは意識を失った。機械服の安定機構が作動していたからこそ、二歩の後退ですんだが、でなければ、尻餅をついていただろう。
ウィーン、と服の関節部が悲鳴を上げた。回復のための音だ。
雷竜《プロントザウルス》の顎に咥えられても保ちこたえた服に悲鳴を上げさせる怪力――だが、おれが恐れたのは、別のものだった。スピードだ。どんな馬鹿力だろうと、スチール・ハンマーの一撃だろうと、当たらなければ、そよ風と変わらない。だが、筋肉の十五倍の反応速度を誇る機械服を凌ぐスピード・パンチとは。
二発目のフックをブロックしたのは僥倖といえた。頭の中身はまだ、ぐらついていたのだ。
間髪入れず、左のパンチを大男の鳩尾に叩きこみ、ぐらついたところを顎へ一発――と拳を引き戻した途端、いきなり下腹が爆発した。
大男の膝だ。身体が浮いた。船縁まで吹っとび、おれはかろうじて体勢を立て直した。
思いきり息を吐いて、胃のあたりに溜まっていた衝撃を中和する。
「化物め」
自然と口に出た。
「貴様、エニラの回し者だな。――名前はあるのか?」
返事はなかった。そんな機能は付いていないのだろう。ひたすら破壊し、殺戮するための人間型マシン。コーネル“処理班”の強化人間《ブーステッド・マン》など、こいつに比べれば聖人みたいなものだ。
ふっ、と大男の形が揺らいだ。
跳び蹴りだ! と閃いたとき、おれは思いきり身を屈め、黒いドア口へとダイブしていた。
頭上を形容しがたい殺気が通り過ぎる。
頭から跳びこみ、一回転して立つ。
予想していたとはいうものの、あまりいい眺めではなかった。
狭苦しい室内は朱に染まっていた。
閉め切った窓際にベッドがひとつ。それ以外はすべて、床に散乱している。
中でも目立つのは、三つの人体だった。舳先の男と“処理班”の二人――田舎のバスでおれを襲った獣人と強化人間だ。全員の顔が原形も留めず、口から血を吐いている。内臓破裂を起こしたのだ。
一瞬のうちに、おれは強化人間の身体に生命反応を認めて、そのかたわらへ走った。
「聴こえるか?」
と耳元でささやく。
「“プリンス”は何処だ?」
「わからねえ……」
強化人間の唇は弱々しく動いた。
「あいつら、上から来やがった。多分――宮殿だ。エニラのところ……大佐どの……お許し……下さ……い……」
天井を見上げるまでもなく、大穴が開いているのはわかっていた。
おれが水中でドンパチやっている間に、エニラ師の配下は空中から船を襲ったのだ。そして、禿頭の殺人マシンだけを残し、残りは“プリンス”ごと空中に吸いこまれた。
おれとかち合ったのは偶然だろう。大男が残ったのは、“処理班”の残り二人を始末するか、大佐を捕らえるかするつもりだったにちがいない。あるいは、おれの実力を読んで、近々来ると待ち構えてたのか。
考えている暇などなかった。
狭苦しい戸口を拳でぶち破りながら、大男が跳びこんで来たのだ。
*この続きは製品版でお楽しみください。
プラス・常人離れの怪力。
結論――改造人間。
どのような体格の人間が限界を超えた訓練を積んでも、あれだけのパワーは不可能だ。骨と筋肉自体の強さは人間みな同じだからである。
瘤だらけの顔の中で、異様に細い眼がおれを睨《ね》めつけた。
冷たい光だった。蛇でもこんな眼はしていない。要するに――意志なき瞳なのだ。
黒いTシャツから突き出た腕が閃いた。顎へ来たとわかった。両手を上げて受けた。遅かった。衝撃はもろ、脳天まで抜けた。
一瞬だが、おれは意識を失った。機械服の安定機構が作動していたからこそ、二歩の後退ですんだが、でなければ、尻餅をついていただろう。
ウィーン、と服の関節部が悲鳴を上げた。回復のための音だ。
雷竜《プロントザウルス》の顎に咥えられても保ちこたえた服に悲鳴を上げさせる怪力――だが、おれが恐れたのは、別のものだった。スピードだ。どんな馬鹿力だろうと、スチール・ハンマーの一撃だろうと、当たらなければ、そよ風と変わらない。だが、筋肉の十五倍の反応速度を誇る機械服を凌ぐスピード・パンチとは。
二発目のフックをブロックしたのは僥倖といえた。頭の中身はまだ、ぐらついていたのだ。
間髪入れず、左のパンチを大男の鳩尾に叩きこみ、ぐらついたところを顎へ一発――と拳を引き戻した途端、いきなり下腹が爆発した。
大男の膝だ。身体が浮いた。船縁まで吹っとび、おれはかろうじて体勢を立て直した。
思いきり息を吐いて、胃のあたりに溜まっていた衝撃を中和する。
「化物め」
自然と口に出た。
「貴様、エニラの回し者だな。――名前はあるのか?」
返事はなかった。そんな機能は付いていないのだろう。ひたすら破壊し、殺戮するための人間型マシン。コーネル“処理班”の強化人間《ブーステッド・マン》など、こいつに比べれば聖人みたいなものだ。
ふっ、と大男の形が揺らいだ。
跳び蹴りだ! と閃いたとき、おれは思いきり身を屈め、黒いドア口へとダイブしていた。
頭上を形容しがたい殺気が通り過ぎる。
頭から跳びこみ、一回転して立つ。
予想していたとはいうものの、あまりいい眺めではなかった。
狭苦しい室内は朱に染まっていた。
閉め切った窓際にベッドがひとつ。それ以外はすべて、床に散乱している。
中でも目立つのは、三つの人体だった。舳先の男と“処理班”の二人――田舎のバスでおれを襲った獣人と強化人間だ。全員の顔が原形も留めず、口から血を吐いている。内臓破裂を起こしたのだ。
一瞬のうちに、おれは強化人間の身体に生命反応を認めて、そのかたわらへ走った。
「聴こえるか?」
と耳元でささやく。
「“プリンス”は何処だ?」
「わからねえ……」
強化人間の唇は弱々しく動いた。
「あいつら、上から来やがった。多分――宮殿だ。エニラのところ……大佐どの……お許し……下さ……い……」
天井を見上げるまでもなく、大穴が開いているのはわかっていた。
おれが水中でドンパチやっている間に、エニラ師の配下は空中から船を襲ったのだ。そして、禿頭の殺人マシンだけを残し、残りは“プリンス”ごと空中に吸いこまれた。
おれとかち合ったのは偶然だろう。大男が残ったのは、“処理班”の残り二人を始末するか、大佐を捕らえるかするつもりだったにちがいない。あるいは、おれの実力を読んで、近々来ると待ち構えてたのか。
考えている暇などなかった。
狭苦しい戸口を拳でぶち破りながら、大男が跳びこんで来たのだ。
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