和書>小説・ノンフィクション>ハーレクイン>ハーレクイン・ロマンス
著者プロフィール
ヘレン・ビアンチン(Helen Bianchin)
ニュージーランド生まれ。想像力が豊かで、読書を愛する子供だった。十代の初めのころに初めて物語を書く。学校を卒業して、法律事務所で秘書をしたのち、二十一歳のときに友人とともにワーキングホリデー制度を使ってオーストラリアにわたる。メルボルンで数カ月働き、北クイーンズランドのたばこ農園を手伝っていたときにイタリア人男性と知り合い結婚した。その後三人の子供に恵まれ、子供たちや友人にたばこ農園の話を聞かせているうちに小説を書くことを思いついたという。イタリア人男性をヒーローにした最初の小説は、一年をかけて完成され、その後イギリスのハーレクイン社から出版された。もっとも尊敬する作家はノーラ・ロバーツと語るが、プライベートな時間に“座り心地のいい椅子に丸くなって”する読書は、ミステリーからロマンスまで幅広い。これまでに訪れたいちばんロマンティックな場所はハワイのホノルルだという。
ニュージーランド生まれ。想像力が豊かで、読書を愛する子供だった。十代の初めのころに初めて物語を書く。学校を卒業して、法律事務所で秘書をしたのち、二十一歳のときに友人とともにワーキングホリデー制度を使ってオーストラリアにわたる。メルボルンで数カ月働き、北クイーンズランドのたばこ農園を手伝っていたときにイタリア人男性と知り合い結婚した。その後三人の子供に恵まれ、子供たちや友人にたばこ農園の話を聞かせているうちに小説を書くことを思いついたという。イタリア人男性をヒーローにした最初の小説は、一年をかけて完成され、その後イギリスのハーレクイン社から出版された。もっとも尊敬する作家はノーラ・ロバーツと語るが、プライベートな時間に“座り心地のいい椅子に丸くなって”する読書は、ミステリーからロマンスまで幅広い。これまでに訪れたいちばんロマンティックな場所はハワイのホノルルだという。
解説
ティナは結婚の誓いを終えたあとも、ニック・レアンドロスの妻になったことを実感できずにいた。彼の異母弟バシリさえ事故で亡くならなければ、こんなおかしな事態にはならなかっただろう。いま、ティナのおなかにはバシリの子がいる。その子にレアンドロスの姓を名乗らせ、安定した生活を与えるべきだとニックに強く説得され、ティナは結婚に踏み切ったのだ。いまだ残る、選択を誤ったのではという不安を抑えつけ、これが最善の策なのだとティナは自分に言い聞かせた。だが結婚生活が始まると、思わぬ苦悩が生じた。
抄録
「ここでおやすみのキスをすべきだろう?」
冗談……でしょう?
ティナはためらいがちに背伸びをして彼の頬に唇をつけた。少なくとも彼女はそのつもりだった。だが彼が動いたので、唇と唇が触れ合った。
ニックは身を引く機会を与えないで彼女の頭を両手ではさみ、唇を合わせてそれ以上のものに変えた。
はるかにすばらしいものになった。ゆるやかに探る唇の動き。官能的なその激しさに、ティナはめまいを覚えた。情熱の味、興奮させ、酔わせる力はビンテージ物のシャンパンに劣らなかった。
ティナは胸の奥で思った。これが彼のキスのやり方なら、愛の行為はどんな感じなのかしら。
“そんなことを考えてはだめよ”
彼女はキスがどのくらい続いたのかわからなかった。三十秒、百秒……もっと長かったかもしれない。
彼に放されたときティナはそこに立つのがやっとで、茫然《ぼうぜん》として彼を見つめた。
ニックは彼女の頬をやさしく撫《な》で、彼女の口元でつかのま指を止めた。「ぐっすりおやすみ」
彼が書斎へと向きを変えても、ティナはまだ立ち尽くしたままだった。ドアが閉まるかすかな音を聞いてやっと、彼女はふたりの寝室に向かった。
眠りはいつまでたっても訪れなかった。唇、口の中……ティナの全身が熱く燃えている。
こんなのひどいわ。
仕事が必要な気晴らしになり、ティナは大きな寝室をふたりで使うことに日ごとに慣れていった。
バスルームと衣装部屋がふたつずつあるので助かった。おかげで個人のプライバシーは保たれる。
それでも、こんなに間近で生活していると、ティナは常にニックの存在を意識させられた。彼の大きなベッドのカバーが折り返され、彼がその日に着た服がコートかけにかかっている。彼がシャワーを浴びたあとはいつも、バスルームから石けんのさわやかな香りが漂ってくる。
ときどき半裸の彼をちらりと見るだけでティナの胸は高鳴った。
今夜ティナが化粧の仕上げをしてから衣装部屋で服を着たときも、例外ではなかった。
ニックが上半身裸で立ち、ズボンをはいていた。一瞥《いちべつ》しただけで彼女の全身の神経がおかしくなった。動くたびにしなる力強い筋肉。日に焼けて輝く肌。
その瞬間ニックが顔を上げ、ふたりの目と目とが合い、からみ合った。彼がほほえむとティナの体の力が抜けた。
こんなにたくましくて魅力的な男性は、ほかにいない。楽々と女性に不思議な変化を引き起こす男性は。男っぽくて強烈にセクシーで……命とりだ。
「すぐに終わるわ」ティナはなんとかさりげなく言い、衣装部屋に入った。
彼女が選んだドレスは幻想的な濃い青のシルクシフォンで、体にぴったりするビーズ刺繍《ししゅう》が施された胴着《ボディス》、細い肩ひも、レイヤードスカートがついていた。最後に同じくビーズ刺繍が施されたジャケットを着て、オーダーメイドのピンヒールを履き、優美なダイヤの滴形イヤリングで仕上げた。
巧みに巻き毛を少し垂らしてティナが寝室に戻ると、ニックがゆったりと立ってこちらを見ていた。どんな女性も思わず彼に引きつけられて、心おだやかではいられないだろうとティナは思った。
ことにわたしは。
「用意はいいかい?」
ティナはイブニングバッグを取り、彼にすばらしい笑みを見せた。「ショータイムね」
「あとひとつだけ」
ニックが近づいてきたので、彼女はユーモアで身を守った。「歯に口紅がついている? それともマスカラの染みかしら?」
「君は美しい」内面からにじみ出る美しさだと、ニックは心の中で言い添えた。
ティナは思った。彼はその言葉がわたしにどんな効果を与えるか、知っているのかしら。
「ありがとう」ティナは彼の非の打ちどころのないスーツ姿に目を走らせた。「女性たちは競ってあなたの注意を引こうとするに違いないわ」
「君は一線を越えようとしているよ」
ふたりで階段を下りながらティナはいたずらっぽくほほえんだ。「そうかしら?」
渋滞する道路を進んでふたりは市内に入り、一流ホテルの駐車場に入る車の列に並んだ。
王立小児病院の慈善興行は年一回催される輝かしい行事で、大勢いる満場の出席者の後援を受けている。ティナはそれを考えながらホテルの大舞踏室のロビーにニックと並んで立った。
*この続きは製品版でお楽しみください。
冗談……でしょう?
ティナはためらいがちに背伸びをして彼の頬に唇をつけた。少なくとも彼女はそのつもりだった。だが彼が動いたので、唇と唇が触れ合った。
ニックは身を引く機会を与えないで彼女の頭を両手ではさみ、唇を合わせてそれ以上のものに変えた。
はるかにすばらしいものになった。ゆるやかに探る唇の動き。官能的なその激しさに、ティナはめまいを覚えた。情熱の味、興奮させ、酔わせる力はビンテージ物のシャンパンに劣らなかった。
ティナは胸の奥で思った。これが彼のキスのやり方なら、愛の行為はどんな感じなのかしら。
“そんなことを考えてはだめよ”
彼女はキスがどのくらい続いたのかわからなかった。三十秒、百秒……もっと長かったかもしれない。
彼に放されたときティナはそこに立つのがやっとで、茫然《ぼうぜん》として彼を見つめた。
ニックは彼女の頬をやさしく撫《な》で、彼女の口元でつかのま指を止めた。「ぐっすりおやすみ」
彼が書斎へと向きを変えても、ティナはまだ立ち尽くしたままだった。ドアが閉まるかすかな音を聞いてやっと、彼女はふたりの寝室に向かった。
眠りはいつまでたっても訪れなかった。唇、口の中……ティナの全身が熱く燃えている。
こんなのひどいわ。
仕事が必要な気晴らしになり、ティナは大きな寝室をふたりで使うことに日ごとに慣れていった。
バスルームと衣装部屋がふたつずつあるので助かった。おかげで個人のプライバシーは保たれる。
それでも、こんなに間近で生活していると、ティナは常にニックの存在を意識させられた。彼の大きなベッドのカバーが折り返され、彼がその日に着た服がコートかけにかかっている。彼がシャワーを浴びたあとはいつも、バスルームから石けんのさわやかな香りが漂ってくる。
ときどき半裸の彼をちらりと見るだけでティナの胸は高鳴った。
今夜ティナが化粧の仕上げをしてから衣装部屋で服を着たときも、例外ではなかった。
ニックが上半身裸で立ち、ズボンをはいていた。一瞥《いちべつ》しただけで彼女の全身の神経がおかしくなった。動くたびにしなる力強い筋肉。日に焼けて輝く肌。
その瞬間ニックが顔を上げ、ふたりの目と目とが合い、からみ合った。彼がほほえむとティナの体の力が抜けた。
こんなにたくましくて魅力的な男性は、ほかにいない。楽々と女性に不思議な変化を引き起こす男性は。男っぽくて強烈にセクシーで……命とりだ。
「すぐに終わるわ」ティナはなんとかさりげなく言い、衣装部屋に入った。
彼女が選んだドレスは幻想的な濃い青のシルクシフォンで、体にぴったりするビーズ刺繍《ししゅう》が施された胴着《ボディス》、細い肩ひも、レイヤードスカートがついていた。最後に同じくビーズ刺繍が施されたジャケットを着て、オーダーメイドのピンヒールを履き、優美なダイヤの滴形イヤリングで仕上げた。
巧みに巻き毛を少し垂らしてティナが寝室に戻ると、ニックがゆったりと立ってこちらを見ていた。どんな女性も思わず彼に引きつけられて、心おだやかではいられないだろうとティナは思った。
ことにわたしは。
「用意はいいかい?」
ティナはイブニングバッグを取り、彼にすばらしい笑みを見せた。「ショータイムね」
「あとひとつだけ」
ニックが近づいてきたので、彼女はユーモアで身を守った。「歯に口紅がついている? それともマスカラの染みかしら?」
「君は美しい」内面からにじみ出る美しさだと、ニックは心の中で言い添えた。
ティナは思った。彼はその言葉がわたしにどんな効果を与えるか、知っているのかしら。
「ありがとう」ティナは彼の非の打ちどころのないスーツ姿に目を走らせた。「女性たちは競ってあなたの注意を引こうとするに違いないわ」
「君は一線を越えようとしているよ」
ふたりで階段を下りながらティナはいたずらっぽくほほえんだ。「そうかしら?」
渋滞する道路を進んでふたりは市内に入り、一流ホテルの駐車場に入る車の列に並んだ。
王立小児病院の慈善興行は年一回催される輝かしい行事で、大勢いる満場の出席者の後援を受けている。ティナはそれを考えながらホテルの大舞踏室のロビーにニックと並んで立った。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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