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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・36アワーズ

花嫁は逃亡中

花嫁は逃亡中


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・36アワーズ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 スーザン・マレリー(Susan Mallery)
 シルエット・スペシャル・エディションを代表する人気作家。USAトゥデイ紙や大型書店などのベストセラーリストの常連である。ユーモアがありながら情感に満ちた作品を年五、六冊執筆するが、それでも頭の中にあるアイデアをすべて作品にする時間がないのが悩みだと言う。作家が書くどんな奇抜な作品も、ごく当たり前に受けとめられる土地、南カリフォルニアに居を構え、世界で一番セクシーな夫と、二匹のかわいいけれどあまり頭のよくない猫と暮らす。

解説

 ランディは望まない結婚から逃れようとしていた矢先、銃を持った男たちに命を狙われ、行方をくらました。恐怖から偽名を使い、あちこちを転々とする日々を送っている。そんなある日ランディは、ブレイディ・ジョーンズという男性が、雇い人を捜していると聞いて面接に訪れた。値踏みするような彼の視線におびえ、仕事をもらうのはあきらめかけたものの、思いがけなく採用されて、ランディは安堵した。これでしばらくの間、暮らしていける。だが次の瞬間、彼の言葉にランディは凍りついた。「きみは犯罪者なのか?」
 ★2006年7月のシルエット・サーティシックス アワーズは人気作家、スーザン・マレリーの作品です。★

抄録

 中指のつけ根に、まめのつぶれた痕《あと》があった。ほかにも治りかけのまめや、リンパ液のたまったまめがいくつもある。ブレイディは分厚くなりかけているまめの痕をこすり、重労働によって生まれた荒れたてのひらを感じた。
 リタ・ハワードはつい最近まで重労働に従事した経験がなかったのだろう。いったいどんな事情を抱えているのだろうか。どうして正体を隠そうとするのだろう。
 考えこんでいたためか、ブレイディは手が熱くなっていることに気づかなかった。ようやく気づいたとき、彼はリタの手を乱暴に振り払ってしまいそうになった。
 てのひらから発した熱は骨までしみこみ、ブレイディの腕から胸へと駆けあがってから、下半身へ下りていった。男性を愚かな行動へと駆りたて、翌朝、その行為を後悔させるたぐいの熱だった。
 ブレイディは悪態をのみこんだ。彼女を牧場に招き入れたくなかった。もちろん、ベッドにも招き入れたくない。
 からみあう腕や脚を、彼は思い浮かべた。リタとひとつになり、黒い巻き毛に指をうずめる自分の姿を。ブレイディの想像のなかでは、ふたりはベッドを必要としていなかった。
 あらぬ空想を巡らしたことに気づかれたくなかったので、ブレイディはわざとゆっくり彼女の手を放すと、壁にもたれた。その行動にはふたつの効果があった。
 ひとつ目は、彼女から距離を置くことによって自制心をとり戻す効果。ふたつ目は、壁にもたれて腕組みし、足首を交差させることによって、空想に反応した下腹部から彼女の視線をそらす効果だ。
「きみの手を見るかぎりにおいては、厩舎で働いていたわけではないようだな」自分の声が震えていないことに、ブレイディは感謝した。「どんな仕事をしていたんだい?」
 彼が欲望と闘っていることにまったく気づいていないらしく、リタは肩をすくめた。
「いろいろな仕事をしたわ。フェニックスではウエイトレスをしていたの。わたしは客あしらいがあまりうまくなかったわ。こんでいないときは問題ないんだけれど、こんでくるとなんだかあわててしまって」彼女はダッフルバッグを抱きしめた。「アルバカーキでは大型ホテルで客室係の仕事をしたわ。その次がここ」
「東に向かっているのかい?」
 リタは視線をそらした。「今後のことはまだ決めていないわ」
 それでも、彼女はなにかから逃げているのだ。やはり、ひと夏の冒険を楽しんでいるわけではないのだろう。なにか問題を抱えているのは明らかだ。
「リタ」彼女が視線を上げるのを待ってから、ブレイディは続けた。「きみは犯罪者なのか?」
 目を見開いたリタは、ぽかんと口を開けた。彼女が言葉を発する前に、ブレイディは理解した。どうやら犯罪をおかしたわけではなさそうだ。

「もちろん違うわ。誓って」
 こんな質問に答えなければならないなんて。ランディは憂鬱《ゆううつ》な気分で考えながら、犯罪者ではないことを証明する方法がないことを悔やんだ。なんとしても、この仕事が欲しかった。いや、この仕事が必要なのだ。なんとかなるから大丈夫だと、さっきは虚勢を張ったが、実際には所持金はあと五ドルしかなく、ほかに行くあてもなかった。
「わかった。確認しないわけにはいかなかったんだ。気を悪くしないでくれるといいんだが」
「気にしていないわ」
「じゃあ、厩舎に案内するよ」
 ブレイディは事務所を出て厩舎に入っていった。ランディは彼についていった。馬のにおいをかぐと気分が落ち着いた。ここでの仕事は楽しめそうだ。ウエイトレスもホテルの客室係も、彼女にはなじめなかった。しばらくのあいだは、それらの仕事を続けるしかなかったが。逃亡している身で仕事を選ぶのは不可能に近い。
「馬になにか問題があれば、すぐに教えてくれ」ブレイディは言った。「たとえ午前四時で、ぼくが寝ていたとしてもかまわない。電話一本で獣医が来てくれる。たいした病気ではなかったとしても、病気を見過ごして馬を失うくらいなら、往診代くらい惜しくはないんだ」
「わかったわ」
 広々とした清潔な厩舎を、ランディは眺めた。どうやらこの牧場の経営は順調のようだ。気のせいかもしれないが、ここには幸せな時間を過ごした人々の気配が感じられる。以前の彼女であれば、そんなことを夢想する自分を笑ったに違いない。だがこの何週間で、ランディは直感に耳を傾けるようになっていた。ひとりで生きるうちに、五感に注意を払って自分を信じることを学んだのだ。頼れる人は誰もいないのだから。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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