和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>オレ様
著者プロフィール
水瀬 結月(みなせ ゆづき)
兵庫県出身/天秤座/血液型 A型/誕生日 10月23日/趣味:ふかふか布団で昼寝です!
リーフ出版、オークラ出版、ビブロスなどより作品を多数発表。
兵庫県出身/天秤座/血液型 A型/誕生日 10月23日/趣味:ふかふか布団で昼寝です!
リーフ出版、オークラ出版、ビブロスなどより作品を多数発表。
解説
香港黒社会との関係が噂される塔眞家に代々伝わる家宝、劉宝。その紅玉を目に当てて光に翳し、龍の紋章を浮かび上がらせることのできる人物こそ、一族に繁栄をもたらし次期総帥の花嫁となる……骨董商の凌は、その条件を満たす者として傲岸不遜な塔眞家三男、貴砺に監禁され、花嫁として躾を受けることに……。だが、お家騒動をめぐる罠が次第に明らかになり……。スリリング・ウェディングロマン♪
抄録
「おまえが花嫁になるなら、おまえの家族の安全は保障しよう」
それは言い換えれば、凌が求婚を拒むと家族に危険が及ぶということだ。単なる言葉での脅しだけではないような気がして、凌は息を呑んだ。
「結納金は……そうだな、一億くらいでどうだ? すぐに用意させよう」
「お受けします」
凌は即答する。心は決まった。
それだけの金があれば、自分の身に万が一のことがあっても、妹を送り出し、母が不自由のない生活を続けていくことができる。
できることなら危険な場所に足を踏み入れたくなどないが、すでに遅い。
おそらく応接室に通された時点で、凌は身辺調査を受ける対象となっていたのだろう。身元が割れているなら、下手に逃げ隠れするよりも、家族の安全を図りつつ男の自分が花嫁になるなどという馬鹿げた状況が変わることを願う方が得策に思えた。
「では一度、社に戻り……」
決心すると肝が据わる。凌は貴砺の腕から抜け出そうとした。ところが腕に力が込められ、躰がさらに密着してしまう。
「あの……?」
「勝手な行動は許さない。おまえはたった今から、私のものだ」
「ちょっと待っ……」
「花嫁になると自分で言っただろう。塔眞一族次期総帥の花嫁として恥ずかしくないよう、躾《しつ》けてやろう。一人で外出することは許さない。必要なものがあれば私か王《ワン》に──側近の王だ。彼に言え」
「待ってください! 会社はどうしろと言うんですか」
詰め寄ると、貴砺は傲慢なまなざしで凌を見下ろした。
「祝電でも寄越すよう、言っておくか」
「なっ……んんっ!?」
何が起こったのか、わからなかった。
数秒が経過してようやく、噛《か》みつかれているのだと気づいた。
自分以外のすべての人間を獲物だと思っているような、傲慢な口で。
頚動脈《けいどうみゃく》を噛み切られなくてよかった、と思わず考える。それがくちづけなのだとは微塵《みじん》も考えつかなかった。
噛みつかれ、引き抜くように舌を吸われ、また咀嚼《そしゃく》するようにそれを噛まれる。そんな痛みの伴うものが、キスだなどと思うはずがない。
喰《く》われると思った。
自分は、貴砺の餌《えさ》にされてしまうのだと。
「んー! んんーっ!」
暴れようとしたが、しっかりと躰を抱え込まれて叶わない。
呼吸が乱れる。酸素が不足して、頭が痺れはじめた。それは指先にも伝わり、凌は握りしめていた劉宝を落としそうになる。
しかしてのひらから滑り落ちそうになった瞬間、大きな手が包み込んだ。宝石ごと凌の手を握りしめる。互いのてのひらにルビーが押しつけられる。
一番はじめに手にした時は、ぞっとするほど冷たかったそれが、今は熱を発しているのではないかと思うほど熱かった。
膝から力が抜ける。
凌は抵抗する気力をすべて奪い取られ、貴砺の腕にぐったりと身を預けるしかなかった。
貴砺の唇が離れていく。うっすらと開けた視界に、その唇は扇情的な紅に見えた。
「ハイエナを捕獲するために餌を撒《ま》いておいただけだが──思わぬ収穫があったな」
その言葉で凌は、ようやく劉宝がわざと目立つ場所に置かれていた理由に気づく。
嵌《は》められたのだ。
貴砺ははじめから、劉宝を狙《ねら》う人間を陥れるために、来客者を片っ端から応接室で一人きりにさせていたのだろう。
「立て」
相変わらず傲慢な口調。
密着していた躰が離れる。つないでいた手も離され、劉宝は貴砺の手の中にあった。
凌はぐっと腹に力を込め、足を踏ん張る。
その様子を面白そうに眺め、貴砺はルビーを台座に填《は》め込み、陳列棚に戻した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
それは言い換えれば、凌が求婚を拒むと家族に危険が及ぶということだ。単なる言葉での脅しだけではないような気がして、凌は息を呑んだ。
「結納金は……そうだな、一億くらいでどうだ? すぐに用意させよう」
「お受けします」
凌は即答する。心は決まった。
それだけの金があれば、自分の身に万が一のことがあっても、妹を送り出し、母が不自由のない生活を続けていくことができる。
できることなら危険な場所に足を踏み入れたくなどないが、すでに遅い。
おそらく応接室に通された時点で、凌は身辺調査を受ける対象となっていたのだろう。身元が割れているなら、下手に逃げ隠れするよりも、家族の安全を図りつつ男の自分が花嫁になるなどという馬鹿げた状況が変わることを願う方が得策に思えた。
「では一度、社に戻り……」
決心すると肝が据わる。凌は貴砺の腕から抜け出そうとした。ところが腕に力が込められ、躰がさらに密着してしまう。
「あの……?」
「勝手な行動は許さない。おまえはたった今から、私のものだ」
「ちょっと待っ……」
「花嫁になると自分で言っただろう。塔眞一族次期総帥の花嫁として恥ずかしくないよう、躾《しつ》けてやろう。一人で外出することは許さない。必要なものがあれば私か王《ワン》に──側近の王だ。彼に言え」
「待ってください! 会社はどうしろと言うんですか」
詰め寄ると、貴砺は傲慢なまなざしで凌を見下ろした。
「祝電でも寄越すよう、言っておくか」
「なっ……んんっ!?」
何が起こったのか、わからなかった。
数秒が経過してようやく、噛《か》みつかれているのだと気づいた。
自分以外のすべての人間を獲物だと思っているような、傲慢な口で。
頚動脈《けいどうみゃく》を噛み切られなくてよかった、と思わず考える。それがくちづけなのだとは微塵《みじん》も考えつかなかった。
噛みつかれ、引き抜くように舌を吸われ、また咀嚼《そしゃく》するようにそれを噛まれる。そんな痛みの伴うものが、キスだなどと思うはずがない。
喰《く》われると思った。
自分は、貴砺の餌《えさ》にされてしまうのだと。
「んー! んんーっ!」
暴れようとしたが、しっかりと躰を抱え込まれて叶わない。
呼吸が乱れる。酸素が不足して、頭が痺れはじめた。それは指先にも伝わり、凌は握りしめていた劉宝を落としそうになる。
しかしてのひらから滑り落ちそうになった瞬間、大きな手が包み込んだ。宝石ごと凌の手を握りしめる。互いのてのひらにルビーが押しつけられる。
一番はじめに手にした時は、ぞっとするほど冷たかったそれが、今は熱を発しているのではないかと思うほど熱かった。
膝から力が抜ける。
凌は抵抗する気力をすべて奪い取られ、貴砺の腕にぐったりと身を預けるしかなかった。
貴砺の唇が離れていく。うっすらと開けた視界に、その唇は扇情的な紅に見えた。
「ハイエナを捕獲するために餌を撒《ま》いておいただけだが──思わぬ収穫があったな」
その言葉で凌は、ようやく劉宝がわざと目立つ場所に置かれていた理由に気づく。
嵌《は》められたのだ。
貴砺ははじめから、劉宝を狙《ねら》う人間を陥れるために、来客者を片っ端から応接室で一人きりにさせていたのだろう。
「立て」
相変わらず傲慢な口調。
密着していた躰が離れる。つないでいた手も離され、劉宝は貴砺の手の中にあった。
凌はぐっと腹に力を込め、足を踏ん張る。
その様子を面白そうに眺め、貴砺はルビーを台座に填《は》め込み、陳列棚に戻した。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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