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東京伝説 ゆがんだ街の怖い話

東京伝説 ゆがんだ街の怖い話

著: 平山夢明
発行: 竹書房
シリーズ: 東京伝説
価格:735円(税込)
10ポイント還元
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★☆☆☆3
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著者プロフィール

 平山 夢明(ひらやま ゆめあき)
 1961〜
 神奈川県生まれ。映画、ビデオの批評・製作からCFの企画、インタビュー、ルポ、自動販売機の営業、コンビにの店長と、様々な職歴を重ね、現在は生理的に嫌な話を書かせたら日本で三指に入る小説家にして、日本で一番陽気な怪談コレクター。近著に『「超」怖い話A』等がある。血液型はB型。蠍座。

解説

 夜、帰宅する。部屋はいつもと変わらないはずなのに、何かが引っかかる。それは本当に気のせいだろうか? 知らぬ間に誰かが部屋に侵入し、赤子を産み捨ててゆく。知り合いの名を騙って、得体の知れぬモノを送りつけてくる。通勤電車で隣に座った男が、自分の殺害計画を立てている。そんな想像を絶する異常事態が、今日もあなたのすぐ傍で起きているのだ。狂気は無差別のテロであり、防ぐ術はない。五感を研ぎ澄ませ、微かな違和感に足を止めよ。この世に人が在る限り、平和など何処にもないのだから……。

目次

ジャングルで生き延びるために。 手帳の男 紙片 終の店 夢の島保老園 ある夫婦 叉焼握り
お財布
聖餐
母乳礼賛
じゅあん
下見
ビバーク
闇蕎麦

顔拓

プレゼント
ペコちゃん
黒西瓜、赤西瓜
釣果
燃える父
家庭内暴力な兄
壊死
接着ダイエット
穴の女
死に損ない
洞窟
最後の夜
飛び込み
信号待ち
マッサージ・シート
トイレ二題
まくり
ピクルス
顔を割るか足を絞るか
コンタクト

抄録

じゅあん


 秋沢さんは去年の春、自室に戻った途端、言葉を失った。
「はじめに赤黒い肉が見えたんです」
 彼女の部屋はマンションの七階。ひとり暮らしである。
 着替えを終え、寝室に入った時にそれが目についた。
 近づくと微かに動いた。
 人間の赤ん坊だった。
 そっと掛け布団を捲るとシーツは血の海だった。
「赤ん坊には私のバスタオルが巻かれていました」
 驚いた彼女は警察に通報、すぐに刑事たちがやってきて赤ん坊は随行してきた救急車で運ばれて行った。
「どうやって入ってきたんでしょう」
「あれじゃないかな」
 刑事がベランダの外を指差した。
 そこには二週間前から外壁修理用に足場が組まれていた。
 工事はまだ二日を残していた。
「警察の話だと誰かが私の部屋に侵入して出産していったんじゃないかっていうんです」 指紋も採られ、シーツは証拠品として押収されていったが、犯人に繋がる手がかりはなかった。
 子供がどうなったのか彼女は訊ねることもしなかった。
「とにかく出勤していても家のなかのことが気になって気になって」
 暫くは仕事が手につかなかった。
 ひと月も経つ頃、ようやくあの記憶から解放され始めた。夜も安心して眠る事ができた。但し、戸締まりには気を前以上に気をつけるようになった。
 ある時、机の中の整理をしていると覚えのないメモが他の紙切れと一緒に混じっていた。
 隅にうっすらと紅い染みを見つけ、読む前から不安になった。
〈とつぜんのことになりまして、ありがとうごさいます。ほんのすこしだけでかえしてもらいます。かならずかえしてもらいますので、すこしいさせてあげてください。あれはじゅあんとなまえしました。じゅっかいのじゅとへいわんのあんです。じゅっかいのへいわんがみなさまにおとずれるのです。あなたさまにもいちばんにおとずれます。だからいさせてください。おねがいします。かならずとりかえしてもらいます。かならずとりかえしますのでいさせてください。ごはんとかおかねははらいます。はだかをうってでもはらいます。いつもうっています。だからへいきです。あんしんしてください。だからじゅあんをいさせてくださいませ〉
 愕然とした。
 突然、家の中が誰かに監視されているような気がして部屋の灯りを消すと窓の外を窺ってしまった。
 彼女はその場で警察に電話をすると担当した刑事に手紙のことを告げた。
 刑事は明日、署のほうにでも持ってきてくれないかと億劫そうに呟いた。
 もうこれは終わった事件なのだとその口調から秋沢さんは悟った。
「それでも手紙を持っていきました」
 とうに窓口は閉まっており、ベルを押すと奥でたむろしていた刑事のなかのひとりが応対に出た。事件の説明をしてもなかなか相手には伝わらなかった。ようやく年配の刑事が話を思い出したようだった。
「あの赤ん坊はどこに行ったんでしょうか」
「どこかなぁ。電話させますよ」
 三日後、留守電に眠たそうな刑事の声で赤ん坊のプライバシーに拘≪かか≫わることなので詳しい施設の名称は教えられないと入っていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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