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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

小さな奇跡

小さな奇跡


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャロル・マリネッリ(Carol Marinelli)
 イギリスで看護教育を受け、その後救急外来に長年勤務する。バックパックを背負っての旅行中に芽生えたロマンスを経て結婚し、オーストラリアに移り住む。現在も三人の子供とともに住むオーストラリアは彼女にとって第二の故郷になっているという。

解説

 子供が産めないことを告白したら、また捨てられてしまうの?

 看護師のモリーは勤め先の病院に突然現れた医師を見て息をのんだ。5年前に私を手ひどく振り、ほかの女性と結婚したルーク! 妻を亡くし、メルボルンに戻ってきたと聞いていたけれど、まさかこの病院に復職してくるなんて……。ルークと再会するときは幸せに光り輝く自分でいようと決めていたのに、彼と別れたあとに結婚した男性とは、つい先ごろ離婚したばかり。破局の理由は、どうしても子供が授からなかったから。悲嘆に暮れるモリーは、ルークもある苦悩を抱えていることを知り、切なさのあまり衝動的にベッドをともにしてしまった。これは着地点のない、今だけの関係だとわかっていながら。

 ■HQロマンスでも大活躍するキャロル・マリネッリが描く愛の復活の物語をお贈りします。5年を経て再会したヒーローとヒロインは、お互いに明かすことのできない秘密を抱えたまま関係を深めて……。ヒロインの身に奇跡が起こることを祈らずにはいられない作品です。

抄録

「君がそこまでキャリア志向だったとはね。いや、君はもちろんすばらしい看護師だったよ。ただ、引っかかるというか……」
「何が?」
「選んだ仕事がさ。子供が好きではないと言いながら、君は子供相手の仕事をしている」
「子供は好きよ」モリーは硬い表情で微笑んだ。「たとえば、ほら、がん病棟で働いているからがんが好きというわけではないでしょう」もう何度も使っている言いまわしだった。
 ルークは少し考える様子を見せてから、肩をすくめてうなずいた。「なるほど」
「ちょっとショックだったのかしら……」モリーは再び笑みをこわばらせた。「子供が生まれると聞いて。別にいいんだけどね。もう回復したし。本当に、あんまり話したくはないのよ」息をつぐ間もなく続けた。「私はジェシカが移行期の彼女だと思ってて、だからあんなに驚いたんだと思うの」
「移行期? わからないな」ルークはベーコンを大量に頬張り、笑みをごまかしながら眉をひそめた。
 もうっ、話したくないと今言ったのに!
「いろんな本に書いてあるわ。別れを経験すると、人は移行期の支えとなる人を求めるそうよ。つまり、そばにいて過去を乗り越える手助けをしてくれる人。自分を甘やかして、やる気を出させて、前に進ませてくれる人。二人はお互い、自分たちが今だけの関係だとわかってる。ゴールがないのがふつうなの。ジェシカもきっとそれなんだと思ってた」
「彼の移行期の彼女だと?」
「そう。でも違っていたわ。結婚するんですって」モリーは急に恥ずかしくなった。「ごめんなさい。私って、ついしゃべりすぎちゃうのよね」
「話すのはいいことだ」
「そうね」深く息を吸い、自分の問題は終わりとばかりに、彼を見つめた。「あなたも話す?」
 耐えがたい沈黙が続いた。彼は深い皺を額に刻んで、明らかに苦しんでいた。やがて発せられたのは、モリーが彼の口から聞く初めての言葉だった。
「いや、僕はだめだ」
 ルークは弱音を吐かない男性だ。どんな難事でも解決する。上司を呼んで助けを乞うこともいとわない。その彼が、話すのはつらいと言う。モリーはまた涙が出てきた。今日の涙はルークを思う涙だ。彼の手を握る。誰が見ていようと構わなかった。これは男女の問題ではなく、ルークの問題なのだから。
「話す以前に、考えるのも苦痛でね」ルークはきつく目を閉じて、すべてを自分の内に抱え込んだ。「僕は歩きつづけるだけだ。子供たちのために」
「もし気が変わって、話したくなったら……」
「わかってる」うなずいた彼は、手を引き離しながらぎこちなく笑いさえした。抱えた苦悩をのぞき見られてばつが悪いのだろうか、すぐに話題を変えた。「君は、その……移行期の男は見つけたのか?」
「まさか」モリーは皿に残った最後の卵をトーストでぬぐった。「早すぎるもの。あなたは?」
「まあ、問題があってね」彼は顎をかいた。
 順調に流れていた会話が微妙な方向に振れてしまった。踏み込まないほうがいいのだろう、とモリーは思った。やがて二人は気まずさを残したまま同時に席を立ち、いくつもの廊下を抜けて救急車の駐車場に出た。元の恋人に振る話題としては、あまり賢明でなかったのかもしれない。
 元といっても、自分がまだ惹かれている相手だ。
「君の車はどこに止めたんだ?」
「まだ整備工場なの。昨日はなかなか寝つけなくて、目が覚めたときは……」
「送ろうか?」
「大丈夫、電車で帰るわ」きっぱりと言った。
「遠慮するな」
「子供たちが待ってるでしょう?」
「今日は世話人がいるよ。母が泊まって、相手をしてくれている」ルークは車のキーをとり出すと、手に持ってじゃらじゃら鳴らした。彼が友人ならば、喜んで送ってもらうところだ。車に飛び乗って、家に着くまで眠っていただろう。ただ、彼とは友人のままではいられない予感があった。アン・マリーから車で送ると言われても、これほどどきどきはしない。それに、彼と目を合わせるのがさっきからやたらと気恥ずかしい。
「でも、電車でいいの!」今度は靴に向かって返事をした。みっともないわよ、とモリーは胸の中でつぶやいた。ひとりで勝手に緊張して。彼は奥さんを亡くしたばかり。なのに、まるで彼のほうも……。
「モリー……」
 顎にルークの手がかかり、魅力的な唇が息のかかる近さで彼女の名を呼んだ。次の瞬間には唇をふさがれていた。ほっとしたのは、恋人時代の習慣からだった。懐かしさが、胸を締めつけてくる。夢中になったかつてのキスの味をこうして思い出すのはつらい。目頭が熱くなるのを感じながらキスを返した。
 答えられないたくさんの質問が待っていると思うから、二人ともキスを終わらせようとはしない。だが、ついに唇が離れた。
 モリーは目を合わせられず、彼の胸に顔をうずめていた。「職員用の駐車場なのよ、ここ」冗談のつもりが、うまくいかなかった。「もう帰らないと」
「そうだな」
 本当に帰りたかった。うつむいたまますぐに歩きだして、できるだけ遠くに行きたかった。自分たちが本当に愚かな行為に走ってしまう前に。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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