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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

伯爵に拾われた娘

伯爵に拾われた娘


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ヘレン・ディクソン(Helen Dickson)
 イングランド北東部サウス・ヨークシャーの緑豊かな土地に、30年以上連れ添う夫とともに住む。自然をこよなく愛し、読書や映画鑑賞、音楽鑑賞が趣味で、とりわけオペラに目がない。調査のために図書館で何時間も過ごすこともあるが、想像と史実の絶妙なバランスがいい物語を生み出すと語る。

解説

 路地裏をさまよう薄汚れた少年は、運命に見放された令嬢の、悲しき仮の姿。

 男爵令嬢のエドウィナは少年に変装して家から逃げだした。不気味な老伯爵との縁談を、絶対受け入れられなかったから。だが世間の風は冷たい。所持金をすべて盗まれたうえ、悪人の手に落ち、ロンドンの路地裏でスリをはたらかされるはめになってしまった。ある日、偶然出会った立派な身なりの紳士アダムに救い出された彼女は、ほっとして自分が女性であることを告白した。すると、驚いた様子のアダムに意外な話をもちかけられる。「しばらく僕の屋敷に滞在して、ある仕事をしてくれないか?」伯爵位を継承したばかりだという彼から真剣な顔で頼まれ、一抹の不安を覚えながらも承諾したエドウィナだったが……。

 ■PHS−102『迷い込んだ愛の森』で運命に弄ばれた娘の物語を描き、好評を博したヘレン・ディクソン。1770年のロンドンを主な舞台にした本作でも悲運のヒロインが登場し、魅力的な伯爵と数奇なロマンスを繰り広げます。どうぞお見逃しなく!

抄録

 エドウィナは空のグラスを置くと振り返り、もう一度アダムと向き合った。彼は窓辺に寄りかかり、エドウィナの品のよい完璧な顔を眺めていた。「ありがとう。この屋敷であなたの帰りを待つわ。でも、わたしの絵が王立アカデミーに展示される前にはフランスに発つから」
「おや? せっかくロンドン中の注目の的になれるのに?」アダムは軽くからかった。「人々が君の肖像画を手に入れようと大騒ぎし、フリート街の文士たちは記事を書こうと躍起になるのに」
 エドウィナは怯えた目を向けた。「本当に?」
「そうでなきゃ、成功とは言えない」アダムはくすりと笑った。「すでに君はゴシップ連中の注目の的だよ。連中は僕の最新のミューズは誰かと嗅ぎ回っている。そのうち君が三つ頭の熊じゃないことを見せてやろう」
「騒がれるのは嫌だわ。有名になりたくないの」
「誰かに気づかれて、捜しに来られたら困るから。そうだろう、エドウィナ」
 アダムがまじまじと見つめていた。「ええ」エドウィナは突如ほほ笑んで、重い空気を振り払った。「こんなことなら、エドとして描いてもらうんだったわ。薄汚い少年なら気づかれずにすむのに」エドウィナは頭を軽くのけぞらせ、いたずらっぽく笑った。「でも、このアトリエにあるのは妙齢の女性の絵ばかりでしょう。中には肌もあらわな女性もいるわ。スリでかろうじて生き延びている子供の絵なんかには興味がないんじゃないかと思って」
 エドウィナが誇り高く正面から見つめていた。こうした笑い声を聞くと、改めて彼女が自由で活気ある女性であることを思い知らされる。アダムは唇の端を上げた。くつろいでいた背筋を伸ばし、空のグラスを置いて画架の前に戻る。「生意気な娘だ。さあソファに戻るんだ。絵を仕上げる」

 画家仲間や世間が傑作――自分でも最高傑作だと思う――と認めるであろう絵がついに完成した。アダムはエドウィナの手を取り、できあがった作品の前に連れていくと、美しい女性のドレスを脱がすように覆っていた布を外した。エドウィナはそこに描かれた自分の姿を見つめ、一瞬声をなくした。豪華な乳白色のドレスに身を包んだ若い女性がそこにいる。ハート形の顔を包む短い髪がまるで燃えあがる炎のように生き生きと輝いている。高い頬骨、鳥が驚いて羽を広げたような眉。
 その絵の静寂と透明感は圧巻だった。光が観る者を描かれている人物に集中させる。神秘的な作品だ。ゆったりとソファに寄りかかる女性がまるで光を発しているように見える。透明感と、簡素な構図が際立たせる静寂さと、悲しげなまなざしがもたらす親密さ。それでいて顔は驚くほどエネルギーにあふれている。強い感情を発しながらも、そこに性的なものはない。間違いなく、すばらしい絵だ。
「感想を聞かせてくれ」アダムは、絵でなくエドウィナの表情を見つめてつぶやいた。
「こ……これがわたし?」エドウィナは強く心を揺さぶられ、目を離すこともできなかった。「わたしはこんなふうに見えるの?」
「ああ、僕にはこう見える」
「でも、悲しそう……それにきれい」
「ああ。実物どおりだ」アダムはエドウィナの若々しい顔にほほ笑んだ。「悲しそうなのも、確かだ。理由はわからないけれどね。それに、きれいなのも。僕は見たままに描いた。君はうっとりするほどきれいだよ。これほど美しい女性を描かせてもらえて、名誉に思っている」
 思いがけず涙がこみあげ、エドウィナはアダムを見上げた。深く説得力のある声に真実みがあふれている。温かなまなざしにも。「こんなにすてきな言葉をかけてもらったのは初めてよ。ありがとう」エドウィナは我を忘れ、彼の首に抱きついた。
 アダムが背中に腕を回す。「どういたしまして」そう言って、甘い香りの髪に唇を寄せる。エドウィナの率直さと純真さに心が震えていた。毎日何時間もそばにいながら触れられない拷問のような数週間を経て、ついに彼女をこの腕に抱けたのだ。
 自分の無意識な行動に気づいて恥じらい、エドウィナは罪悪感から身を引こうとしてアダムが手を離してくれないことに戸惑った。それどころか彼は背中に回した腕に力をこめ、ますます強く抱き寄せる。アダムの視線が重い瞼の奥から柔らかな唇に落ち、そのまま物欲しげにとどまった。
「離れるな」彼は苦しげにつぶやいた。「このままでいてくれ」
 目と目が合う。アダムは動かなかった。エドウィナは喜びと期待が入り乱れるなか、彼がキスをしたがっていることに、自分にもキスを返してもらいたがっていることに気づいた。うっとりするような青い瞳に胸ときめく誘惑が浮かんでいる。
 キスの経験もなく、恥じらいながら唇を受け入れたが、その瞬間思いがけず全身が熱くなった。後頭部を抱える彼の指が首筋をくすぐり、もう片方の手が体をぴたりと沿わせるように背筋をなぞる。頭の片隅ですぐに離れろと命じる声が聞こえた。けれどもっと深いところで、アダムの情熱にふさわしくない反応をするなとうっとりする声も聞こえていた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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