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著者プロフィール
式 貴士(しき たかし)
1933年、東京生。早稲田大学大学院修了。ワセダ・ミステリ・クラブ創設期のメンバーの一人。間羊太郎名義のミステリ評論や、小早川博名義の雑学コラムなどを発表していたが、77年の式貴士名義第一作「おてて、つないで」以降、エロ、グロ、ナンセンス、そして奇想とユーモアに溢れた作品をたてつづけに発表し、異能のSF作家としても活動を開始したが、91年2月死去。他に蘭光生名義によるヴァイオレンスポルノも数多い。
1933年、東京生。早稲田大学大学院修了。ワセダ・ミステリ・クラブ創設期のメンバーの一人。間羊太郎名義のミステリ評論や、小早川博名義の雑学コラムなどを発表していたが、77年の式貴士名義第一作「おてて、つないで」以降、エロ、グロ、ナンセンス、そして奇想とユーモアに溢れた作品をたてつづけに発表し、異能のSF作家としても活動を開始したが、91年2月死去。他に蘭光生名義によるヴァイオレンスポルノも数多い。
解説
とにかく日本犯罪史上においてもたぐい稀な残酷非情な殺人鬼だった。八人の若い女性を暴行殺害したあげく、屍体にまで凌辱を加えていた。世間の犯人に対する怒りは凄まじく、連日、犯人弾劾の一大キャンペーンがマスコミ誌上を賑わしていた――。
ついに23歳の連続殺人鬼、草田八郎に対する最高裁判決の日がやってきた。一審、二審は死刑。だが最終判決は死刑を上まわる極刑、カンタン刑だった。ギロチンで首をチョン切るなりして殺してくれりゃあいいのに、よりによってカンタン刑とは!
スーパーSF作家、式貴士の奇想天外、奇妙奇天烈、迫力満点のデビュー作。
ついに23歳の連続殺人鬼、草田八郎に対する最高裁判決の日がやってきた。一審、二審は死刑。だが最終判決は死刑を上まわる極刑、カンタン刑だった。ギロチンで首をチョン切るなりして殺してくれりゃあいいのに、よりによってカンタン刑とは!
スーパーSF作家、式貴士の奇想天外、奇妙奇天烈、迫力満点のデビュー作。
目次
ポロロッカ
おてて、つないで
ドンデンの日
カンタン刑
バックシート・ドライバー
ルパンと竜馬とシラノと
日本が眠った日
不思議の国のマドンナ
Uターン病
長ァ〜いあとがき
おてて、つないで
ドンデンの日
カンタン刑
バックシート・ドライバー
ルパンと竜馬とシラノと
日本が眠った日
不思議の国のマドンナ
Uターン病
長ァ〜いあとがき
抄録
朝、目がさめて、最初に頭に浮かんだのはやっぱりあのことだった。
きのうの寝しなに飲んだ白いカプセルの効き目である。
期待のなかに、いくばくかの恐ろしさもこめて、そっと右手を寝巻の胸もとにさしこむ。ちゃんと、あったのだ、女の乳房が……。いや、女ではない、男であるおれの“女”の乳房が。グラマーな女房のほど大きくはないが、それでも、女学生くらいのふくらみ……。そして、おっかなびっくり下腹に手をさしのべる。
無くなっていた! その代りに、女性特有のくぼみが、心もとない深さではあったが、そこにあった。いくばくかの失望と悦び。
「おい、起きろよ! けさは仕度に時間がかかるから、一時間早く起きるんだったろう?」
「うううん……」
ねぼけ声で寝返りをうち、それでも目をさましたらしく、ごそごそ体を動かしていたが、
「きゃあ、できたわよ! あら、あら、いやあだ、……まあ……」
これ以上は言わないでも、書かないでも察しがつこう。女房は自分の体に男を見いだして、はしゃいでいるのだ。
「さあ、はりきらなくちゃあ! きょうからは中林奈美(なかばやしなみ)は男なのでありまあす。中林奈美男ってわけね。で、あなた、中林順(じゅん)は、中林順子」
阿呆(あほ)らしいといってしまえばそれまでだが、おれは、たしかに女体の主になったという生理的ショックの方が大きかった。
「さあ、着替えよ、あなた」
昨日の日曜日に、二人でショッピングした衣類が枕もとに置いてあった。
二人とも夜着を脱いで素裸になると、向かい合った。結婚して一年にもなるので、いまさら恥しがる間柄でもないが、なんとなく気恥しい思いをしたのはおれの方である。
「あら、素敵だよ、きみの体……」
女房のぶしつけな視線を感じて、あたしは思わず体をすくめてしまった。
「そんなにじろじろ見るなよ、ねえ……いやだわ……」
なんと、言葉づかいまでが女のそれになりつつあるとは! でも、おたがいに、それがチャンポンなのがおかしかった。まだまだどこかに前夜の性のなごりが残っているのだろう。
(「ドンデンの日」より)
きのうの寝しなに飲んだ白いカプセルの効き目である。
期待のなかに、いくばくかの恐ろしさもこめて、そっと右手を寝巻の胸もとにさしこむ。ちゃんと、あったのだ、女の乳房が……。いや、女ではない、男であるおれの“女”の乳房が。グラマーな女房のほど大きくはないが、それでも、女学生くらいのふくらみ……。そして、おっかなびっくり下腹に手をさしのべる。
無くなっていた! その代りに、女性特有のくぼみが、心もとない深さではあったが、そこにあった。いくばくかの失望と悦び。
「おい、起きろよ! けさは仕度に時間がかかるから、一時間早く起きるんだったろう?」
「うううん……」
ねぼけ声で寝返りをうち、それでも目をさましたらしく、ごそごそ体を動かしていたが、
「きゃあ、できたわよ! あら、あら、いやあだ、……まあ……」
これ以上は言わないでも、書かないでも察しがつこう。女房は自分の体に男を見いだして、はしゃいでいるのだ。
「さあ、はりきらなくちゃあ! きょうからは中林奈美(なかばやしなみ)は男なのでありまあす。中林奈美男ってわけね。で、あなた、中林順(じゅん)は、中林順子」
阿呆(あほ)らしいといってしまえばそれまでだが、おれは、たしかに女体の主になったという生理的ショックの方が大きかった。
「さあ、着替えよ、あなた」
昨日の日曜日に、二人でショッピングした衣類が枕もとに置いてあった。
二人とも夜着を脱いで素裸になると、向かい合った。結婚して一年にもなるので、いまさら恥しがる間柄でもないが、なんとなく気恥しい思いをしたのはおれの方である。
「あら、素敵だよ、きみの体……」
女房のぶしつけな視線を感じて、あたしは思わず体をすくめてしまった。
「そんなにじろじろ見るなよ、ねえ……いやだわ……」
なんと、言葉づかいまでが女のそれになりつつあるとは! でも、おたがいに、それがチャンポンなのがおかしかった。まだまだどこかに前夜の性のなごりが残っているのだろう。
(「ドンデンの日」より)
本の情報
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