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不実なギリシア海運王

不実なギリシア海運王


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

 娼婦呼ばわりされても、裏切り者と罵られても、それでも、あなたの腕に戻りたい。

母に捨てられ、父にも死なれて、癒しの旅に出かけたホリーは、エーゲ海のサントリーニ島で世にも美しい男性──ギリシア海運業界の雄、テオ・ツォウカトスと出会った。ふたりはたちまち激しい恋に落ちて電撃結婚するが、プレイボーイの夫にいつ捨てられるかと怯える生活に疲れ果て、ホリーは結局、みずからテオのもとを去った。別居して4年後。彼女はある目的のため、夫に面会を申し入れた。テオが指定した場所はバルセロナ──甘く熱いハネムーンを過ごした思い出の地で、彼はホリーを待ち受けていた。「裏切り者の娼婦が、今さら何をしに来たんだ?」

■プレイボーイのギリシア海運王と電撃結婚したホリー。しかし、幸せな結婚生活は長く続かず……。過去の呪縛に苦しむヒロインが真の愛に気づく過程に、思わず心が揺さぶられます。

抄録

 二人は見つめ合った。控えめな尊厳をたたえたロビーが二人のまわりから消えていくようだった。テオは怒りに駆られてギリシアからやってきた。怒りだけを感じてあのスイートルームからレストランまで飛んできた。それが今は別のものに変わっていた。何かが胸のなかでとろけ、今までより彼を穏やかな気持ちにさせた。そう、違う気持ちに。
「そういうことなのか?」やがてテオは口を開いた。ホリーは見返すばかりだ。「だから、会おうと言い張ったのか? 四年前に自分がしたことをおとぎ話に変えたかったから?」
「さっき言ったことは本当よ」ホリーの声は静かだけれど、きしんだ響きがあった。その下からは暗く、痛々しいとも言える何かが感じられる。「あなたから解放されるにはどうすればいいか考えたあげく、あのうそを思いついたのよ、テオ。あれならうまくいくとわかっていた」
 テオは彼女の体を揺さぶりたかった。そして、そんな衝動を覚える自分を嫌悪した。ぼくはそんな男じゃない。洞穴に住む原始人ならともかく。ホリーのいる前で、こうして自分をたしなめなくてはならないとは、つくづく情けない。
「今後の参考までに言っておくと、もっと簡単な意思表示の仕方があったんじゃないか。“あなたと別れたいの、テオ”そう言えばよかったんだ。ほんの二言三言で、驚くほど気持ちが伝わる。こんなごたごたも避けられたはずだ」
「あなたは話しやすい人じゃなかった」喉がふさがりでもしたのか、声がざらついている。「あのころも今も」
「ああ、そうか。なんでもかんでもぼくのせいになるんだな」テオは歯ぎしりしたくなった。「どうやら、ぼくがきみの不実を招いたらしい。きみをよその男に抱かせたのはぼくというわけだ」
 ホリーが息をのむ音が聞こえた。というより、息ができなくなったらしい。
「あれはうそだったの」彼女は繰り返し言った。
「ここは一つ、きみの話を信じるとしよう」テオはホリーのほうに身を乗りだした。だが、それは賢い選択ではなかったし、いい作戦でもなかった。ホリーの肌のにおいがする。バニラとスパイスの混じったようなにおいに、テオの体は痛いほど張りつめた。けれど、何も感じてはならない。「だが、今さらそれがどうした?」
 ホリーがぎくりとし、顎を引いて彼を見上げた。途方に暮れているようで、テオが覚えているホリーに見えた。とはいえ、それも自分の頭のなかで勝手につくりあげたホリーなのだ。もうだまされてはいけない。
「えっ、何が?」
 これも芝居だ。テオは胸の内で自戒した。彼女は芝居をしている。おまえと同じで、途方に暮れてなどいない。
「あれからもう四年近くがたつんだ、ホリー。こんなまねをしていったい何になる?」
 またもホリーは、あどけない戸惑いの表情を浮かべた。名人芸だと思わずにいられない。決してだまされはしないが、いっそう彼女が欲しくなる。つい抱き寄せて守ってやりたくなる。まったく、空恐ろしい演技力だ。
 ホリーがまた喉をごくりとさせた。「別に、ただ……あなたに知らせるべきだと思って」
「なるほど。きみの想像では、どんな展開になっていた?」テオが詰め寄ったので、ホリーは後ろに下がらざるをえなくなった。そこでテオは手を伸ばし、彼女の肩を両手でつかんだ。触れ合った衝撃に体を貫かれても、無視した。そういう惹かれ合いは今はどうでもいい。ホリーがはっとして目をきらめかせたのも、おそらく演技だろう。それが本物ではないことくらいはわかる。ああ、わかるとも。ばかげた過ちから学んだのだ。「ぼくがひざまずくとか? 神に感謝する? もしくは、うれしがって飛び跳ねるとか?」
「でなければ、少しは態度を和らげて、喧嘩腰になったり嘲ったりしなくなるとか」ホリーは言い返した。青い瞳が光を放つのは、肩に触れられているからというより、また口がきけるようになったからだろう。「まずはそれからよ」
 ホリーの口のことは考えるな。自らを叱責しながらテオは愛の言葉をささやくかのような言い方をした。「きみの話はひと言たりと信じない。ぼくのもとを去ったとき、きみは本性を現した。ほぼ四年にわたって送られてきた一枚一枚の請求書がそれを物語っている。急にきみが正反対のことを言っても、また別の芝居を始めたとしか思えない」
「あなたが信じないからといって、わたしのつくり話ということにはならないわ」
 テオはまた笑い、彼女の肩から手を離した。ホリーがよろけながらあとずさり、大きな柱の一つに片手をつくのを見ても哀れむまいとした。たとえ、その手が震えていても。
 テオの顎は岩のような固さを帯びた。「きみのためにも、つくり話であることを祈るよ」
 ホリーはめまいにでも襲われたかのように首を振った。「わからないわ」
 声がかすれている。これが、このホリーが本物なら、苦悩の表れだと思ったに違いない。だが、ありえない。
「あのときのわたしの告白はうそだったほうがいいんじゃない?」
 そのつもりはないのに、テオはいつの間にか彼女のそばに来ていた。ホリーの顔に浮かんでいるのは動揺と欲望だろうか。頬も赤い。そこからいろいろなことが読み取れるが、どうせ当てにはならない。テオは彼女に触れないよう両手をポケットに突っこんだ。しかし、一歩も譲らなかった。彼女の不安げな顔はなかなかいい。ぼくが次にどう出るかと気をもんでいるのだろう。
 どんな芝居をしようが、彼女もこればかりは偽れない。二人のあいだには今も脈打つものがあることは。それを利用しようか。四年近く前、ホリーには無力感を味わわされた。二度と、そんなまねはさせない。彼女にも、ほかの誰にも。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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