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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・コルトンズ

琥珀色のシャレード

琥珀色のシャレード


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・コルトンズ
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サンドラ・ステファン(Sandra Steffen)
 RITA賞受賞作家。読者の記憶に残るような登場人物を生み出すのが創作活動をする際の楽しみの一つだという。パソコンの画面で登場人物に命を吹き込みながら日々を送れることに胸をときめかせている。十人きょうだいの四番目としてミシガン州で育った。彼女にとって実在のヒーローである夫、やんちゃな四人の息子たち、たくさんのすてきな友人、親戚、隣人たちに囲まれ、にぎやかな生活を送っている。

解説

 最近感じる退屈と焦燥感を癒そうと、アンバー・コルトンは休暇をとり実家へ戻ってきた。そこへコルトン家の里子だったトリップが現れ、アンバーの気分はたちまちのうちに明るくなった。聞けばドクターである彼は、有名病院へ転職するために、後ろ盾を必要としているという。アンバーはときめきとともに提案した――彼女が婚約者のふりをして、後押ししてはどうかと。だがトリップは冷たく答えた。「退屈したお嬢さんの助けは必要ない」

抄録

「なぜそれを言わなかったの?」アンバーは次々と要領よく質問していった。トリップはイエスかノーで答えるほうが好きだが、診療所が厳しい状況から始まったこと、その未来に彼が抱いている希望や計画をひたすら話し続けた。いつしか彼は居心地のよいソファに腰かけていた。彼女はおそろいのソファに横座りをして聞いていた。
 結局、アロマテラピーは効果があったのだろう。
 窓の外の空は乳白色から灰色に、そして黒へと色を変えていった。キャンドルは燃えて低くなっていく。アンバーは明かりをつけなかった。アンバーの兄たちや姉妹のこと、それにトリップが彼女の家で暮らしたあいだに知りあった里子のことが話題にのぼった。アンバーは父親のことを愛情をこめて話したが、母親のことには決してふれなかった。ずっと音信がない養女である妹のエミリーのことを心配していた。トリップは自分がアンバーについてほとんどなにも知らないことに気づいた。コルトン家の人人とはほとんど交流がとだえている。ジョーとは連絡をとっていたが、医学部を卒業するのに必死で、大勢いるコルトン家の人間とのつきあいを維持できなかった。トリップはエミリーが失踪したことさえ知らなかったし、アンバーがフォートブラッグに住んでいることも知らなかった。プロスペリーノの牧場に行ってみたらイネズが大喜びで住所を教えてくれたのだ。ジョーの屋敷のように広大なところを想像していたが、実際のアンバーの家はかなり慎ましやかだった。
 アンバーは自分のことは話したがらなかった。そういう話になりかけると、彼女はトリップの診療所やサンタローザでの仕事のことに話を戻した。
「そこのドクターたちとは、何度会ったの?」
「二度だ」
「あなたのライバルは彼らに何度会ったの?」
「知らないな」
 アンバーはどこからともなくノートをとりだし、なにやら書きつけ始めた。彼女は夕食会のこと、それに誰が参加するのかについて質問した。彼女は実務的で、生き生きしていて、あたたかくて、頭がよかった。そう、彼女は頭が切れる。トリップは畏敬の念に打たれていた。
 風が窓をたたいた。トリップは隙間風を感じなかったが、キャンドルの炎はゆらゆらと揺れた。
 ふたりの視線が絡まる。トリップの脳裏に昨晩見た夢の残像がよぎった。深呼吸をし、アンバーの体に視線をさまよわせた。
「明日はなにをしているの?」アンバーが尋ねた。
「仕事だよ」トリップは咳払いをした。少なくとも、なにを考えているの、とは尋ねられなかった。その問いの答えを思いつくのは大変だっただろう。
「何時に終わりそう?」
「四時か五時には」
「五時ごろにフォートブラッグに来られる?」
「ぼくにここに来てほしいのかい?」
 アンバーは“今そう言ったでしょう?”と言いたげに眉をあげたが、ただうなずいただけだった。
 すぐにトリップもうなずいた。
 アンバーはノートになにか書いてそのページを破り、彼の手のなかに押しこんだ。「ここに来て。そうね、五時に。それから変身を始めましょう」
 変身?
 妙な妄想をしてはいけない。トリップはさっと立ちあがった。
 必死の努力にもかかわらず、トリップの頭のなかには妄想の世界が広がり、体温がかっと上昇した。アンバーは彼のまわりをぐるりとまわった。その隙に、トリップは自分の体を落ち着けた。
「どういう意味だい、変身って?」
「現時点では」アンバーはトリップの真後ろから言った。「見た目がすべてよ。フォートブラッグには古風ですてきな紳士服のお店があるの」
 トリップは紙に書かれた住所を見た。「紳士服の店だって? きみはぼくに新しいスーツを買わせる気かい? きみが言ったのはそういう意味か?」
「あなたが最高級のスーツを持っているのでなければね。どういう意味だと思ったの?」
 ぼくがなにを想像したかはどうでもいい。「ドクター・パーキンズはすでに、こういう格好をしたぼくに会っているんだぞ」
 アンバーはトリップをとくと眺めた。「あなたの格好は全然悪くないわ。女性から見ればね。ドクター・パーキンズは女性ではないんでしょう?」
 トリップはうなずいた。
 アンバーはため息をついた。「残念。まあいいわ。この週末には、ドクター・パーキンズの診療所にかかわっている人たちに変身後の新しいドクター・トリップ・カルフーンをお見せするのよ。陽光あふれるカリフォルニアで最高の腕きき小児科医をね」
 アンバーはトリップを玄関へと導いた。彼には記憶がなかったが、ドアは自分で開けたに違いない。そのドアを通って出ていったのだから。
「トリップ?」
 彼はステップの最上段で振り返った。「なんだ?」
「また友達になれてうれしいわ」トリップがなにか言う前に、アンバーは爪先立ちして唇でさっと彼の唇をかすめた。「おやすみなさい」
 ドアが閉まった。トリップは“さよなら”と言ったかどうかも思いだせなかったが、きっと言ったのだろう。少なくとも、言ったと思いたかった。
 トリップは唇を湿らせ、アンバーのリップグロスのストロベリーの香りを味わった。そしてそれを手の甲でぬぐい、彫像のようにじっと立っていた。体の奥底では、欲望が頭をもたげていた。
 トリップはアンバーの申し出に感謝していたし、今度会ったら彼女にそう伝えるつもりだった。そのあとで、いくつか約束ごとを決めなければならない。ぼくにはあの地位が、そしてそれによってもたらされる信用が必要だ。たしかに、新しいスーツは必要なのだろう。しかし、ぼくが髪を脱色してブルーのコンタクトを入れるべきだと思っているのなら、アンバーは考え違いをしている。あの地位を手に入れるとしたら、内面を認められたからであるべきで、うわべによって決められてはならない。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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