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仕組まれた情事【ハーレクイン・セレクト版】

仕組まれた情事【ハーレクイン・セレクト版】


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・セレクト
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ジェニー・ルーカス(JENNIE LUCAS)
 本屋を経営する両親のもとたくさんの本に囲まれ、アメリカ、アイダホ州の小さい町で遠い国々を夢見て育つ。十六歳でヨーロッパへ一人旅を経験して以来、アルバイトをしながらアメリカじゅうを旅する。二十二歳で夫となる男性に出会い、大学で英文学の学位を取得した一年後、小説を書き始めた。現在、幼い子供ふたりの育児に追われながらも執筆活動を通して大好きな旅をしているという。

解説

彼女は病院のベッドに横たわり、緊張に苛まれていた。主治医の話から、自分がイヴという名前で、車の事故のせいで記憶喪失に陥っていることは既に知っていた。そして、妊娠していることも。これからお腹の子の父親であるギリシア人富豪に会うというのに、その顔さえ思い出せないなんて……。病室のドアが開き、恋人だというタロス・クセナキスが現れた。信じられないほどハンサムな男性だが、冷たい影を感じる。どうしても記憶を取り戻せない彼女を抱きしめ、タロスが言った。「もう決して君を放さない。きみは僕の妻になるんだ!」

■タロスに抱かれる度、少しずつ記憶を取り戻すイヴ。ついにすべてを思い出したとき、タロスは最も憎むべき相手だったことが明らかになりますが、もうそのときには彼をどうしようもないほど愛していて……。

*本書は、ハーレクイン・ロマンスから既に配信されている作品のハーレクイン・セレクト版となります。 ご購入の際は十分ご注意ください。

抄録

 彼が体を起こしてくれた。背中に当てられた手から全身に熱が伝わり、イヴは神経質に唇を舌で湿らせた。
「あなたは……タロス・クセナキスね?」彼女は思いきってきき、否定の言葉を待った。彼が違うと答えることを願っていた。本物の恋人――いかにも温厚そうな男性がドアから入ってきてくれることを願っていた。
 イヴの背中を撫でていた彼の手がぴたりととまった。「君は僕のことがわかるんだね?」
 イヴはかぶりを振った。「いいえ。あなたの部下の男性たちとお医者様から名前を聞いたのよ」
 彼はさぐるようにイヴを見た。「ドクター・バートレットは、君が記憶喪失に陥っていると言っていた。僕には信じられないが、そうなんだね? 君は本当に僕のことを覚えていないんだね?」
 そのせいで彼はどんなに傷ついているだろう! 「ごめんなさい」イヴはあやまり、額をもんだ。「なんとか思い出そうとしているんだけど、今のところ覚えているのは、あなたの部下の男性が私を車から引っぱり出そうとしていたことだけ。あの人たちが私の車のすぐうしろにいたのは幸運だったわ」
 彼の唇がほんのわずかにゆがんだ気がした。「そうだな。ものすごく幸運だった」彼は言い、それから背筋を伸ばした。「君は今日、病院を出られるよ」
 イヴは深く息を吸いこんだ。「今日?」
「今すぐにだ」
「でも……」イヴは唇を噛み締めた。「私はまだなにも思い出せないのよ! あなたに会ったらなにか変わるんじゃないかと期待していたんだけど……」
「記憶が戻るかもしれないと思っていたのかい?」
 イヴはみじめな気持ちでうなずいた。がっかりしてもしかたがないと自分に言い聞かせたが、悲しみがこみあげてきた。自分が愛する男性、そして自分を愛しているはずの男性の顔を見れば、記憶はすぐに回復するだろうと、今まで信じていたのだ。
 もし二人が愛し合っていたのなら。おなかの子供の父親が一夜の情事の相手以上の存在なら。
「あなたはひどく傷ついているでしょうね」わきあがる恐怖を抑えつけ、イヴは言った。「愛する人に覚えていないと言われたらどんな気持ちか、私には想像することしかできないけど」
 あなたは私を愛しているの? 彼の表情をうかがいながら、イヴは心の中ですがるように尋ねた。私はあなたを愛しているの?
「大丈夫だ」彼は身をかがめ、イヴの額にそっとキスをした。
 彼がそばにいると、寒い冬の日に夏の暖かい日差しを浴びているようなぬくもりを感じた。
「心配ないよ、イヴ。そのうち思い出すはずだ……なにもかも」
 イヴは彼に感謝のまなざしを向けた。最初に私が抱いた印象は間違っていたようだ。彼は冷酷な人なんかじゃない。親切な人だ。さもなければ、こんなにやさしく、辛抱強く、愛情深く接してくれるはずがない。自分の心の痛みよりも私のことを心配してくれるはずがない。
 イヴは深呼吸をした。私も彼のように勇敢にならなければ。毛布をわきへ押しやり、こみあげてくる熱いものを抑えこんで彼女は言った。「着替えるわ」
 すると、彼がとめた。「待ってくれ。もう一つ、話し合わなくてはならないことがある」
 それがなんの話かはすぐにわかった。二人を隔てていた毛布がなくなると、病院の薄いガウンしか着ていないイヴはひどく無防備になった気がした。彼女は再び毛布をつかみ、首元まで引きあげた。
「お医者様から聞いたのね?」
「ああ」彼の低い声には険しい響きがあった。
「その話を聞いて、あなたはうれしい?」イヴは震える声で尋ねた。
 彼はしばらく無言でイヴを見おろしていた。それからようやく答えた。「驚いたよ」
 イヴはじっと彼の目をのぞきこんだ。「じゃあ、赤ちゃんができたのは予想外のことだったのね?」
 彼は毛布をつかんで、きつく握った。そして、毛布に視線を落としてから、再びイヴを見た。「こんな君を見るのは初めてだ」彼はささやき声で言い、イヴの頬にかかった巻き毛を払った。「化粧をしていない、素顔の君を見るのは」
 イヴは身を引こうとした。「きっとひどい顔をしているでしょうね」
 しかし、彼はイヴを引き寄せた。暗く陰ったその瞳を見て、イヴの体の奥深くから震えがわき起こった。
「赤ちゃんができて、あなたはうれしい?」彼女は静かに尋ねた。
 彼はイヴに腕をまわした。「君の面倒はちゃんと見るよ」
 なぜ彼は私の質問に答えないのだろう? イヴはごくりと唾をのみこんだ。それから顔を上げ、弱々しくほほえんだ。「心配しないで、私は病人じゃないわ。記憶もまもなく戻るはずよ。ドクター・バートレットが専門医を紹介してくれて――」
 彼の腕に力がこもり、イヴは固い胸に抱き寄せられた。「ほかの医者に診てもらう必要はない」彼は荒々しく言った。「僕と一緒に家に帰ればいいんだ」
 黒いシャツを通して彼の胸の鼓動が頬に伝わってきた。白檀のエキゾチックな香りに包まれ、イヴは思わず目を閉じた。
 すると、なにもかもが消え去った。病室、ドアのガラス部分から見える医師や看護師の姿、彼の部下が携帯電話に向かって話す声、消毒液のにおい、医療機器の音……それらすべてが。
 存在するのは彼だけ。
 彼の力強い腕に抱かれ、イヴは事故にあって以来初めて心から安らぎを覚え、愛されていると感じた。この世界に自分のいるべき場所があると。
 彼は私を愛しているの?


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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