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学校のおぞましい話 二学期

学校のおぞましい話 二学期


発行: キリック
シリーズ: 『学校のおぞましい話』
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

 ──おぞましい話は、この世に生まれたがっている。
 黒根南学園には、七不思議よりも怪談よりも、はるかに危険な『おぞましい話』なる噂があった。三年生が引退し、新聞部の部長となった中曽根青葉は、無謀にも『おぞましい話』の取材を敢行する。彼女が目をつけたのは、一学期に続発した怪事件への関与がささやかれる、一条ニコだった。逆に「あの話には関わるな……命に関わるぞ」と警告される青葉だったが、ゴシップこそニュースの本質だとさらに取材を続け、やがて『壁の耳』という噂にたどり着く。世にも恐ろしい結末が待ち受けているとも知らずに……。

 怪談とは次元の違うおぞましさ! 著者渾身の学園オムニバス・ショートホラー第二弾!!

目次

一時限目 壁に耳あり
二時限目 障子に目あり
三時限目 スケキヨの脚
四時限目 猿に似た手
五時限目 這いまわる舌
六時限目 歯噛み
放課後

抄録

 甘かった。
 学校のおぞましい話など、大したことはないと思っていた。
 そのツケが、これだ。
 四六時中、校内のさまざまな噂話が、謎の人の声となって聞こえてくる。
「二組の橋本ってさあ、ロリコンで小学生に声かけてるんだって」
「美香もひどいよねえ。あいつ、男、何人ふってるの? ちょっと可愛いからって……」
「知ってる? 渡辺のやつ、井上とこっそりつきあってるって」
「うそー、井上って、あの冴えないおっさんの先生でしよ?」
「渡辺、ファザコンだからさあ。でも不倫だし、いろいろとやばいっしょー」
 はじめのうちは、ゴシップを聞くのも面白かった。
 しかし二十四時間、こんな話ばかり聞こえてくるというのは、さすがに神経がもたない。なにしろ噂話は夢のなかにまで登場するのだ。
 おかげで学校一、校内の醜聞について詳しくなったが、このままでは本当に精神を病む。
 いちばんの問題は、それが学校にいるときだけでなく、家にいようが、外にいようが、ところかまわず聞こえてくることだった。さすがの青葉も、疲労困憊《こんぱい》していた。
「だから……やめとけって、言ったんですよ、先輩」
 大橋は一応、こちらを心配しているようだ。
「あれ……触れちゃいけないものなんですよ。さわらぬ神に祟りなしっていうでしょ」
「うるさいっ」
 いまの青葉には、大橋の言葉すらもわずらわらしかった。
 彼の言っていることは間違っていない。まったくの正論である。
 というより、正論だからこそ、いらつくのだ。
 己がいかに間違ったことをしたか、真正面から糾弾されているようなものである。
 もっとも、ふだんの青葉ならそこまで心は狭くない。いまは一種の神経症に近い状態なのだ。
 耳栓をしたり、イヤフォンで音楽を聞いたり、さまざま手を尽くしてみたが、声は常に聞こえてくる。
 このままではいずれ精神をやられて、自分も両耳を切り落とすことになるのではないか。
 そんな強迫観念も、やがて現実となるかもしれない。
「もう……なんとかしてよ……」
 後悔先に立たず、という言葉をこれほど痛烈に意識したことはない。
 一条ニコの言ったことは正しかった。「学校のおぞましい話」には、決して触れるべきではなかったのだ。
 また、声が聞こえてくる。
「でもさー……中曽根っているじゃん。あいつ、どーしようもないよねー」
「ああ、新聞部の青葉」
「そうそう。ジャーナリスト志望とか言っているけど、やってることってただのマスゴミじゃん」
「だね。超うぜー」
 いままでにこんなパターンはなかった。あきらかに自分に対する悪口だ。
「知ってる? あいつ、実は家に大量のBL本とか隠し持ってるって」
 それを聞いて、慄然とした。
 BL本とは、男性同士の愛を描いた、特殊なジャンルのものである。しかしこのことは、誰にも言ったことはないはずだ。なぜバレている。
「あとさー、中学のとき、あいつ、くそ恥ずかしいポエムノートとか書いてたんだよ。超乙女チックなやつ」
「ああ、知ってる。痛いよねー」
 おかしい。
 ポエムノートをつけていたのは事実だ。が、これまた他人には絶対に知られていない秘密である。
「それとさ、あいつ、週に三度もオナってるらしいよ、BL本ネタにして」
「うわー、なにそれ。ただの変態じゃん」
 目の前が真っ暗になった。
 恥ずかしい、決して人に知られたくない秘密というのは誰にでもある。それがすべて聞こえてくる声で暴かれていく。
「なにこれ……いやだ、いやだ、いやだあ……」
「ちょっと……先輩、どうしたんですか」
 大橋がこちらに近寄ろうとしてきた。
「でも本当にこの先輩、中身は残念だけど顔だけは結構、いいんだよなあ。結構、胸もあるし」
 ぞっとした。
「ちょっと、大橋、なに言っているの、いきなり」
 本能的に胸を押さえた。
「は? 俺、なにも言ってませんよ」
「なんだ、ついに本当に頭おかしくなったのか? それにしても、本当にいい匂いするし、最高だよな。また隠し撮りした写真で、今夜もネタにするか」
 本能的な嫌悪感にかられた。
 だが、二番目の声が聞こえてきたときには、「大橋の唇は動いてなかった」。
 ひょっとすると、心の声──あるいは他人の本音まで、あの耳が教えてくれているというのだろうか。
「隠し撮りって……なに?」
「は?」
 大橋は平然をよそおっていたが、ごくわずかに動揺していた。
「やべえ。盗撮、バレたかな?」
 また声が聞こえる。
 大橋は写真の扱いに詳しい。そのくらいは、その気になれば平然とやりそうだ。
「ちょっと待ってください。先輩、なに言ってるんですか! 被害妄想ですよ、それ」
「なんだこいつ、ついにマジで頭がイカレたのか。だいたい、こんな奴のそばにいるのは体目当てだって気づかないのかね。そうじゃなきゃ、誰がこんなわがまま女……あ、でも精神的に弱ってるいまがチャンスかな。うまくいけば、一発やらせてもらえるかも」
 吐き気がしてきた。
 なんだかんだといって、いままで大橋のことをかなり信頼していたのだ。
 その根底が、覆されてしまった。
「誰が……誰が、あんたなんかと!」
 たまらずに、青葉は部室から外に出た。またあちこちから声がする。
「なにあの新聞部。ついに頭おかしくなったのかな」
「そろそろ、俺たちの仲間、増えるかも」
 仲間?
 いったい、なんの話だ。
 その瞬間、青葉の目は一人の少女の姿を捉えていた。

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