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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

奇跡を宿したナース

奇跡を宿したナース


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アリスン・ロバーツ(Alison Roberts)
 ニュージーランド生まれの彼女は父親の仕事の関係で5歳のときから海外生活を経験した。帰国ののち小学校教師となり、医師の夫と結婚。クライストチャーチに移住後は医療関係の仕事に携わる。夫とスコットランドに滞在していたとき、小説を書き始めた。現在は救急隊員の資格を取るべく訓練中で、執筆の合間には、可能な限り現場に出ているという。

解説

わたしを蔑む彼とこの小さな息子に、どんなつながりがあるというの? 

やむなき事情から人工授精で匿名者の子を身ごもったハリエットは、人里離れた浜辺を一人で歩いているときに産気づいてしまった。たまたま通りかかった外科医の男性に救われるも、母子ともに命の危険にさらされた状況で意識が混濁し、ハリエットはそのときのことを覚えていなかった――命の恩人であるそのハンサムなドクターの顔さえも。彼は駆けつけた救急隊に母子を託し、名乗りもせずに立ち去った。2年後、ハリエットは看護師として復帰し、同僚に温かく迎えられるが、ただ一人、新しい外科医長のパトリックだけはつらくあたるのだった。いったいどうして、彼はわたしをこんなにも蔑むの……? 

■新しいボスが、まさか我が子を取り上げてくれたドクターとは知らないハリエット。一方、彼女を我が子の父親が誰かもわからない身持ちの悪い女性と思いこむパトリック。心がすれ違うなか、それでもパトリックはハリエットの息子に何か絆のようなものを感じ……。

抄録

 またうめき声が聞こえた。
 パトリック・ミラーのうなじの毛が逆立った。また悪夢にうなされているのかと思ったが、それは現実の世界から聞こえてくる声だった。誰かがどこかで苦しんでいる。
 灰色の海と空が交わる水平線から目を離し、あたりを見まわした。けれども砂浜には波に打ち上げられた白茶けた流木が落ちているだけだ。悲痛な叫び声をあげている者は見当たらない。
 霧雨が顔に吹きつける中、彼はその場に立ち尽くした。見渡すかぎり、この荒涼とした浜辺には誰もいなかった。ニュージーランドの南島の西海岸は手つかずの荒々しい自然が残されており、雨も多く、人はほとんど住んでいない。そんなうら寂しい土地だからこそ、パトリックは新天地のクライストチャーチに向かう前に立ち寄ったのだ。南島を背骨のように走るサザン・アルプス山脈を越える前に高速道路を降りて名前も知らない脇道を走り、雑草の伸びた展望台で車をとめた。そして、浜辺をあてもなく歩いていたときにその声が聞こえてきたのだ。
 けれども今はもう聞こえない。あたりは静まり返り、ときおり空高く飛ぶかもめの鳴き声がするだけだ。もしかするとかもめの声が人間の声に聞こえただけなのかもしれない。あるいはあとに残してきた過去の遺物が痛ましい叫び声をあげていたのかもしれない。
 いや、違う。パトリックは耳をそばだてた。今度はその方向がわかるほどはっきりと声が聞こえてきた。首をめぐらせると、なだらかに傾斜した砂浜のてっぺんにある背の高い木の下に人影が見えた。女性だ。パトリックは急いで駆け寄った。女性は木にもたれかかってぐったりと座り込んでいた。栗色の髪はくしゃくしゃで、顔は青ざめていたが、目だけは怒りをはらんだようにぎらぎら光っていた。
「どうしたんだ?」パトリックは声をかけた。「けがをしているのか?」
 女性は首を激しく横に振り、木の枝につかまって震える脚で立ち上がろうとした。「なんでもないから、ほうっておいて」
「そうは見えないよ」パトリックは言い張った。「ぼくは医者だ。だから手当てができるかもしれない」
 彼女は顔をそむけた。だがすぐに息をのんでぎゅっと目を閉じた。そのとき、パトリックは彼女のだぶだぶのセーターが隠していたものに気づいた。
「妊娠しているのか!」
「的確な診断だこと。きっと名医なんでしょうね」彼女は皮肉っぽく言った。「でも、早くどこかに行ってちょうだい。わたしにかまわないで」
 パトリックは奥歯をかみ締めた。本人が望もうと望むまいと、彼女には助けが必要だ。そして、ぼくなら助けられるかもしれない。彼は枝を握り締めている彼女の手を見た。薬指に金色の指輪がはまっている。
「きみの夫はどこにいるんだ?」
「あなたには関係ないでしょう!」彼女はまだ顔をそむけたままだ。
「いったいどうしてきみはこんなところに一人でいるんだ?」
「しばらく一人になりたかったのよ。だからわたしのことはほうっておいて。お願いだから」
「だめだ」パトリックは冷静に言って、彼女の全身を見まわした。淡い色のスカートが赤く染まっているのに気づいて、心の中で悪態をつく。「出血している。わかっているのか?」
「なんですって?」彼女は振り向き、血のついたスカートを見下ろして、パトリックのように悪態をつきかけたが、すぐにそれは苦しげなうめき声に変わった。パトリックは彼女の両腕をつかんで地面に寝かせ、もがいて起き上がろうとする彼女をしっかりと押さえつけた。
「じっとしているんだ。きみが協力してくれなければ、手当てができない」
「手当てなんかしなくていい!」彼女は叫び、爪を立ててパトリックの顔を引っかこうとした。
 パトリックは容赦なく腕を押さえつけ、険しい声で言った。「きみは死にたいのか? 赤ん坊を死なせたいのか?」
 女性の動きがぴたりととまった。動揺の色を浮かべた顔で青い目をじっと彼に向ける。沈黙が続き、緊張が耐えられないほど高まったとき、彼女はようやく弱々しい声で答えた。「いいえ」
「よし」パトリックは彼女の腕を放した。「それなら手当てをさせてくれ」
 それから数分後、パトリックは車に戻って携帯電話を取り出し、救急車を呼ぶ番号を押した。圏外になるかもしれないと心配したが、幸いすぐに電話は通じ、自分が医者であることを救急隊に告げた。
「妊娠後期の女性を浜辺で見つけた。陣痛が始まり、出血している。どうやら逆子らしい」
「場所はどこですか?」
「フォックス・グレイジャーの南だ。ハースト峠に向かう手前で高速道路を降りて、脇道をしばらく行ったところにある展望台にぼくの青いレンジローバーをとめてある」パトリックは電話で話しながら、何か役に立ちそうなものはないかと車の中を探した。どうしてこの旅行に出かける前に救急キットを車に積んでおかなかったんだ? いら立たしげに思いながら衣類の入っていた段ボール箱を空にし、なんとか使えそうなものをその中に入れた。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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