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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

砂の檻

砂の檻


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

彼の兄との、愛なき結婚──すべては小さな命を守るため。

妊婦のスターリングは、慌てて自宅から逃げだした。おなかの子の父親であるオマールは、1週間前に交通事故で帰らぬ人となった。そしてたった今、彼の厳格な兄、バクリ国王のリハドがこちらへ向かっているとの情報を耳にしたのだ。目的は明白だ。王家の血を引くこの子を奪うつもりでしょう? 未婚の母から生まれた王位継承者をリハドが認めるはずがない。そもそも彼は信じないだろう。弟が生涯隠し通した秘密も、スターリングが清らかなバージンであるということも。

■祖国を離れ、年若い愛人のスターリングと長年暮らしてきた弟が突然亡くなった──リハドはそう信じていました。ところが彼女から驚愕の事実を聞かされ……。息もつかせぬドラマティックなロマンス!

抄録

「自分でこの状況を招いておきながら、わたしに罪悪感を押しつけるのはやめて」スターリングはそう答えながら、かすかに揺らめいた羞恥心の炎を無視した。
 彼の言い分にも一理あると思うのは間違いだわ。彼はオマールを傷つけ、わたしを誘拐したのよ。だが羞恥心の火は消えなかった。どうやら体は彼女より彼の味方についたようだ。
「それとも、夫婦の義務について何か言いたいのか? わたしがその義務を果たすよう主張するだろうと?」リハドが近づいてくるのを見てスターリングは固唾をのんだが、彼は一歩手前で立ちどまった。つややかな金色の瞳は、相変わらず愛撫のようだ。「がっかりさせて申し訳ないが、わたしにはそれよりずっと大事な仕事があるのでね。何も自分に鞭打って弟の――」
 結婚した日に愛人呼ばわりされるのはごめんだ。
「ではお引きとめしないわ」彼を遮ってスターリングは言った。「わたしはここにいますから。あなたと結婚させられ、あなたに捕らえられ、あなたを憎みながら。愉快な話でしょう?」
「それが世界じゅうの夫婦が送っている典型的な結婚生活だろう。とはいえ我々の結婚自体は、典型的とはほど遠いがね」そう言い返し、リハドは笑った。笑い声が体を走り抜け、スターリングは賢い女性ならここで後ずさりするだろうと思った。たとえ逃げたと思われようが、安全地帯を見つけるだろう。だが彼女はもちろん、堂々と立ち続けた。
 そのとき何かが動いた。風か、それとも窓から踊るように入りこんだ光か。あるいは、認めたくはないが、ふたりのあいだに飛び交うびりびりとした電流のような何かだろうか。スターリングは、その感覚をずっと無視しようとしていたのだが、それは彼の魅惑のまなざしにも、金色の瞳にもきらめいていた。
 リハドが手を伸ばしてきて彼女の顎に滑らせ、頬を包みこんだとき、スターリングは何もしなかった。ただ黙って、そうさせた。これまで誰にも触れさせたことはなかったのに、ただじっと目を合わせ、息を止めた。濃い金色の鋭い瞳が彼女を射抜き、熱い手が彼女を根こそぎ変えていく。こんなにも荒々しく強烈な感覚に見舞われながら、嫌悪感に襲われないなんて――。
「くそっ」リハドがつぶやいた。まるで彼のほうが苦しめられ、自分を見失って、なす術がないかのような言い方だった。「きみのすべてが間違っている」
 そして顔を寄せ、唇を重ねた。まるでこれまでも数えきれないほどそうしてきたかのように、我が物顔で。まるで彼女が以前からずっと自分のものであったかのように。
 すべてが止まった。そして溶けだした。
 スターリングは身構えたが、恐怖は襲ってこなかった。感じたのは唇の熱さ、高まる激情、それに体を駆け抜けて触れるものすべてを焼き焦がす炎。
 キスはゆっくりと長く、このうえなく情熱的だった。
 それは想像していたものとはまるで違った。彼女はこれまでキスされる危険のない小さな世界に自分を閉じこめながら、想像するだけにとどめていた。リハドのキスは支配的で、彼女の中を嵐のように走り抜けて、すべてを忘れさせた。彼以外のすべてを、このキス以外のすべてを忘れさせた。
 自分は彼の女にはなるまいと思っていた。この火に焼き尽くされ、ただの灰に、切なる欲望になりはてはしないと。
 でも、ああ、彼のものになりたい――。
 そのときリハドが唇を離し、彼女に吐息がかかった。心を震わせる荒々しい息はスターリングの呼吸同様、乱れていた。
 リハドが彼女の顔から手を離して後ろに下がった瞬間、ふたりとも鮮やかな色彩と明るく熱い光から、灰色の冷気の中へ放りだされた。そして永遠とも思える時間、見つめあった。
 スターリングはあらゆるものを感じながら、何も感じていなかった。壁にかけられたピンクや赤や金色の見事なタペストリー。そこかしこに置かれた金めっきや大理石の小像、高い天井からつるされたきらめく水晶のシャンデリア。それを隅から隅まで眺めながら、ここで長い一日を過ごしていたのは覚えている。青い海が果てしなく広がり、世界はすぐそこにあっても手は届かず、バクリ宮殿は崖の上にそびえるように立っている。赤ん坊も今日は低い位置にいるようでずっしりと重く、スターリングは腹部に痛みを感じていた。まるで赤ん坊までが、こんなことになって平気なのかと、おなかの中から愛想をつかしているようだ。
 そしてリハド。国王であり、彼女の夫。さらには今、彼女にキスしてきた男性だ。その姿はどこから見ても裕福なシークそのもので、伝統的な衣装は彼の強さと権力をいっそう際立たせている。彼は絶大な力を剣のように身につけているだけでなく、それを振るうこともできるのだと今わかった。
 スターリングを見つめ返す彼の表情は石のようだが、金色の目は燃えるように輝いていて、同じように彼女も、体じゅうに押し寄せるキスの余韻に燃えあがった。顔をそむけることができない。
「今言おうとしていることは、言わないで」それは自分の声ではないようで、ありのままの自分をさらけだしすぎている気もした。でもどうにもならない。「今日は言わないで」
 リハドの鼻孔が広がった。深く息を吸うように、自分を抑えこむように。彼もまたこの事態に面食らっているかのように。スターリングの中でまだぱちぱち音をたてて燃え広がっている炎と、何度でも奪いたくなるその味が、彼の中でもすでに激しく、危険なものになっているというのか。

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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