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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ 別冊

夕映えのロンドン

夕映えのロンドン


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・プレゼンツ 作家シリーズ別冊
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

なんて酷い男なの! 先日の従妹の打ち明け話を思いだして、リーは怒りに震えた。マット・ヒューム──大会社の社長が、自分の部下を弄ぶような真似をするなんて。ふと、リーは目の前で食事を供にしている婚約者に目を移した。彼はとてもよい人だし、そんなことはしない。ただ最近は、リーからの愛情を感じられないと嘆いてはいるけれど。ひとりでレストランを出て、エレベーターに乗った彼女は、狭い空間に火花が散るような感覚を覚え、衝撃を受けた。奥に立つセクシーな男性の灰色の瞳から、なぜか目を離せない。次の瞬間、抗えない力に引かれて、リーの唇が彼の唇と重なった。

■ハーレクイン・ロマンス創刊1979年から順次、その年の選りすぐりの1冊をお届けする〈ロマンス・タイムマシン〉。あの懐かしい作品が、あの時代の思い出とともに鮮やかによみがえります。

抄録

 男はあいまいな笑い方をした。「ぼくが彼なら、あなたが立ち上がれなくなるまでキスをし続けるけどね、リー」
 無礼な問いかけについうっかり返事をしてしまった自分に対してリーは腹をたてた。狭いエレベーターの箱の中で、二人の目が火花を散らした。二人きりの状態が急に気になって、リーの呼吸が早まり、胸は大きく上下する。リーにはもう言葉を発するゆとりさえない。彼の言葉と、それと裏腹な冷たいまなざしに、リーはすっかり度を失っていた。
 しばらく男は返事を待つ様子だったがやがてふっと口もとに笑いを浮かべた。「つまり、ぼくがこれからしようと思っていることを言ったまでさ」
 リーはあわてて後へ下がったがすぐに冷たい金属の壁面にぶつかった。口もとをふるわせて見上げると、男は一歩前へ出た。
「もしさわったら、大声を出しますよ」おどすようにリーは小声で言った。唇が乾ききっている。
 彼はリーの頭の上の壁に両手を突っぱり、体でリーを囲んでしまった。身動きならず、相変わらずにこにこと見おろす彼の顔を見上げているうちになんとも形容のしがたい胸のときめきを覚えた。
「まさかほんとうにはなさらないわね」
 彼は笑った。「それがそうじゃないんだな、特にきみのような唇にはね」
「さわらないで」リーは身をかたくして命令した。
「ぼくはきみの内気なフィアンセとはちがうんでね、リー。ぼくは命令するほうで、されるほうではない」そう言うと彼はぐっと身を寄せてきた。脚に彼の重みがかかり、脈が早まって、リーはもう考える力も失いかけた。こんな感覚は生まれて初めてだ。
 救いを求めるように青い目をあげて男を見た。間近に男の体が迫っている。自分の体内から、予想もしない、何かわからぬふるえに突き上げられて冷ややかな怒りがいつしかやわらぎ、リーはささやくように情にすがった。「いや。お願い……」ふるえる声でそう言っている間に彼の唇がぐんぐん近づいてくるのを見て、体じゅうが叫びをあげた。リーは身をよじって逃れようとしたが、その顔のすぐそばで彼はつぶやいた。「じっとしていないと怖いぞ」
 静かな脅迫は無視しよう、とリーの頭はそう言っていた。叫べばいい、抵抗すればいい。リーを放してくれるまで。しかし直感のようなものは彼に従えと言っている。男の暴力に対面するなんて、まるで思ってみたこともないので、頭のほうは無防備で、どうしていいのか、ほんとうはわからないのだ。たった今までは、リーは自分の世界は守れる、と至極当たり前のように感じていた。確かにこれまでは自分にふさわしい世界を自分の能力で築いてきたと言える。フィリップが彼女にキスするとき、どんな情熱的なキスをするときも、彼にはどこか恐る恐るという態度があった。許すも許さないも、リーのほうに決定権があった。
 他人の強い意志の前に無力な自分を見出すなどリーにとってまったく初めての経験だ。両手でリーの顔は仰向かされ、彼のなすがままになっていた。すぐに唇が荒々しく押しつけられ、リーの唇を開かせようとねじこまれた。威厳も誇りも失われ、リーの顔に、のどに、熱い血がのぼってきて、まったく新しい感覚が一気にリーの全身をつつみこんだ。
 やがて彼の唇はなめらかにのどの脇へとすべり、デリケートな指がリーの首すじをくりかえしたどる。リーは息がつまり、胸がはりさけるかと思った。彼は頭を上げると、半ば目を伏せて頬を染め、身をかたくしているリーを眺めた。じっとリーから目を離さずに彼は両手をおろしてリーの手首をつかむと自分の首にまわさせた。一瞬リーは身ぶるいしたがさからわなかった。ついで彼は両手でリーの横隔膜のあたりをぴったりはさみこみ、青い大きな瞳をのぞきこんだ。両手はそろそろと上へずり上がってきたと思うと胸のふくらみがそっくり彼の手に包みこまれた。リーは思わず長いうめき声ともため息ともつかぬ声を洩らして、目を閉じた。
 次の瞬間彼の唇は再びリーの口に重なっていた。リーは全身の力が抜け、立っているのもやっとの思いであった。彼の磁力にひきつけられるようにリーの体は反り返り、彼はリーの背に手をまわしていっそうその体を引きつけた。リーの唇は開き、深い衝動に負けていつしか積極的に応じていた。まったく無意識にリーの手は少しずつ彼の首や髪の中を動きまわりはじめた。
 彼の指がそっと背のジッパーをおろし、露わな肩や背を彼の手が這いまわっているのもリーはかすかに感じた。彼はリーの髪をとめているピンを抜き、長いブロンドの髪はばさりと顔にかかった。それでも彼の腕の中の細身のからだはいっさい抵抗を示さなかった。いかにも男性的な強い唇と手に、すっかりつき従っていたから。
 彼がやっとキスをやめるとリーは身ぶるいした。まぶたは青い目をかくし、長時間にわたって情熱を交わしつづけた半開きの唇はいくらか腫れてもいた。リーが目を開くと目の前にはじっと彼女をみつめている男の目があった。
 彼はいきなりリーから身を離した。急に支えを失って――一瞬のことだが物理的にも情熱的にも支えを失った思いで――リーはバランスをくずし、白い肩をドレスからみせたまま、ふるえる足でやっとふみこたえた。
「たぶんきみのフィアンセに多少の説教をしてやる必要がありそうだ」
 遠くに人の声がした。「技術者だ」彼は口を曲げてみせた。「きわどいところだった!」
 リーはあわてて身づくろいをはじめた。ふるえる手でジッパーをあげ、髪をまとめてピンで止めた。意地悪く彼は手伝いもせず、壁に背をもたれてじっと眺めているだけだ。そして笑いながら言った。
「口紅もかなり直さなきゃ」
 リーはハンカチーフを出して乱暴に拭きとった。口紅といっしょにキスの痕跡も。それを見て彼はまた笑った。
「きれいになったよ。でもおそすぎたね、リー」

 *この続きは製品版でお楽しみください。

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