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理系伯爵は女心が理解できない

理系伯爵は女心が理解できない


発行: アンジェリカ
シリーズ: アンジェリカ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

名目だけの夫・トマスがいきなり「申し訳ないが、僕とセッ……あー、白い結婚の件を無かったことにしてほしい」って、本気!? 結婚したとき一方的に別居を宣言してきたくせに!! けれど子どもの頃から彼に惹かれていたトレイシーはついOKしてしまう。
あれよあれよで始まった、すれ違い夫婦の甘い(はずの)蜜月。ロマンス小説を愛読する妄想ぎみの伯爵夫人と、融通の利かない年下伯爵、果たして二人は理解し合えるのか? 新感覚のネオヒストリカル! 

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 執事が部屋を出た途端、案の定トレイシーはガミガミとヒステリックにがなり始めた。
「私が処女でなくて何だって言うのよ! 貴方以外の誰に純潔を捧げるって言うの!? 教会できちんと誓ったことを、この私が破るだなんて! この私が尻軽のあばずれだなんて! よくも、よくも! この鈍感! インポ! 冷血漢!!」
 尻軽ともあばずれとも言ってはいないのだが。
 トレイシーは握った拳を何度も振り上げ、効率の悪いことに硬い第一関節ではなく握りの弱い手掌側でポカポカとトマスの胸を叩いている。
 あまり痛くもないのでそのままにしているが、腹の上に座ったまま動かれるのは少々具合が悪い。いや、良い? 
 本当に、男だと思われていない。相変わらず。
 布地越しの内股の感触は柔らかく温かくて気持ちが良い。これを堪能することが許される身分になったんだなと、妙な感慨を感じた。
「何よ何よ! こんなに放っておいて、心配してくれてるのかと思ったのに、思っ、ひっく、何よ馬鹿!……ううっ」
 罵倒しているのか泣いているのか分からなくなってきた。とりあえず話し合いをしなければいけない。トマスは左胸のポケットからハンカチを取り出した。
 涙を拭いてやろうとするとトレイシーは嫌々と頭を振って逃れ、そのくせハンカチを奪い取り、涙どころか鼻水までかんで、フンッと鼻を鳴らすとくしゃくしゃに丸めたその布切れをトマスに突き返した。「あーあ」とそれをつまんでぶら下げる。汚いなあ。
「あら」
 トレイシーが急に目を丸くして、自分が汚した布切れを見た。
「懐かしい。まだ使ってくれてたの」
 涙と鼻水にまみれたリネンに、かつての自分の手仕事を見つけたようだ。
 オーブリーのものを全て受け取るわけにはいかないが、自分のものを持ち続けるのは構わないだろう。兄のものは兄のもの。僕のものは僕のもの。という自分ルールに従って、貰い物の刺繍ハンカチは全て未練たらしく取っておいてある。良いじゃないか、どうせ自分のなんか練習台なんだ。
「最初の二枚は擦り切れてしまったから使ってない。しまってあるよ。並べてみると上達ぶりが分かって面白いんだ」
「やめて恥ずかしい!! 全部捨ててちょうだい!」
 トレイシーが真っ赤になった。
 捨てるかよ、馬鹿女。胸ばっかり大きくなって、頭の中は空っぽだな。
 薄暗い感情が急に頭をもたげて来た。絶対、捨てるものか。
「……捨ててもいいけど、頼みがある」
 珍しく、嘘は滑らかに口から出た。まあ、厳密には嘘ではない。捨てると明言はしていない。
「何?」
「離婚の件」
 トレイシーの赤い顔がすうっと白くなった。薄茶の瞳から表情が消える。
 できれば、不満を持たないでくれ。トマスは身勝手な願いを胸で唱えた。今になって、拒絶されるのが死ぬほど怖い。
「離婚……に、今すぐ応じるか、もしくは延期を承知するかを選んで欲しい。その、延期の方は少し……手続きが面倒になるんで、無理には勧めないが」
 トレイシーはぽかんとした。
 これは、好感触なのか? まあ、悪い反応ではない。今のところ。
「こちらの都合で申し訳ないんだが、僕とセッ……あー、白い結婚の件を、なかったことにして欲しいんだ。一晩……だとあからさますぎるか。そうだな、何日間か……いや、一ヶ月くらい、新婚旅行に行こう。それで、その旅行の間、夫婦として過ごしてもらえると有難い。旅行後は、あんたの好きにして良い。希望があれば言ってくれ。離婚については、僕が全部かぶろう。遺棄でも浮気でも、証拠作りには協力する。気の済むようにやってくれて構わない。勿論、手続き上白い結婚で通したいなら喜んで偽証しよう。でないとあんたが再婚できなくなるからね」
 一気に言ってから、トレイシーを見上げた。
 彼女は相変わらず呆けた顔で夫の上に座っている。
「新婚旅行……?」
「そう。僕ら行ってないだろ? どこでもいい、希望はあるかい。贅沢していいよ。パリでもバースでも……アマゾンとかでなけりゃ、何とかする。大陸の方なら友人がいるな。アムステルダムに、ベルリン、ゲッティンゲン、イェーナ……オセロにもいる。オセロ大は鉱物学が強いんだ」
 トマスは珍しく饒舌になった。必死だったし、緊張していた。
「夜は?」
 はっきりとそこを聞かれて、うっと詰まった。
 夜こそ『夫婦として』でお願いしたい。
「私を……抱くの?」
 トレイシーが、信じられない、という顔をして、少し身じろぎした。
 股間を内股で擦られて、トマスの身体がばきんと硬くなる。
 男心を分かっていない妻は、恨みがましげに夫を見下ろした。
「キスしてくれたら、行ってもいい。大人のキス」
 少し口を尖らせ目元を赤く染めて、拗ねたような声音で渡されたのは免罪符だった。トマスの両腕がトレイシーを引き寄せ、組み敷くように身体の位置を入れ替える。
 喰い付くような飢えたキスは、彼の初めてのキスだったから、多少の稚拙さはお許し願いたい。
 頭の片隅で、舞い上がる前に詫びを入れておけ、と醒めた自分が囁いた。オーブリーと、ジャスティンへ。ジャスティンだって次男だ。戦死していなければこれはジャスティンの権利だ。だが、今となっては。
 『でかいおっぱい』は、僕のものになるよ。
 ほんの一時だから、許してくれ。


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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