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後見人は不機嫌な伯爵

後見人は不機嫌な伯爵


発行: アンジェリカ
シリーズ: アンジェリカ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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解説

会ったこともない後見人に強いられた窮屈な生活から飛び出したアメリア。男装で家を出た彼女は乗合馬車で事件に巻き込まれ、黒髪で銀の瞳の青年ジェレマイアに助けられる。彼は幅広い知識もあり、一緒に食事をしたアメリアは、話に夢中になるうちに泥酔状態に。「ぼくは思いのほか、きみを気に入っている」彼の囁きも眠り込む彼女には届かず……。そして従僕として彼についていくことになったアメリア。実はジェムは……!? 青年貴族と意地っ張り娘のヒストリカルアドベンチャー! 

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 現状がおかしなことになっているとアメリアが気がついたのは、観音開きのとびらが開いて、ふた間つづきの部屋に入り、バーナバス氏に大きなベッドにどさりと下ろされたときだった。ひどく酔ってはいるものの、アメリアはそれを超えてぎょっとする。
「バーナバスさん、ここは!」
「ぼくの部屋だが」
 涼しい顔で言い放ち、彼はアメリアの目のまえで衣服を惜しげもなくつぎつぎと脱ぎさり、ガウンにそでを通していった。彫刻のような均整のとれた身体を、アメリアはあ然としながら見まもった。彼女はこわばり、なにが起きているのかうまく把握できずにいた。ただただ信じられない出来事に、口をぱくぱくさせていた。そしてようやくしぼり出した言葉が。
「なぜぼくのまえで着替えを……」
 バーナバス氏は不敵に目を細くした。
「きみは十五の少年のはずだが。そうだろう? レオナール・フリンくん」
 アメリアのあごを指で持ち上げる。
「異性ならいざ知らず、同性をまえになにを恥じらうことがある。男同士だ、遠慮なくきみも脱いでしまいなさい」
 言ったなりに、彼はアメリアの着る青いフロック・コートに手をかけてくる。危機を感じたアメリアは、ずりずりとベッドから降りようとするが、頑丈なうでにはばまれる。
「わ、ちょっと、まってください!」
 なかばさけぶようにアメリアは言う。
「ぼく寒いですから! すごく寒気がしますから。おかまいなく! 絶対脱ぎたくありません!」
 いじわるそうに瞳をきらめかせ、バーナバス氏はむりやり彼女からフロック・コートをはぎとった。彼はアメリアの抗議の声などものともしない。
「しわになってはこまるだろう。なかなか良い仕立てだ。これは預かっておく」
 上着とそろいの青いヴェストを着ているとはいえ、シャツに黒いズボンすがたのアメリアは、とても心細くなってきた。不安に駆られながらも彼を見上げる。そんな彼女のようすにバーナバス氏はまたあの魅力的な笑みを浮かべ、深みのある声で笑った。
「なにもとって食いはしないから、そうびくびくするものじゃない」
 アメリアの後頭部を支え、うしろで結われた彼女の髪のリボンを解きつつ、やさしくベッドに押し倒した。
「きみはいま男なのだろう? ぼくは同性愛者ではないからね、こわがる必要はない。そうだろう、フリンくん」
 アメリアの顔の両側に、きしみとともにバーナバス氏の手が置かれた。その手がぐっと沈みこんだかと思うと、視界いっぱいに銀が広がって、額にやわらかな熱を感じた。彼の唇だと気がついたのは、しばらく時間が経ってからだ。
 不思議なことにその行為で落ち着いたアメリアは、だまって仰向けのまま彼の瞳をじっと見つめた。胸の奥にこみあげる、泣きたくなるほど美しい虹彩に、釘づけになる。
「そんな顔はするものじゃない」
 すこし枯れた声を出したバーナバス氏は、ため息をついた。
「まったく、きみという娘は」
 急な眠気におそわれて、起きていられなくなったアメリアは、ゆっくりとまつげを伏せていく。
「おい、寝るんじゃない。洗いざらい話を聞くと言っただろう」
 今度はまぶたにキスされて、アメリアはびっくりして目を見開いた。強じんな腕に押さえつけられ、身じろぎすら不可能だ。
「きみはデヴォンシャーでなにをするつもりだ。答えてもらおうか」
「……デヴォンシャーで、ぼくは……」
 あらがえない睡魔に、力なくまぶたは閉ざされるが、今度はバーナバス氏はアメリアのクラバットに手をかけた。これにはさすがのアメリアもうろたえる。
「あ……え? なにをするんです?」
 するするとクラバットがとられ、ヴェストのまえを開けられる。
「だめです! あ、ちょっと、バーナバスさん!」
「いまきみを眠れないようにするだけだ」
 片眉をはね上げて、バーナバス氏はアメリアの耳もとでささやいた。
「きみはひどく酔っているからね。十中八九、明日には覚えていないと思うが」
 慣れた手つきで器用にアメリアのシャツのボタンを外していく。ためらいはみられない。
「予定よりもずいぶん早くなってしまうが──もし明日の朝、きみの記憶が残っているなら、ぼくはその場で責任をとる。むろん記憶に残らなくても、近いうちに責任はとるが」
 頭が酔いのために働かず、どうしてこんなことになっているのかわからずに、アメリアはおろおろと混乱するばかりだ。
「バーナバスさん、なにを言って──」
 唇がふさがれた。アメリアの声は閉ざされた。だが、いまはそれが人生ではじめて受ける口づけだとは認識できない。
 バーナバス氏は真っ向からアメリアのすみれ色をつらぬいた。
「ぼくは思いのほか、きみを気に入っている」


 *この続きは製品版でお楽しみください。

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