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セイギのヒーロー

セイギのヒーロー


発行: キリック
シリーズ: セイギのヒーロー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

 高校二年の天城正勝は同級生からいじめられていた。痩せているため、まわりからは「ヒョロ」と呼ばれている。小学生のころから続いているいじめを、正勝はいつも諦観して受け入れ、へらへらと卑屈な笑みを浮かべるだけだ。
しかし、この日は違った。もっと勇気があれば。もっと度胸があれば。自分に「ヒーロー」のような特別な力があれば──。
そう、この世界には「ヒーロー」という特殊能力を持つ者たちが存在する。能力は種類も強弱もさまざまで、一万人にひとりが何かをきっかけにそれを発現する。中には、超人的な力を行使できるS級ヒーローもいるが、その発現率はさらに低く、百万分の一と言われている。なぜ、自分はヒーローになれないのか。自分の人生は負け犬のまま終わるのか。いじめがエスカレートしていく中で、正勝はその感情を爆発させた。と、いじめっ子の一人の頭が、至近距離からショットガンを食らったように吹き飛んだ。ヒーローとして覚醒したのだ。しかも、その力はS級の中でも強大で、破壊に特化されたものだった。そこにいきなり、ヒーローギルド「ラビット・ハット」のメンバー「ジャンピング・ダンディ」が現れる。いわゆる瞬間移動で跳んできたらしい。そのままアジトへと連れていかれ、ラビット・ハットへの加入を勧められる正勝だったが、彼の力を欲しがる敵対ギルドの美女「ベルベッド・メデューサ」からも接触があり、あっさりと籠絡されてしまう。強大な能力を手にした正勝の運命は? そして、世界に増えはじめたヒーローの力とは一体……? 

 ヒーローたちが人類の存続を脅かす!? 昨今のヒーローブームに一石を投じる、作者渾身のアンチ・ヒロイズム・ホラー! 

目次

第一部
第二部
第三部
第四部
第五部
終章

抄録

 世の中、理不尽だ。
 ヒーローといっても、なにしろ一万人に一人である。
 S級ヒーローにいたっては、日本国内には百人ほどしかいない。
 だからこうした学校の裏手で行われているささやかな悪までは、裁いてくれないのだ。
「けど、千円じゃあ、ちょっとなあ。こっちもかえって、精神的なストレスってやつがたまるよなあ」
 伊丹がこちらを凝視すると、獰猛《どうもう》な笑みを浮かべた。
「まあ、じゃあ、ストレス解消ってことで」
 いきなり伊丹の拳が腹部に直撃した。
「おぐっ」
 かがみ込もうとした瞬間、今度は顎のあたりに衝撃がきた。激痛とともに脳が揺さぶられ、世界がひっくり返る。
 またか。結局、こうなるのか。
 普段の伊丹と柴田は、あまり傷を残さないような殴り方をするが、今日は違うらしい。二人とも鬱憤《うっぷん》がたまっているのだろう。
 まだ頭がくらくらする。吐き気がしてきた。脳が派手にかき回されると、脳しんとうで死ぬこともあるという。
 生まれてこのかた、いつも日陰者の人生だった。
 こんなところで自分は死ぬのか。ずっと、負け犬のまま。
 人に馬鹿にされ、嘲られ、罵られ、殴られ、最期がこれか。
 突如、いままで感じたこともないような、激しい怒りを覚えた。脳の奥が爆《は》ぜるような、未知の感覚に襲われる。
 死にたくない。こんな惨めな最期を自分は、決して認めない。
 ゆっくりと、正勝は立ち上がった。
「おお、タフだねえ。それくらいじゃないと、困るよ」
 伊丹は嬉しそうだった。
「ふざ……けるな」
「は?」
 とたんに、伊丹の顔が驚愕にかたまった。
「お前……なに言ってんの?」
「ふざけるなって……言っているんだよっ。この十円ハゲっ」
 伊丹の頭部にはいわゆる十円ハゲがある。本人はこのことをひどく気にしていた。
「てめえ……」
 正勝は、相手の逆鱗に触れた。だがこのまま負け犬でいるよりはいい。
「ざけんなっこらっ!」
 伊丹が拳を握りしめた瞬間、いままでたまりにたまっていた憎悪が、外に迸《ほとばし》るような感覚がやってきた。
「!」
 その刹那、伊丹の頭がまるで至近距離からショットガンの直撃をくらったかのように後ろにむかって爆発した。
 骨片、脳漿《のうしょう》、そして灰色がかったピンクの豆腐みたいな脳や真紅の血液が校舎裏の壁にべっとりとはりついていく。
 なにが起きたのか、理解できなかった。
「え?」
 どうやら、柴田も同じようだ。
「なに、これ? なんかの……冗談だろ」
 人はあまりにも異常な現象に直面した際、冷静な判断力を失う。
「おい……お前、なに、銃でも持ってるのかよっ」
 柴田が、うわずった声をあげた。
「いや……そういうんじゃなくて……」
 こんなことは、常識では考えられない。
 いや、違う。
 たしかに一年ほど前までは、そうだったかもしれない。
 しかしいまは、科学的にはまったく解明されていない未知の力だが、この現象を説明する言葉がある。
「おい、お前、まさか……」
 柴田の顔に、怯えの色が浮かんだ。
「嘘だろ……そんなこと……まさか、よりにもよって、お前が……」
 さすがに柴田も、同じ可能性に気づいたようだ。
 ヒーローとしての能力を得た。そうとしか、思えない。
 先ほど伊丹に殴られたとき、頭を激しく打った。事故のあとにヒーロー能力を得る者がいる、という噂は聞いたことがある。
 ひょっとすると、似たような理屈が働いたのかもしれない。
「ははは、はははははは」
 気がつくと、勝手に笑い声が出ていた。信じられない。
 夢でも見ているのではないかと思ったが、間違いなくこれは現実だ。
 いままで負け続けの人生だったが、生まれて初めて、正勝は神に感謝した。
 この力があれば、もういじめられることはない。誰にも、馬鹿にされることはない。
 人の頭を吹き飛ばすほどの威力だ。S級とまではいかないかもしれないが、相当な力といえる。
 いや、頭だけではなく、人間をまるごと、ばらばらにできるかもしれない。幸いなことに、実験対象はすぐそばにいる。
 それは殺人だと心のなかでささやく者がいたが、いままで柴田にやられたことを考えれば、そんなものはどうでもよくなった。
 これは断じて殺人ではない。正義の執行だ。
 この自分が、裁きを下す。
「おい……ちょっと、落ち着け」
 柴田がへたり込んだ。どうやら、腰が抜けたらしい。
「待てよ……いや、待ってください。俺だって、好きでやっていたわけじゃないんです。伊丹に強制されて……」
「この前、金魚を無理やり食わされたけど、楽しそうだったよな。あのあと、ひどい下痢になって死ぬかと思ったけど」
「あれも、伊丹が……」
「じゃあ、女子の前で強制ストリップさせられたときは?」
「俺は可哀想だから、やめろって……」
「三組の山上さんのスカートめくれって、命令したときは柴田、お前が言いはじめたんじゃなかったっけ? 俺が山上さんにあこがれていたって知っていたんだろ」
「いや、そ、そんなことあったっけ……」
 他にも数えきれないほどの屈辱の記憶が脳裏をよぎった。
「判決を下すよ」
 正勝は告げた。
「柴田、お前、死刑」
 ばん、という水風船が破裂するような音とともに、柴田の体がばらばらに砕け散った。
 今度は全身にショットガンを叩き込んだような感じである。あるいは強力な爆弾を食らったら、こんなふうになるのだろうか。
 全身の骨も筋肉も内臓も引きちぎられ、ただの「人間の破片」と化している。すさまじい血臭と臓器らしい生臭いにおいがして、少し吐き気を覚えた。
 ただ、あまりにも光景がシュールすぎて、不思議とグロテスクさや不気味さは感じない。人体のオブジェのような、超現実感があった。
 実験は終わった。
 少なくとも人ひとりは、楽勝でばらばらにできる。
 人混みのなかでこの能力を使ったら、もっと大量に殺傷できる可能性もあるが、さすがにそこまでするつもりはなかった。
 なぜならいまのは「正義の執行」であって、無差別な殺人ではないからだ。
 そのとき、背後から人の気配を感じた。
「おー、すごいね、こりゃ。なんていうか、破壊特化型かよ」

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