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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・36アワーズ

愛されぬ花嫁

愛されぬ花嫁


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・36アワーズ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 サンドラ・ステファン(Sandra Steffen)
 RITA賞受賞作家。読者の記憶に残るような登場人物を生み出すのが創作活動をする際の楽しみの一つだという。パソコンの画面で登場人物に命を吹き込みながら日々を送れることに胸をときめかせている。十人きょうだいの四番目としてミシガン州で育った。彼女にとって実在のヒーローである夫、やんちゃな四人の息子たち、たくさんのすてきな友人、親戚、隣人たちに囲まれ、にぎやかな生活を送っている。

解説

 看護師のベスは医師のトニーにずっと惹かれていたが、プレイボーイと評判の彼が振り向くことはないとあきらめていた。そんなある日、ベスは偶然トニーと外科部長との会話を耳にする。トニーが昇進するためには、結婚しているほうがいいというのだ。ベスは胸を躍らせ、思い切ってトニーに声をかけた。ベスの突然のプロポーズに、トニーは呆然とした。だが、考えてみれば願ってもないチャンスかもしれない。彼女は美人だし洗練されている。妻としていい役割を果たしてくれるだろう。トニーはすばやくベスにキスをした。
 ★2006年8月のシルエット・サーティシックス アワーズは、ベスとセクシーな医師トニーが主人公。二人の結婚はどんな結末を迎えるのでしょう? お見逃しなく!★

抄録

 明らかにトニーの外見は女性をときめかせる。だが、自分の外見はどうだろう。ついそんなことを考えてしまい、ベスははっとした。
 顎をぐいと上げた彼女は、勇気を振り絞り、できるだけ冷静な声で答えた。「あなたの胸に飛びこんだわけではありませんが、じつはあなたを待っていたんです」
 本題をどう切りだせばいいか、ベスは途方に暮れた。そうして考えこんでいるあいだ、トニーの視線に体をなぞられるのを意識していた。彼女は深呼吸をすると、ほほえみを浮かべた。
「偶然、ドクター・ハウェルとの話を聞いてしまったんです。それで、たぶんわたしはお役にたてると思って……」
 一瞬、トニーはどきりとした。ベスが“お役にたてる”という意味はひとつしか頭に浮かばなかった。彼は前かがみになり、顔を近づけた。「続けて」
 ベスは唇をなめ、周囲を見回した。その様子を見て、トニーは期待で胸が高鳴るのを覚えた。ベスを安心させるために、彼は言った。
「誰もいない。ぼくたちだけだ」
 ベスが息をのんで震え始めたのを見て、彼女はキスを求めてくるのではないかと、トニーは思った。
「ドクター・ハウェルがあなたには妻が必要だと言っているのを聞きました」
 トニーは黙ったままベスを見つめていた。彼女は髪を後ろで束ねていたが、そこから飛びだした小さな巻き毛が青ざめた顔のまわりで震えている。
「わたしは、あの、つまり、その立場につきたいと思います」
 頭のなかで血流が激しくなっているような気がしながら、トニーはやっとの思いで尋ねた。「立場?」
 ベスはうなずいた。
「ぼくの妻になりたいと言っているのかい?」
 もう一度うなずいて、ベスはうなだれた。
 口を開こうとはしなかったが、トニーはその場を動こうともしなかった。あっけにとられるような発言をしたというのに、彼女は触れようとさえしてこない。
「ドクター・ペトロセリ、産科病棟へ。ドクター・ペトロセリ、産科病棟へ」
 突然の院内放送に、ふたりは体をこわばらせ、しばらくその場から動けなかった。
「ベス、ぼくはなんと言えばいいかわからない」
 羞恥《しゅうち》のあまり、ベスは死にたくなった。両手をあげてあとずさりする。
「なにも言わないでください。ごめんなさい。自分でもなにを考えているかわかりません。いまのことは忘れてください。わたしも忘れます」
 身じろぎもせずに見つめているトニーをその場に残し、ベスは身を翻した。小走りに進みながら、後ろから追いかけてくる足音があるかどうか耳をすませたが、ありがたいことになにも聞こえなかった。彼女は階段を駆けおり、踊り場で足を止めると両手で顔を覆った。頬が燃えるように熱いのは、恥ずかしくてたまらないせいだ。プライドはずたずたになっていた。当惑と屈辱が、クリストファーを養子にできないという悲しみのうえにのしかかっていた。

「ドクターはクリストファーはもうじき退院できると言っているわ。すばらしいニュースだと思わない?」親友が経営しているアクセサリー店の棚からほこりを払いながら、ベスは尋ねた。金属のブレスレットがこすれあう音がしたが、返事はない。彼女は振り向いた。「ジェンナ? いいニュースだと思わないの?」
 腰まである黒髪を揺らしながら、ジェンナは〈シルバー・ジプシー〉のドアに“閉店”の札をかけた。彼女がくるりと振り向くと、フレアスカートが脚をこすってさらさらと音をたてた。
「もちろんすばらしいニュースだと思うわ。でも、その話はさっきから三度も聞いたわよ」
「そうだったかしら?」
「山のなかに住んでいるわたしのまわりにいる生き物といえば、からすだけよ。だから、同じ話の繰り返しだって喜んで聞くわ。でも、よかったら本当に気にかかっていることを話してちょうだい」
 ベスは腕組みをして、ジェンナをまじまじと見た。ジプシーの血が流れているというジェンナは、大きな黒い目に黒い髪という外見もそれらしく見えた。襟ぐりの大きいブラウスに、編みあげのサンダルといった格好も独特のスタイルだ。自称三十二歳のジェンナは、驚くほど率直に意見を口にする一方で、相手の表情や行動からその心理を読みとる能力にたけている。ベスが知るかぎり、ジェンナは四カ国語で悪態をつくことができた。
 棚に並ぶ銀細工のネックレスの位置を直しながら、ベスは言った。「今日、バリーに会ってしまったの」
 ジェンナは鼻を鳴らした。「グランド・スプリングスの人口は六万人以上なのだから、旧友や元同級生と出くわすことはまずないというのに、なぜか別れた夫とは会ってしまうものなのよね。それで、バリーは元気だった?」
「元気そうだったわ。元気どころか、はつらつとしていたわね。わたしに新しい奥さんを紹介してくれたときは」
「おやまあ」
「彼女の名前はチェルシー。どう見ても、二十代前半だったわ」
「恥知らずな男ね。バリーに呪《のろ》いをかけてほしい? 彼の大切なところが使用不能になる呪いだってかけられるわよ」勢いこんでジェンナは言った。
 ベスは思わずほほえんだ。「そんなことしなくていいのよ」
「あら、簡単なのに」
 高価な銀細工のアクセサリーが飾られているガラスケースのほうへ歩きながら、ベスは言った。「もう言ったかしら。チェルシーは三カ月後に出産予定だって」
「初耳だわ」ジェンナは答えた。「さすがに恥知らずな男は、手も早いわね。離婚が成立するまで待てなかったんだから。いまから呪いをかけても手遅れだわね。もちろん、かけてもいいけれど。復讐《ふくしゅう》にはならなくても、おもしろいと思うから」少し間をおいてから尋ねる。「つらかった? バリーと再会したせいで、動揺しているのね?」
「いいえ、バリーのことはいいの。でも、今日はろくでもない日だったわ。ソーシャルワーカーのミセス・ドナヒューと会ったの。わたしの熱意はわかってもらえたけれど、クリストファーを養子に迎えるには、両親がそろっている家庭が望ましいと言われたわ」ガラスケースをのぞきこんだまま、ベスは言った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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