和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>主従関係
著者プロフィール
有栖川 ケイ(ありすがわ けい)
誕生日:2月13日。出身:東京。血液型:O型。好きな食べ物:ラーメン。嫌いな食べ物:酸っぱ辛臭いモノ。
誕生日:2月13日。出身:東京。血液型:O型。好きな食べ物:ラーメン。嫌いな食べ物:酸っぱ辛臭いモノ。
解説
浅倉家の嫡男は、元服をもって生涯宝生家当主に仕えねばならない――そんな古くさいしきたりのせいで、高校入学と同時に、幼なじみで同級生の千裕にお仕えすることになってしまった梁。昨日まで友達同士だったのに、いきなりご主人様扱いなんて、できるわけない! 千裕もきっと同じ気持ちだと思っていたのに、元服したその夜から、千裕の態度が一変。
「おまえのすべてはオレのもの……」だなんて言って、身体まで求めてくるなんて、イヤなのにいいなりになってしまうのは、どうして――。
「おまえのすべてはオレのもの……」だなんて言って、身体まで求めてくるなんて、イヤなのにいいなりになってしまうのは、どうして――。
目次
優しくて棘(とげ)がある
あとがき
あとがき
抄録
「今日からオレがおまえのご主人様だ。これまでとは勝手が違うけど、ずっと仲良くやっていこうね」
「…………」
梁は茫(ぼう)然(ぜん)自失状態だった。
仲良くやっていく……っていうくだりには大いに賛成だ。
けれど、昨日まで身分の違いなど関係なしに仲良くやってきた千裕が、いきなり主になるなんて心の準備ができていない。
もちろん桔平には物心ついたときから、繰り返し今日という日のことをいわれ続けてきた。でも年を追うに連れ、こうした慣わしに疑問を抱くようになり、自分は絶対父のようにはならないと心に決めていたのだ。
千裕だってそういう考えだと、ずっと信じてきた。なのに……
「わかってると思うけど、おまえはオレのいうとおりにしなきゃいけないんだよ。命令には絶対服従だ。いいね」
「そんな! これまでどおりでいいじゃないか。千裕にとっても不都合はないだろ?」
眉をぴくりと動かし不愉快そうな顔つきで、
「おまえ……、いやなの? オレに仕えるのが気にくわないのか?」
「あ……」
きつめの口調で咎(とが)めるようにいわれると、こっちが悪いことをしている気分になってしまい、反論すらできず俯(うつむ)いて。
「とにかく、代々受け継がれてきた風習なんだ。オレ達の代で勝手な真似はできないからさ、甘えたこといってないでさっさと覚悟を決めろよ。いいな」
ガツンと頭を押さえつけられてしまった。こういう風にいい切られたら、梁の立場では状況を覆せない。
──まずいよ、この展開……
成り行きが予想と大幅に異なった梁は、それとなく千裕の機嫌を取るような面持ちでソファから離れた。
「あの……さ。ボク、今日はちょっと……」
「ん……?」
「え……っと、その、急に用を思い出しちゃって、だから……」
こんなときはひとまず退散するしかないと、梁はしらじらしい嘘(うそ)をつきドアに向かった。
「待てよ!」
千裕の制止に、ノブを回す手が止まる。
「誰が帰っていいといった?」
背後から、優しいけれど棘(とげ)のある声が響いてきた瞬間、梁の身体はその場に凍りついたみたいになった。
「こっちを向いて……オレの側(そば)に来い」
「あ……」
そう命令されると、どうしても振り切れない。
自分の考えと千裕の思惑が一八〇度食い違う以上、ここは一旦家に戻って頭を冷やし、明日以降のことを考えるしか術(すべ)がないというのに、梁はいわれるままに向きを変え、千裕の側に行ってしまって。
「いい子だ」
立ち上がった千裕は、困惑の色を隠せない梁の頬(ほお)を両手で包み込むと静かに唇を重ねた。
「んっ……」
──こ……、これって……?
紛れもなくキスである。
なぜこんなことが……どうして千裕が……
梁は思いも寄らぬ不意打ちに、気が動転して立っているのがやっとだった。千裕が唇を離した途端、ヘナヘナとその場にしゃがみ込んでしまい……
「もうなにがなんだか……」
初めてのキスは突然だった。
梁は、ほんの一瞬前まで、千裕の暖かな弾力が重なっていた唇を指でなぞるようにして呟いた。
「そんなに驚いた?」
「…………」
咄嗟に顔を背けてしまったのは、屈み込んで笑いかけてくる千裕の美貌が眩(まぶ)しかったからだ。
こんなに動揺させておいて優雅に微笑むから、かえって胸騒ぎを激しくしてしまって。
「あ……当たり前だろ。おまえ、なに考えてんだよ」
「なにって……、オレの言動にはすべて一貫性があると思うけど?」
「どこがっ!」
「だからね、オレはおまえの主なの。いい方を変えると、おまえのすべてはオレのもの……身も心も手の中にある。なにをするのも自由ってことだ」
「そんなのボクは知らない!」
「いいや、知ってるよ……浅倉の血がそれを覚えてる。代々受け継がれてきた血がね……」
梁の顎(あご)をぐいっと持ち上げ、千裕は支配者の顔になる。
圧倒されそうな雰囲気に呑(の)み込まれ、これが果たして現実なのか、あるいは夢を見ているだけなのか、それすらもおぼつかなくなってきた。
「元服を迎えた晩に、おまえとひとつになろう……って決めてたんだ」
「ひとつ……?」
「そうだ。今夜おまえを抱く」
「ど……、どうして……? ボクが千裕に仕えるって慣わしは、身の回りの世話をするとか、そういうことだろ。抱くとかってなぜ……」
「オレがそうしたいから」
「…………」
梁は、眼の前に突きつけられた突拍子もない現実に意識が飛びそうだった。
そもそも、先祖代々継承されてきた因習を時代錯誤だと認めながらも、肯定する千裕に面食らったが、対等だったのは昨日まで。今日から自分はご主人様だといい放ち、主従関係を明白にしてくるのはいっそうの衝撃だった。
しかも、身体まで求めてくるなんて……
*この続きは製品版でお楽しみください。
「…………」
梁は茫(ぼう)然(ぜん)自失状態だった。
仲良くやっていく……っていうくだりには大いに賛成だ。
けれど、昨日まで身分の違いなど関係なしに仲良くやってきた千裕が、いきなり主になるなんて心の準備ができていない。
もちろん桔平には物心ついたときから、繰り返し今日という日のことをいわれ続けてきた。でも年を追うに連れ、こうした慣わしに疑問を抱くようになり、自分は絶対父のようにはならないと心に決めていたのだ。
千裕だってそういう考えだと、ずっと信じてきた。なのに……
「わかってると思うけど、おまえはオレのいうとおりにしなきゃいけないんだよ。命令には絶対服従だ。いいね」
「そんな! これまでどおりでいいじゃないか。千裕にとっても不都合はないだろ?」
眉をぴくりと動かし不愉快そうな顔つきで、
「おまえ……、いやなの? オレに仕えるのが気にくわないのか?」
「あ……」
きつめの口調で咎(とが)めるようにいわれると、こっちが悪いことをしている気分になってしまい、反論すらできず俯(うつむ)いて。
「とにかく、代々受け継がれてきた風習なんだ。オレ達の代で勝手な真似はできないからさ、甘えたこといってないでさっさと覚悟を決めろよ。いいな」
ガツンと頭を押さえつけられてしまった。こういう風にいい切られたら、梁の立場では状況を覆せない。
──まずいよ、この展開……
成り行きが予想と大幅に異なった梁は、それとなく千裕の機嫌を取るような面持ちでソファから離れた。
「あの……さ。ボク、今日はちょっと……」
「ん……?」
「え……っと、その、急に用を思い出しちゃって、だから……」
こんなときはひとまず退散するしかないと、梁はしらじらしい嘘(うそ)をつきドアに向かった。
「待てよ!」
千裕の制止に、ノブを回す手が止まる。
「誰が帰っていいといった?」
背後から、優しいけれど棘(とげ)のある声が響いてきた瞬間、梁の身体はその場に凍りついたみたいになった。
「こっちを向いて……オレの側(そば)に来い」
「あ……」
そう命令されると、どうしても振り切れない。
自分の考えと千裕の思惑が一八〇度食い違う以上、ここは一旦家に戻って頭を冷やし、明日以降のことを考えるしか術(すべ)がないというのに、梁はいわれるままに向きを変え、千裕の側に行ってしまって。
「いい子だ」
立ち上がった千裕は、困惑の色を隠せない梁の頬(ほお)を両手で包み込むと静かに唇を重ねた。
「んっ……」
──こ……、これって……?
紛れもなくキスである。
なぜこんなことが……どうして千裕が……
梁は思いも寄らぬ不意打ちに、気が動転して立っているのがやっとだった。千裕が唇を離した途端、ヘナヘナとその場にしゃがみ込んでしまい……
「もうなにがなんだか……」
初めてのキスは突然だった。
梁は、ほんの一瞬前まで、千裕の暖かな弾力が重なっていた唇を指でなぞるようにして呟いた。
「そんなに驚いた?」
「…………」
咄嗟に顔を背けてしまったのは、屈み込んで笑いかけてくる千裕の美貌が眩(まぶ)しかったからだ。
こんなに動揺させておいて優雅に微笑むから、かえって胸騒ぎを激しくしてしまって。
「あ……当たり前だろ。おまえ、なに考えてんだよ」
「なにって……、オレの言動にはすべて一貫性があると思うけど?」
「どこがっ!」
「だからね、オレはおまえの主なの。いい方を変えると、おまえのすべてはオレのもの……身も心も手の中にある。なにをするのも自由ってことだ」
「そんなのボクは知らない!」
「いいや、知ってるよ……浅倉の血がそれを覚えてる。代々受け継がれてきた血がね……」
梁の顎(あご)をぐいっと持ち上げ、千裕は支配者の顔になる。
圧倒されそうな雰囲気に呑(の)み込まれ、これが果たして現実なのか、あるいは夢を見ているだけなのか、それすらもおぼつかなくなってきた。
「元服を迎えた晩に、おまえとひとつになろう……って決めてたんだ」
「ひとつ……?」
「そうだ。今夜おまえを抱く」
「ど……、どうして……? ボクが千裕に仕えるって慣わしは、身の回りの世話をするとか、そういうことだろ。抱くとかってなぜ……」
「オレがそうしたいから」
「…………」
梁は、眼の前に突きつけられた突拍子もない現実に意識が飛びそうだった。
そもそも、先祖代々継承されてきた因習を時代錯誤だと認めながらも、肯定する千裕に面食らったが、対等だったのは昨日まで。今日から自分はご主人様だといい放ち、主従関係を明白にしてくるのはいっそうの衝撃だった。
しかも、身体まで求めてくるなんて……
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