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パリの青い空

パリの青い空


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

ローラは過労がたたって肺炎にかかり、ようやく回復したばかり。多忙な職場に復帰するにはまだ体調が万全ではなく、友人からある少女のお目付け役の仕事を紹介された。少女は母を亡くして以来、目下反抗期の真っ最中で、学校も退学させられたという。面接に訪れているところへ、不意にその父親が現れ、ローラの面前で青筋をたてて怒り始めた。冷酷にして傲慢。ローラの最も苦手とする富豪のギリシア人だ。これでは娘が可哀そうだわとローラは、早々にいとまを告げたが、帰宅するなり、父親ドメニコスから電話がかかってきた。

抄録

「そんなに急がないでほしい。このままくつろいでいたいんだ。話し相手になってくれないか」
 珍しく命令口調と違う言い方だ。だが、長い指はしっかりと手首に巻きついている。
「お疲れだと思いましたが」とローラは言った。
「疲れたよ。疲れすぎて、今はベッドまで行くのもおっくうだ。君はそういう経験はないかい?」
「しょっちゅうありますわ」
「そういうとき君はどうするんだい?」
「熱いお風呂に入って寝ます」ローラはにこやかに答えた。
「なるほど、実に大胆な発想だ」俄然楽しそうな光が彼の目に宿った。「今からそれを二人で実行してみたらどうだろう?」
 ローラは不意をつかれて思わず頬を染めた。「今夜のところはご辞退しますわ」と静かに答える。
 彼が高らかに笑った。「一分の隙もない人だな。いや、君がどんな態度を取るか試してみただけだよ」彼はいたずらっぽく言った。
「どんな態度を予想してらしたんですか?」
「予想がつかなかった。つんとして肩をすくめるか、きゃっと悲鳴をあげそうになるか、あるいはぼくの顔をひっぱたくか」彼はローラの手首を放して長椅子をぽんぽんとたたいた。「さ、座って――かみつきはしないから。おしゃべりをしよう。ベルサイユのことはどう思った?」
「信じられないような宮殿でしたわ」
「それで? たったそれだけじゃ感想になっていないよ」
「ベルサイユはたしかに美しいけれど、あまりにも現実離れしすぎていますわ。フランスのディズニーランドって感じ。今にもミッキーマウスがスキップしながら出て来るんじゃないか、とか、中庭でルイ十四世がポップコーンを売ってるんじゃないか、なんて思いましたわ」
 彼はにやりと笑った。「あと何年か待てばそういう趣向も実現するだろう」と言ってネクタイを外し、チョッキも脱いで横に置いた。「ところで、君は仕事が終わったあとはなにをして過ごすんだい?」
「さっきも言ったとおり、熱いお風呂に入って寝るんです」
「そして正体なく眠りこけるんだろうね」
 ローラはうなずいた。
「信じられないことだ! 君がうらやましいよ。ぼくはひどい不眠症でね。どうすればそんなふうになれるんだい?」
「私の場合は仕事が重労働ですから」
「ぼくもそうだが、それでも眠れないんだ」彼はワイシャツのボタンを外し始めた。
 ローラは警戒の目で見守った。いったいどこまで脱ぐつもりなのだろう?
「それで、君はいつも一人で寝るのかい?」一見さりげない口振りだった。
「それはごく個人的な問題ですわ」
「まあね」彼は横目でローラを見やった。「だが、ぼくは純然たる学問的興味から尋ねているんだ。看護師たちはそもそもどういうセックス・ライフを送っているものなんだい?」
「皆と変わりませんわ。違うのは、そのための時間が少ないということだけです」
 黒い瞳がローラの髪から足の先へとゆっくりと下りて行った。その途中、ところどころでしばらくとどまっては感嘆のまなざしになる。彼がもの憂げに口を開いた。「君ならさぞかしもてるだろう。非常に魅力的だ」
「それはどうも」彼の意図は見え透いている。案の定座り直して体を寄せてきた。片腕が長椅子の背を伝って伸びてくる。ワイシャツのボタンを三つ外した胸もとがすぐ横に近づいてきた。褐色のなめらかな肌と黒い胸毛がはっきりと見える。
「今の君は時間がたっぷりあるわけだ」
「時間はありますが、その気がないんです」ローラは落ち着きはらって応酬した。こういう男から言い寄られたら得意になって当然なのだが、今の自分はなんとなく覚めている。彼は疲れているから気晴らしが欲しいだけだ。単純な話である。彼は少しも無理じいをせず、暗黙のうちにそれとなく誘いをかけてくる。こういうくどき方が洗練されていると言われるのだろうが、私はあまり好きではない。
 彼はさりげなくローラの頬を冷たい指先でなぞった。「楽しめるかもしれないのに」冷たい指が唇に移り、その輪郭をやさしくたどっていく。
 ローラは妙に心がかき乱された。ほほ笑みをたたえた黒い瞳、甘くかすれたささやき、愛撫する指の感触……。それらが組み合わされて一つの強力な武器となっている。その威力を彼はちゃんと心得ているのだ。こんなわざとらしい恋愛遊戯に引きずり込まれてはいけない。
 ローラの唇は巧みな愛撫を受けて甘くうずき始めた。それでも青い瞳はあくまで冷たく澄んでいた。「私、感情のこもっていないセックスにはなにも感じないんです」
「感情がこもっていない?」
「あなたがくつろぎたいのはよくわかっています。でも私は、精神安定剤代わりに利用されていい気はしませんわ」
 彼が声高に笑った。「そんなふうに思っていたのならぼくの言い方がまずかったんだろう」ローラのあごを軽く持ち上げ、顔を寄せてきた。
 ローラは彼の胸に手を当てて押し戻し、かぶりを振った。「悪いけれど私はご辞退しますわ、アエゲソスさん。私は気楽にセックスを楽しむタイプじゃないんです。お互いにとってなんの深い意味もないことなら、それにわずらわされる必要もないでしょう」
 ドメニコス・アエゲソスは肩をすくめ、再び長椅子の背にもたれた。「わかった」あっさり承知したのでローラは好感を抱いた。「じゃあ話題を変えよう。君はどうして看護師になったんだい?」

*この続きは製品版でお楽しみください。

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