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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

幻を愛した大富豪

幻を愛した大富豪


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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著者プロフィール

 ケイトリン・クルーズ(Caitlin Crews)
 ニューヨーク市近郊で育つ。12歳のときに読んだ、海賊が主人公の物語がきっかけでロマンス小説に傾倒しはじめた。10代で初めて訪れたロンドンにたちまち恋をし、その後は世界各地を旅して回った。プラハやアテネ、ローマ、ハワイなど、エキゾチックな地を舞台に描きたいと語る。

解説

死んだはずの私を、ずっと捜していたと言うの?

5年前、リリーは車の事故で死んだ――。しかし本当は、名前を変え、別の場所で暮らしていた。血のつながらない兄ラファエルとの愛に溺れていた彼女にとって、そうするしか、中毒のような関係から抜け出すすべはなかったのだ。しかしあるとき、リリーはとうとう彼に見つかってしまう。昔、二人の関係を“汚れた秘密”と呼んだラファエルに、私がひそかに産んだ息子のことを知られるわけにはいかない。突然のキスに心は動揺していても、彼女はとっさに嘘をついた。「私はリリーじゃないわ。あなたは誰……?」

■ラファエルは数多の女性と関係を持ちながら、義妹のリリーにも誘惑の手を伸ばした筋金入りの放蕩者でした。ところが、事故後もリリーの死を信じず、似た女性を見かけるたびに確かめずにはいられなかった彼は、ついに彼女を見つけるのですが……。

抄録

 ラファエルは、戦闘用の大斧を振りおろされたような衝撃に襲われた。
 頭の中でぶんぶんという音が鳴り響いてめまいがし、体が真っ二つになったかと思った。女性は手を伸ばしたものの、車のドアを開ける寸前でぴたりととまった。どうやら、僕がなにか言ったらしい。あるいは、彼女の名前を呼んだのか? やがて、女性はボンネットの向こうからラファエルの方へ振り向いた。道の端と端に立つ二人の周囲には、すっかり夜の帳が下りていた。
 それでも、彼女が誰であるかは見間違いようがなかった。
 リリーだ。
 ほかの誰かであるはずはない。ラファエルが数えきれないほど何度も味わった、大きめで官能的な唇。その唇を完璧な形ではさんでいる、すぐれた彫刻のような頬骨。フィレンツェのウフィツィ美術館にある絵画を連想させる、完璧なハート形の顔。そのどれもが、ほかの人のものであるわけがない。目は夢見るような青で、カリフォルニアの冬を思わせる。ニット帽の下から出て肩にかかっている髪も、以前と同じくゴールドととび色をまぜ合わせたような濃いはちみつ色だ。同じ色合いの眉がかすかにアーチを描いているところは、十七世紀に描かれた聖母の絵画に似ている。姿形は、五年前となに一つ変わっていないようだ。
 ラファエルは、心臓が胸から地面まで真っ逆さまに落ちたかと思った。ゆっくりと呼吸をして、もう一度同じ動作をする。落ち着けば、リリーそっくりに見える特徴が、実は全然違う見知らぬ女性のものだったと気づくかもしれない。はっと目が覚めて、全部夢だったとわかるかもしれない。
 深く吸って、息を吐き、また深呼吸をする。だが、彼女は彼女のままだった。
「リリー」ラファエルはつぶやいた。
 次の瞬間動き出し、二人の距離をあっという間につめた。頭の中では相変わらずぶんぶんという音が鳴り響き、女性の肩に伸ばした手も震えていた。彼女がぎょっとした声をあげても、ラファエルは目を離さず、リリーである証拠をさがした。記憶にあるとおりなら唇の左側には薄いそばかすが散っていて、笑ったときにはえくぼができるはずだ。
 厚いコートの上からでも、肩はきゃしゃながらしっかりしていて、抱き合うとまるでパズルのピースのように二人の体がぴったりと合わさったのを思い出した。頭を後ろに傾けてから口を開くさまも、昔と変わらない。
「なにをするの?」
 彼女の唇が動いてそこから言葉が出てきたのはわかったが、意味はまったく理解できなかった。ラファエルにわかったのは、リリーの声であることだけだ。二度と聞く機会はないと思っていたが、少しかすれている声は聞き間違えようがない。
 そして、彼女の香りも同じだ。ハンドローションや化粧水、シャンプー、さらには香水がその下の彼女自身の香りとまじり合って、独特の香りを作り出している。なにもかもがリリーだ。僕のリリーだ。
 彼女は生きていた。それとも、僕の精神がついに異常をきたしたのか? だがどちらであっても、ラファエルにはどうでもよかった。
 彼はただ強く目の前の女性を抱き寄せ、その唇に自分の唇を重ねた。
 彼女は昔と変わらない味がした。最初は注意深く味わい、それから試すようにキスを続けるうち、ラファエルはありえない出来事に全身で大喜びした。何千回も今のような夢を見ながら、目覚めると彼女がいないつらさを、この五年の間に何度繰り返したか。
 やがていつもそうだったように、二人の間に飛び散っていた火花みたいな情熱が変化し、熱い稲妻となってラファエルの全身を襲った。彼は頭を傾けると、記憶にあるとおりに唇と唇を一分の隙もなく重ね、女性をむさぼった。
 亡くしたはずのいとしい存在。僕の恋人。
 |やっとだ《フイナルメンテ》。子供のころから英語は流暢に使いこなせたのに、今はうまく浮かばず、イタリア語でしか気持ちを言い表せない。
 突然、女性が唇を離した。息と息がまじり合って、二人の間に白い雲ができた。
「いったい、どこにいたんだ?」ラファエルは絞り出すような声できいた。「いったい、どういうことなんだ?」
「放して」
「なんだって?」
「なんだか、ひどく混乱しているみたいだけれど」自身の声に劣らないくらい、ラファエルの魂に刻みこまれている声が聞こえた。だが、女性の青い目はなぜかおびえているようだ。「私から離れて。今すぐによ。そうすれば、警察は呼ばないって約束するわ」
「警察?」ラファエルはわけがわからなかった。だが、頭の中では相変わらずぶんぶんという音が鳴り響いている。わけがわからないという判断も、頭の一部分が下したものでしかなかった。「なぜ警察を呼ぶ?」
 ラファエルはじっと女性を見つめた。この愛らしい顔を、僕は二度と見ることはないと思っていた。彼女の頬は熱をおびてピンク色に染まり、キスをしたばかりの唇はつやつやしている。しかし、以前のリリーならほんの少し触れただけでしなだれかかってきたのに、今の彼女はラファエルの胸に手をあてて、彼を押し返している。
 この僕を。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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