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愛し子の肖像

愛し子の肖像


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 キャシー・ウィリアムズ(Cathy Williams)
 トリニダード・トバゴの出身で、トリニダード島とトバゴ島、二つの島で育つ。奨学金を得てイギリスに渡り、一九七五年エクスター大学に入学して語学と文学を学んだ。大学で夫のリチャードと出会い、結婚後はイングランドに暮らす。テムズ・バレーに住んでいたが、現在は中部地方在住。夫との間に三人の娘がいる。

解説

我が子への愛、その養父への愛、どちらも打ち明けることは許されず……。

17歳のとき、アンジェラは男性に強要され、望まぬ妊娠をした。アルコール依存症の父と貧しい二人暮らしだった彼女は、なすすべもなく、生まれた子をある優しい夫婦の養子に出した。以来、彼らが送ってくれる娘の写真だけが心のよすがだ。そんなある日、娘の養父母が不慮の事故で亡くなる。我が子の不幸にいても立ってもいられなくなったアンジェラは、娘の後見人となった養母の弟ニックを必死になって探し当てた。ロンドンに邸宅を構えるニック・キャメロンは多国籍企業の経営者で、多忙な彼は、引き取ったばかりの姪のナニーを募集していた。

■ハーレクイン・ロマンスでは珍しい、大富豪とナニーのロマンス。不憫な我が子のそばにいたい一心で、養母の古い友人だと素性を偽り、ナニーに採用されたアンジェラ。ところがニックは彼女をキャメロン家の財産を狙っているのではと疑い……。

抄録

 ニックは二口でグラスをあけ、もう一杯注いでソファに戻った。「ナターシャが来る前はこんなに飲まなかったんじゃないかな」彼は皮肉めかして言った。グラスを揺らし、黄金の液体を鬱々と見つめる。あわよくば、心を悩ます謎の答えがそこに書いてあるかもしれないというように。
 そんな彼を見ながら、アンジェラは板挟みになったような苦しみを覚えた。どれだけ月日がたっても、ナターシャを、血と肉を分けた我が娘を本能的にかばいたくなる。その一方で、やり方は間違っていても、彼の考えは正しいと思わずにいられない。「あの子を愛していますか?」
 ニックは目を上げて彼女を見た。「なんて質問だ。教員養成所でこんなときはこう尋ねるようにと教えられたみたいだな」
「皮肉はやめてください」アンジェラは声を低めて言った。姪に対してくすぶる怒りをこちらに向けられても困る。「わたしはただ、両方の立場で考えようとしているだけです」
「責任はぼくにある」ニックがグラスをまたあけ、ソファの傍らのテーブルに置いた。座り直して両腕を組み、からかうような目でアンジェラを見る。「答えになっていないかもしれないが、本当なんだ。事故が起こるまで、姪とはほとんど接触がなかった。クリスマスや誕生日にプレゼントを贈ったり、たまに会ったりするだけだった。一対一で、じっくり向き合ったことはない。かわいいとは思っても、ぼくにとっては遠い存在だった」
「だったら、今のあの子の気持ちがわかるはずです」涙が出そうになり、アンジェラはまばたきして抑えた。「口ではうまく言えなくても、子供は感じやすいんです。ナターシャは自分はあまり愛されていないと感じています。お荷物と思っても不思議はありません」
「それがきみの解決法か?」彼は温かみもユーモアも感じられない笑みを片方の頬に浮かべた。「特注の愛を注ぐのが?」
「ものは試しです」アンジェラは言い放ち、腰を上げた。
「どこに行く?」
「あの子を見てきます」アンジェラはいくらか気を静め、自分に言い聞かせた。あまり子供の肩を持ちすぎると、怪しまれる。そうなれば、彼は骨を追いかける犬さながら、どこまでも探ろうとするだろう。
「席に戻れ!」
 アンジェラはためらった。反抗的な目を見られまいと下を向く。こんな人には耐えられない。精いっぱい、彼の立場になって考えようとした。彼の人生は一変し、対応するのも大変だっただろう。だが、いくら同情の念を覚えても、こんな人には耐えられない。
「席に戻ってくれ」さっきよりは穏やかに彼が言った。「頼む」
 アンジェラはしぶしぶ元の椅子に座った。「今後のきみの対応を話し合っておかないといけない」
「‘わたしたちの’対応ってことですね」彼女が言葉を正すと、ニックは肩をすくめた。ため息をついて言葉を継ぐ。「ナターシャにしつけが必要なのはわかります。さっき見ただけでも……あれが普通だということですし」
「ましなほうだ」
「野放しにすれば手がつけられなくなるというのも、おっしゃるとおりです」
「一つ意見が合ったわけだ。うれしいよ」
 アンジェラは彼に向かって冷たく眉をひそめた。「ただ、しつけも正しくしないと。ルールをつくって、あの子がそれを一つでも破ったら頭ごなしに叱る――それでは無意味です。なぜなのかよく考えないと」
「学生に戻った気分だな」ニックは独り言のようにつぶやき、暗い視線を放った。
「あなたに反対する人は一人もいないんですか?」アンジェラはあきれたようにきいた。
「もちろん、意見を述べるのは自由だ」
 それ以上言わないで。アンジェラはさめた気持ちで思った。意見を述べるのと、猛反対するのとは違うということだろう。彼なら簡単に人をかしこまらせ、口を慎ませることができる。心身ともに強くて頭もいいから、どんなことでもほんのひとひねりでねじ伏せる。事情が違えば、アンジェラもひるんでいただろう。けれどナターシャは自分の娘だ。いちばんいいと思うやり方を貫きたい。その途中で彼の気に入らないことを、いくつか言わなくてはならないとしても。
 アンジェラはまた立ちあがった。ありがたいことに、今回は彼もそれにならい、ドアまでついていった。だが、彼女が出ていこうとすると、ドアノブに手をかけた。
「ではきくが、きみにどうしろと言う者は誰もいないのか?」ニックは彼女を見下ろしながら、静かにきいた。
 アンジェラは目を上げたが、なぜか喉がふさがって言葉が出てこない。
「若いのにそんな賢い頭をして、きみはいったい何者なんだ?」彼は不思議そうにきいた。「教えてくれ。ぜひ、知りたい」
「わたしは、教師で……」言葉がつかえる。
「授業中、黒板を背にして出ていく教師がいるのか?」
「それは……」彼にじっと見つめられ、アンジェラの頬がほてりだす。
「それは……なんだ?」
「とにかく行かないと」アンジェラはきっぱりと言ったが、彼のほうは見なかった。
「まあいい」ニックがつぶやいた。「逃がしてやろう」間をおき、それから楽しげに続ける。「今のところは」


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