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いじわる王子に拉致られて

いじわる王子に拉致られて


発行: アンジェリカ
シリーズ: アンジェリカ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

「時は満ちた。約束通り、リリィは俺が連れて行く」カールハインツはそう告げた。――四年前、記憶を失って倒れていたリリィは、助けられた修道院で暮らしていた。そこに時折訪ねてくる貴族の青年カールに密かに憧れを抱いていたリリィだが、この日目覚めると、そこはお城! しかもカールは王子だという!! 「お前は今日から俺のものだ」そう告げる彼のまわりは、吸血鬼や狼男、魔術使いら七人の騎士が仕えている。果たしてカールの真の目的は!? リリィの過去に秘められた謎とは!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 リリィは何事もなかったかのように、無言でクローゼットを閉じた。そうだ、自分は寝ぼけているんだ、そうに違いない。半ば言い聞かせるように、彼女は自らの頬を両の手のひらで、ぱちりと叩いた。そして、もう一度その扉を開ける。やはり彼女は無言で、再びクローゼットの扉を閉じた。
 これは夢か。そうだ、夢なのだ。お願いだから、誰か夢だと言ってほしい。その一心で、リリィは現実逃避を計った。彼女はベッドに戻り、シーツを被って寝転んだ。今日は部屋から出まい。そう決めて、二度寝の体勢に入る。
 今朝、起床したリリィを待ち受けていたのは、新手の嫌がらせだった。部屋の奥に備えられた洗面所で顔を洗い、さて着替えようとクローゼットを開けたところまではよかった。しかしそこには、いつも何着か用意されているはずの服が一着もなかったのだ。
 その代わりにメモのような置手紙と、黒と白の衣装が一着。彼女はその手紙を手に取ると、よく見慣れたその美しい筆跡を目で辿る。『起きたらこれを着て俺の部屋へ来い』と、それはなんとも彼らしく、不遜な短い文章だった。
 リリィは、はてと首を傾げた。疑問が頭の中を渦巻くが、とりあえず着替えていかないと後が怖い。そう思った彼女は、カールハインツによって用意された衣装を手に取って、固まった。
 その衣装は、主に侍女達が着用するものだった。いわゆる、メイド服である。しかし、ごく一般に使用されているそれとは、明確に異なる点があった。
 過剰につけられたフリル、ふんだんに施された実用性とはほど遠いレース、その中でも特に異端を感じさせるのは、スカートの短さだろう。ぱっと見ても、明らかに丈が短いものだとわかる。小さな白いエプロンとスカートの裾の長さが、ほとんど変わらない。
 リリィは手に取ったそれを、そっと元の位置へ戻した。そして、話は冒頭に戻るのである。
 この城に連れてこられてからというもの、毎日のようにカールハインツの意地悪をその身に受ける彼女は、既に彼の玩具状態だった。そのたびに青くなったり、赤くなったりしているリリィを見て、愉しんでいるカールハインツは確実に超一級のサディストだと彼女は思う。彼ほどに性格の悪い人間は、見たことがない。
 ごろり、とリリィは寝返りを打った。窓の外はどんよりとした曇り空で、今のリリィの心境を表しているようでもあった。それからしばらくして、彼女がうとうとしはじめると、遠い背後から扉の開く音がする。
「リリィ。まだ寝ているのか?」
 カールハインツの声だ。彼女は内心ぎくりとするが、そのまま寝たふりを決め込んだ。起きていれば、あれを着させられると思ったのである。あんな短い丈のスカートなど、穿けるわけがない。それに、フリフリ甘々の衣装は、地味な自分には似合わないだろうと、彼女は自分の行動に理由をつけた。
 リリィが狸寝入りで何の反応も返さずにいると、つかつかと彼がベッドまで近寄ってくる気配を感じた。スプリングの端が沈む。ベッドに腰かけた彼は、彼女のさらりとした黒髪を一房取ると、それにわざと音を立てて口づけた。艶やかな黒髪を指ですきながら、カールハインツは彼女の耳元へと唇を寄せる。
「起きているのだろう? まだ俺を欺くつもりなら、無理やり脱がせて着せてやろうか」
 カールハインツは低く悩ましげな声で囁くと、ぱくり、と彼女の耳朶を甘噛みした。
「ひゃんっ!? 起きてます、起きてるからっ!」
 たまらず白状したリリィは、彼から離れようと高速でベッドの端まで転がった。そのまま、勢い余って転げ落ちる。彼女は真っ赤になり、噛まれた方の耳を押さえて立ち上がった。
「み、みっ、耳! 噛まれたっ!?」
 思わずじりじりと後ずさるリリィ。修道院で生活していた彼女は、男性に慣れていない。そのため、カールハインツのスキンシップは、彼女にとっては刺激が強すぎるのだ。甘噛みなどは、もってのほかである。
 カールハインツはくつくつと喉を鳴らすと、ゆっくりと彼女に歩み寄る。リリィは逃げ場を探して、左右に視線を走らせた。しかし結局、おろおろしている間に距離を詰められ、窓際まで追われてしまう。彼は完全に逃げ場をなくした彼女の両肩を捕まえると、先程とは反対側の耳に、ふうっと息を吹きかける。
「あれに着替えたらすぐ部屋に来い。それとも、また噛まれたいか?」
「やぁっ、行く、着替えるっ!」
 リリィは首を引っ込めて身をよじる。わざと耳に息を吹きかけながら囁く彼は、明らかに彼女の反応を楽しんでいた。彼の妖しく歪んだ口元が、その証拠だ。強制的に彼女に約束させたカールハインツは、あっさりと部屋から去っていった。がくりと膝から力が抜けて、リリィは座り込む。
「あれを着なきゃいけないなんて……」
 嘆くように呟いた彼女は、のろのろと着替えはじめる。純白のブラウスのパフスリーブに腕を通し、一つ一つボタンをかけ、スカートを穿いてエプロンを着ける。ヘッドドレスを着けようと、おそるおそる鏡を覗き込んだリリィは心底、後悔をした。鏡なんて見なければよかった、と。

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