マイリストに追加

和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

暴かれた愛の素顔

暴かれた愛の素顔


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 未評価
◆レビューを書く

¥0サンプル
XMDFのファイルをご覧になるにはブンコビューア最新版(無料)をインストールしてください。

「書籍ファイルが壊れています」と表示される場合は、ブンコビューアを最新版にアップデートしてください。
購入する


著者プロフィール

 ダニー・コリンズ(Dani Collins)
 カナダ出身の作家。高校生のころにロマンス小説と出会い、小説家という職業はなんてすばらしいのだろうと思ったという。以来、家族の反対や“普通の”仕事に追われながらも、さまざまなジャンルの執筆に挑戦し、ついに念願叶ってハーレクインからデビューすることになった。まるでロマンス小説さながらの、ハッピーエンドを生きている気分だと語る。

解説

愛も信頼もない結婚なのに、なぜ、夫への想いと欲望は消えないの?

女性なら誰もが羨むハンサムな富豪の夫を持つアダラは、度重なる流産を経験し、さらに夫の不倫疑惑が持ちあがったことですっかり自信を失い、とうとう離婚を申し出た。もともと双方のビジネスのための結婚ではあったが、アダラはいつの間にか、夫を愛し始めていたのだった。だがギデオンのほうは名ばかりの妻を手放すつもりはないようで、アダラは愛も子も得られぬ結婚のつらさに絶望する。そんな折、妊娠が判明――。今度こそ、と希望が芽生えかけたとき、アダラが知りもしなかった夫の過去と正体が明らかになる。

■ギリシアの富豪一族マクリコスタ家の愛と謎を、HQロマンスの若手作家ダニー・コリンズが意欲的に描きます。『パリ、背徳の一夜』『懲らしめの口づけ』の関連作にあたる今作は、夫と妻が秘密を抱えたまま夫婦になった便宜結婚の物語です。

抄録

 ギデオンの言葉から伝わる真の孤独がアダラの胸をえぐった。弟たちとの関係はぎくしゃくしているが、必要とあれば、彼らはきっと力になってくれるだろう。ギデオンとつないだ手に無意識に力がこもる。彼の冷たい表情がわずかに変化した。彼を慰めたいという本能的な思いが逆効果を及ぼし、居心地悪くさせたようだ。
「あなたはお母さんの話をしたことがないわね。シングルマザーだったの? 生活のために働きづめだったのかしら?」
 ギデオンの顔がこわばる。「母はまだ子供だったよ。年齢を尋ねて、二十一と聞いた記憶があるんだ。当時はよくわからなかったが、僕はたしか五、六歳だったから、母は十五か十六で妊娠したことになる。たぶん家出をしていたんだろうが、調べたことはない。結果を知りたいと思えなかったから」
 おそらく彼の母親は、十代で妊娠して家を出るしかなかったのだろう。もしかしたら、レイプの被害者だったのかもしれない。
 小さな震えが走る。「お母さんが亡くなったあとはどうしたの? あなたはどこへ?」
 ギデオンがきつく口を閉じた。
 アダラはがっかりした。いつもと同じで答えるつもりがないらしい。
 だが驚いたことに、彼はそっけなく言った。「僕の面倒を見てくれた船乗りがいた」
「親切で経験豊富な老水夫かしら?」アダラの口もとに笑みが浮かびかけた。
「まさか。僕の両手はいつもまめがつぶれていたが、彼は“船に泣き虫を乗せる余裕なんかない”と言って仕事に戻らせたよ」
 びっくりして息をのみ、アダラは思わず足を止めてギデオンを見た。
 彼は首を振って続けた。「本当のことだ。クルーズ船ではないからな。乗組員以外は積み荷で、積み荷なら運賃を支払わなければ乗せない。彼が面倒を見てくれなかったら、今の僕はなかっただろう。船の仕事は彼に教わった。出航のときの綱の解き方から、排水ポンプのスイッチの切り替えまで。酒や賭けごとに金を費やすなとも教えてくれた。喧嘩の仕方もね。生きるのに必要なことばかりだった」
「彼はあなたの成功を知っているの?」
「いや」ギデオンの冷静な表情が一瞬ひるみ、声が単調になった。「彼は死んだ。二十ドルのために、波止場で強盗に刺されたんだ。僕が行ったときには手遅れだった」
「まあ、ギデオン」彼の手を自分の胸に押しあてたい。そんなつらい経験をしていれば、彼が厳しく寡黙な人間になるのも無理はないだろう。何歳だったのか? そのあとどうしたのか? 疑問が次々と頭に浮かぶ。
 だがアダラはギデオンをせきたてるまいと我慢した。ゆっくり、一歩ずつ進めよう。でも、その歩みはどこへ向かうの? 私たちの結婚はどうせ終わるしかないのに。
 アダラは眉をひそめた。五年前、割りきった決断のもとに描いたふたりの未来は、ほぼ計画どおりに進んだ。物質的な面の目標を果たすためには、彼らは最高のチームだった。
 だが、たとえ大きな家があっても、小さな足が走りまわる音がしなければ、なんの意味もない。
 結婚に何を求めているのか、自分でもはっきりわからなかった。ただ、ギデオンが期待するような存在になれないことだけは確かだ。
 私たちはここからどこへ向かうのだろう?
 オレンジの花の甘い香りが満ちる中を、ふたりは無言でゆっくり歩いた。ギデオンが気だるげに手を伸ばし、枝から花を摘んで鼻に近づける。唇が持ちあがり、笑みが浮かんだ。
「結婚式の夜、きみの髪もこの香りがした」
 純粋な官能に刺激され、アダラの腹部がぎゅっと収縮した。彼のたったひと言が誘発した、強烈な欲望のうねりに唖然とする。彼女は唾をのみこみ、些細な思い出にすら強く反応してしまう事実を隠そうとした。
「オレンジの花冠をつけていたからね」軽く、平然として聞こえるよう願いながら言う。
「覚えているよ」ギデオンが含みを持たせる言い方をしてアダラを見た。アダラの胸は喜びと照れくささでいっぱいになった。
「感傷的に聞こえるけれど、あの夜のことで忘れられないのは、私がいかにぶざまだったかということよ」アダラは未経験で気がきかない自分を思いだし、恥ずかしくなった。
「緊張していたんだろう」ギデオンが言った。「今のきみみたいに」彼はアダラを立ちどまらせて彼女の前に立つと、花びらを彼女の頬にあて、くすぐったさと甘い香りを残しながらゆっくりおろした。「僕も同じだ」
「そうよね」アダラは混ぜっ返した。花に撫でられた唇が敏感になる。その感覚を消そうと、唇を舐めた。「何をしているの?」
「きみを誘惑している。気づいてくれたならうれしいね」
 顎をくすぐる花に気を取られ、アダラはほほえむことができなかった。逃れようと顎を上げたとたん、ギデオンに唇を奪われる。
 彼女がいつの間にか期待していた、所有権を主張するキスではなく、優しく押しあてるだけのものだった。短い婚約期間中に交わしたキスに似ている。探るような我慢強いキス。
 甘美だが、物足りない。情熱に屈するとどれほど気持ちいいか知った今では、結婚前の慎み深いキスに戻ることはできなかった。


*この続きは製品版でお楽しみください。

本の情報

形式

【XMDF形式】

XMDFデータをご覧いただくためには専用のブラウザソフト・ブンコビューア最新版(無料)が必要になります。ブンコビューアは【ここ】から無料でダウンロードできます。
詳しくはXMDF形式の詳細説明をご覧下さい。

対応端末欄に「ソニー“Reader”」と表示されている作品については、eBook Transfer for Readerで“Reader”にファイルを転送する事で閲覧できます。
海外版の“Reader”は対応しておりませんので予めご了承くださいませ。

【MEDUSA形式】
MEDUSA形式の作品はブラウザですぐに開いて読むことができます。パソコン、スマートフォン、タブレット端末などで読むことができます。作品はクラウド上に保存されているためファイル管理の手間は必要ありません。閲覧開始時はネットに接続している必要があります。

詳細はMEDUSA形式の詳細説明をご覧下さい。