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傾いた鳥かご〜アフリカ難民達が綴る詩と物語

傾いた鳥かご〜アフリカ難民達が綴る詩と物語

著: わかちあいプロジェクト
発行: TI global ブックス
シリーズ: TI ブックス
価格:525円(税込)
10ポイント還元
形式:bookend形式⇒詳細
対応端末:パソコン 
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著者プロフィール

 わかちあいプロジェクト
 わかちあいプロジェクトは、1992年のソマリアへの支援活動から誕生しました。その後、1994年からカクマ難民キャンプに青年たちを派遣してワークキャンプを行い、幼稚園、外来病棟、職業訓練棟、図書館、青年センターなどの建設を行いました。

解説

 アフリカ・ケニアにある難民キャンプで生活をしている難民たちが書いた詩や物語を、二人のオーストラリア人が一冊の本にまとめ、出版した。これはその本の翻訳版であり、難民たちが書いた生の英語のテキストと、それらを日本語訳した文章とによって構成されている。この本は難民と呼ばれる人々のこころの声。食糧配給を待つ「難民」というひとかたまりではなく、私たちとなんら変わりのない一人一人の人間の声。日本人にはなかなか想像できない難民の実像を彼らの生の声が教えてくれる貴重な一冊。

目次

はじめに
Homelands
Why don’t you go back? 
どうして帰らないの?
What is a refugee? 
難民とは
Nothing is better than
世界中で自分の国ほど
your country in this world
良いところはない
The old man and the child
老人と少女
Pay attention world! 
世界よ、耳を傾けて!
Where is this world heading? 
この世界はどこに向かっているの?
Home is Home and Bush is Bush
故郷は故郷、茂みは茂み
Nomadic hunters
遊牧民の狩人
My life
私の人生
Sadness Sadness
悲しみ
Let the moment pass
今というときを


Flight
The day I ran
私が逃げた日
A result of wa
戦争の結果
Banished by force
追放されて
Free bird
自由な鳥
We fled again
そして私たちは再び逃げた
Up the ladder
はしごを登って


Camp
My hut in Group
14地区の私の小屋
Rise Kakuma! 
立ち上がれ、カクマよ!
Under the plastic-sheet roof
ビニールシートの屋根の下で
Sister I am suffering! 
私は苦しんでいます!
Marriage between
難民とマラリアの結婚
Refugee and Malaria
The Jerrycan Baby
石油かんベイビー
All tomorrows are the same
変わらない明日
Have I been living? 
僕は生きているのだろうか?

Hopes
Might I live
生きていられたら
The day I will never forget
決して忘れない日
All in my thought
想像の世界
It should not be
自由を間違えないで
Disabled in Kakuma
カクマの障害者
River Nile
ナイル川
I give what I can
私にできること
The Perfect Match
忘れられない出会い
Dark in Africa
アフリカの暗闇
Peace in Africa
アフリカに平和を
解説
あとがき

抄録

 RAYA MACA 男性・年齢不明
 エチオピア
 今というときを


 希望を失ってしまった彼にとっては、太陽が明るく輝く日さえも灰色の雲に覆われた空と同じだった。月の優しい温もり、穏やかなそよ風、ピュ−ピュ−と吹く風の音も感じることができなかった。
 突然、太陽が西に傾き東から暗闇が襲ってきた。月が太陽と地球の間に位置し、村はまるで真っ黒な毛布に包まれたかのようだった。
 ロロはたいてい7:30から8:00の間に、村の中心にあるレストランに行っていた。決して好きで行っていたわけではない。安全ならば家で料理をしたかった。不安感が高まったのは、何ヶ月か前に何者かに車に連れ込まれ襲撃を受け、その数週間後に監禁されるという事件からだった。
 わずかな食べ物は口の中にとどまっていた。まるでゴムのように感じられて、ロロは飲み込むことも吐き出すこともできなかった。輝くものは暗くよどみ、燃えるような想いは沈み、甘い物は苦く、危険な時はいつもこう感じた。
 ふと脳裏に、何者かにひどい目に遭わされた記憶が蘇ることがあった。誘拐され、知らない場所へ連れて行かれ、激しく殴打され、傷付けられ、執拗に尋問を受けた。この耐えがたいできごとを考えると彼は恐怖で体中が震えた。ロ−プで縛り上げられ、エチオピア人兵士に真夜中のジャングルを引きずり回されたときのことを思い出した。急に立ち止まったかと思った瞬間、突然、銃の引き金が弾かれた。ロロは冷たい液体が体に流れているのを感じた。それが血なのか汗なのか分からなかった。
 突然彼は、陸上選手が競技場でジャンプするかのようにテ−ブルから飛び上がった。ふと我に返り、自分がレストランにいたことに気付いた。彼は周りの客たちに謝り自分を落ち着かせた。
 仲間の客たちは、前からこのかわいそうなロロが自分たちにはどうしてあげることもできない問題を抱えていることを知っていた。政府の軍隊にマ−クされているために平和に暮らすことができないことを知っていた。軍隊の標的になることはマラリアにかかるようなもので、いつ、どこでまた苦しめられるのか全く分からなかった。運よくこの鳥かごから逃げ出せたものもいたが、ほとんどの人はまるで魔法のように鳥かごから消え失せた。


 このように、ロロは迫害に苦しんでいた。週に一度か二度、軍隊は彼をはっきりした理由もなしに傷付けた。彼はいつトラブルに巻きこまれるかと不安だった。不幸なことにこの事を警察にも裁判所にも訴えることができなかった。そんなことはただ事態を悪化させるだけであった。
 誘拐、暴力、そして逃避。これは何度も繰り返され、いつ殺されるかという恐怖にロロはおびえていた。
 レストランから歩いて戻る途中だった。たいまつの火が彼の顔を照らした。「ついに終わりのときが来た。魂よ安らかなれ。」ロロは言った。たいまつを照らしたのは友達の息子だった。少年は息を切らしながらロロにささやいた。「僕だよ、バリーサだよ。あなたの家が植民者に包囲されている。彼らは銃を持ってる。」少年はすぐに戻って行った。
 ロロは家の方向とは逆に逃げた。その夜の寝所を確保することはできたが、まんじりともせず、話す相手もなく、夜の間中、これからどうするべきかを考えていた。軍隊に自分の無実を証明しようかとも考えたが、それは明らかに自殺行為だった。国境沿いにある親戚の家へ逃げることも考えたが、そこは軍隊の手の届く範囲だった。彼は近隣の国へ逃げることを考えた。しかしそれは考えたくないことだった。彼の村の価値観では難民になることは何になるよりも悪いこととされていたからである。それでも彼らは難民を哀れみ、最大限の権利と特権を与え難民を受け入れていた。彼はまるで分かれ道をどちらに進んだらいいか分からない迷子のようだった。
 彼はついに自分を危険にさらすしかないと判断した。いつの日か彼にも母国で市民として扱われるときが来るだろう。時として人は、今を生きているというより、今というときが過ぎてくれることだけを願って生きていかなければならないこともあるのだ。そして彼は難民になる決意をした。それこそすべての選択肢の中でも最も不愉快なものではあったが。ついに彼は国境を越えた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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