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S系貴公子のお気に入り【SS付き電子限定版】

S系貴公子のお気に入り【SS付き電子限定版】


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫S系貴公子のお気に入り
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

君の恥ずかしそうな顔、かなりクるね。
恋した人は妹の婚約者――

他の男性に恋する異父妹を庇い彼女の婚約者エリオットを繋ぎ止めるため彼の愛人になることを承知したローレル。次期侯爵である貴公子エリオットは不実な婚約者よりローレルに興味を示し、なぶりながらも溺愛する。「ねえ、どっちの方が気持ちいい?」彼の指先に翻弄され変わっていく身体と心。エリオットの愛を感じながら己を肯定できないローレルは!?
★SS付き★

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 ローレルのまっすぐな黒髪が肩から視界に滑り落ちる。それで、いつの間にか逃げるように両手で自らの胸を押さえ、視線を落としていた自分に彼女は気づいた。
 慌てて顔を上げれば、そこに待つのは呆れを滲ませる紫の瞳。
 だけど言わなければいけない。口の中はからからだった。ローレルは張り付きそうな喉を無理矢理開いて、震える唇を開いた。
「では、……お好きに使ってやってください、と。当主が、そう、申しております」
 最後はやはり、彼女の視線は床に落ちた。
 綺麗に張られた暗褐色の絨毯に、黒い影。エリオットのそれは、ローレルの言葉を聞いても少しも動かない。
 まるで悪夢のようだ。
 ――そうだったら、いいのに。
(だって。普通だったら、言えない)
 ローレルの身体を、好きに使って良い。いくらでも。気が済むまで。
 そう伝えるようにと、父である当主から言付かった。
「君は、……」
 彼が軽く息を吐く。ただそれだけのことに、ローレルの身体は小さく跳ねた。
「留学先で、よく人を下に見て馬鹿にする話を聞いた」
 エリオットがどんな表情をしているのか、わからない。顔を上げなければ見えない。
 ただ、その声はローレルのそれと同じくらい硬かった。
「田舎は百年くらい時代が遅れてる。風習や文化はもとより、頭の中身が同じ人間とは思えない。そう笑いながら……。一々たしなめていた僕の方が、馬鹿か」
 最後、添えるような呟き。重力に従いただ落ちる声に、ローレルは引かれるように視線を上げた。
 エリオットはじっとローレルを見つめていた。
「あ……」
 すべての発端はローレルだ。だから本当なら伝えるべきなのだ。この家の人間に何を言われたのだとしても、貴方はそれを下らないと吐き捨て、去って行っていいのだと。
 彼はだって、言っていた。無邪気に笑っていた。
『僕は誰かと築くなら、幸せな家庭がいい。いつもくっついて、毛布の中でぬくぬく過ごすみたいなね』
 ――婚約者の姉であるローレルを、慰み者として差し出せ。
 それを彼が求めたのだと、そんな話になってしまっているのだろう。違うのに。きっと彼にとってそれはただの、婚約解消のための口実だったのに。
 ローレルが父を、事態を、唆した。
(私、何てことを……)
「エリオットさま」
「服は、僕が脱がせないといけない?」
 短く息を吐いて、それを区切りと彼は気持ちを切り替えた。悪い方に。
「ローレル?」
「ッ、いえ……」
 請われるまま震える指先で、ローレルは胸元のリボンを解いた。
 エリオットはそれをただ眺めている。あの透明度の高い瞳が影に沈んで鈍く冷たい光を放つ。その視線を意識すると、息苦しくて、恥ずかしくて、ローレルの目に涙が浮かんだ。
 喘ぐように胸が震える。
 二重の飾りボタンはすべて外した。これで、腕を抜いてしまえばドレスは床に落ちる。
 息を止めて、ドレスを掴んでいた手を離す。腰のバッスルも同時に落ちて、ローレルの身体に残るのはコルセットとドロワーズだけだ。
(息が止まりそう……)
 このまま、気を失ってしまいたい。
 だけどローレルにとってこの家の主の命令は絶対だった。従うしかない。逃げられない。
(それに、アイリーン……)
 可愛い妹の姿を思い描けば、震えが少し収まる気がした。
 ローレルの指がコルセットに掛かる。それを見てエリオットが姿勢を変えた。椅子の背もたれに身を沈めるようにして、右手をこちらに差し出しながら。
 こちらに来いと、招くように。
「いいよ、僕がする」
「え……?」
「どうせなら脱がしてみたい。いいだろう?」
 まだ空は明るくて、だけどその光は空の高い所で跳ねるだけで地上には降りてこない。完全に西を向いた陽射しは室内に届かない。
 ローレルは操られるように足を踏み出した。ドレスを跨ぐ最初の一歩がとても重かった分、二歩目は軽い。それでも強ばった身体は、足取りがおぼつかなかった。
 ゆっくり進まなければ、きっと転んでしまう。
「焦らすのが上手いね」
「そんな、ぁ……ッ」
 手が届く距離ではあった。それでも、強引に腕を取られ身を引き寄せられると驚きで息を呑む。引き上げられた椅子の上、すぐ目の前にあるエリオットの顔。
 この距離は、二度目だ。
 後ろに回った彼の腕が、その手が、コルセットの上から背中を撫であげる。
「エリオ――」
「ここを解けばいい?」
 小さな笑いに唇を歪めて。顔を覗き込んでくる彼が、そう囁いた。
(どう、したら。良かったの……)
 ローレルはわからなかった。なにもかも。今どうすべきなのかも。
 エリオットは唇に笑みを浮かべたまま、無言でコルセットの背後、縫い合わせるように交差する紐に指を差し入れ、下から少しずつ解いていく。
「――……ごめん、なさい」
「なにが?」
 ふ、と彼はその唇から笑いを零し、こう言った。ローレルの唇に触れるか触れないか、そんな距離でゆっくり言い聞かせるように。
「おかしな人だな。これから酷いことされるのは、君なのに」

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

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