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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・36アワーズ

名だけの永遠

名だけの永遠


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・36アワーズ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ポーラ・デトマー・リグズ(Paula Detmer Riggs)
 栄えあるRITA賞に六度もノミネートされたほか、ロマンティックタイムズ誌の批評家選賞を二度受賞した経歴を持つ。作品の題材は彼女のさまざまな人生経験から得られている。彼女はロマンスを書く理由について、ハッピーエンドを信じているし、それこそ私たちが障害や失望にも負けずにがんばり続けられる理由ではないだろうか、と語る。

解説

 グランド・スプリングスを嵐が襲った夜、カレンの最愛の娘が穴に落ちた。長時間の作業のうえ、無事助け出されたものの、以来最愛の夫キャシディとの間に亀裂が入り、二人の関係は名だけのものになりつつある。このままではいけない。なんとかして夫の愛を取り戻そうと、カレンはあるパーティに出席する機会をとらえ、キャシディを誘惑しようと試みた。首尾よくことが運んだかに思えた――彼が別れ話を持ち出すまでは。
 ★嵐をきっかけに起こるさまざまな事件と恋を描いた、シルエット・サーティシックス アワーズ。★

抄録

 すでにきれいになっているバスルームの洗面台を、カレンはタオルでもう一度ふくと、タオル掛けに数種類の新しいタオルがちゃんと並んでいるのをたしかめた。
 二十分前にビッキーの部屋を出たあと、カレンは家中の戸じまりを確認した。家族の安全に神経をとがらせているキャシディが、すでに見回っているのはわかっていたが、念のために確認したのだ。それから、歯茎が痛くなるまで丁寧に歯を磨いた。自分が時間稼ぎをするためにぐずぐずしているのは、彼女にもわかっていた。
 一歩ずつ慎重に足を運びながら、カレンはベッドルームに向かった。廊下の明かりを消してから、そっと部屋に入った。読書灯がついているだけだったので、部屋はちょうどいい薄暗さのなかに沈んでいた。
 腰まで上掛けで覆って、キャシディはベッドに座って雑誌を読んでいた。読書用の眼鏡が鼻の先までずり落ちている。彼が考え事をしている証拠だ。カレンが入ってきたことに気づき、彼は顔を上げた。
「ビッキーは寝たのか?」彼女を見たキャシディは、よそよそしい表情を浮かべていた。
「ええ。かわいそうに、あの子にとってはさんざんな一日だったわね」
 キャシディは唇をゆがめた。「さんざんな一日だったのはビッキーだけじゃない」
「ええ、そうね」
 彼は少しためらってから、雑誌を閉じて眼鏡とともにベッドサイドテーブルに置いた。キャシディは冬でも裸で寝るのだが、いまは白いTシャツを着ていた。上掛けに隠されて見えないが、おそらく下着もつけているだろうと、カレンは推測した。
「学校のことでは、わたしの味方をしてくれてありがとう」カレンはクロゼットを開けた。
「別にきみのためじゃない」
「わかっているわ」寒い日のための予備の毛布をとろうと、カレンは背伸びをした。
「ビッキーはぼくの娘でもあるんだ。それを忘れないでくれ」
「そんなつもりで言ったんじゃないのよ」クロゼットを閉めて、カレンは夫のほうに向き直った。「ビッキーが別居に慣れるように、わたしたちは協力する責任があるわね」
「別居?」キャシディが片方の眉をつりあげた。「きみはぼくと離婚するつもりでいると思っていたが」
 彼の口調に痛みが感じられるのは気のせいだと、カレンは自分に言い聞かせた。キャシディの目は彼女を拒絶している。「ほかに選択肢はないと思うの。違うかしら?」
「きみには選ぶ権利があった。そして選んだ」
“だから、好きなようにしろ”と、キャシディが心のなかでつぶやくのを、カレンは聞いたような気がした。
「はっきりさせておきたいんだけれど、キャシディ、あなたにも選ぶ権利はあったのよ」
「なにを選ぶ権利だ?」キャシディは皮肉たっぷりに言い返した。「自分の子供を妊娠した女性がやってきて、結婚してほしいと懇願されたら、男にどんな選択肢が残されている?」
 ショックのあまり、カレンは息をのんだ。だが、キャシディの顔に後悔の色が浮かぶのを見逃さなかった。
「わたしはソファで寝るわ」カレンはなんとかこの場を乗りきりたかった。「だから、鎧《よろい》を着て寝る必要はないわよ」
「なんの話だ?」
 カレンは夫の胸のあたりを見るつもりだったが、ついシーツに隠された腰に目を引きつけられていた。
「その目は誘っているのか?」
「いいえ、観察しているだけよ」
 上掛けをはぎ、キャシディはベッドから下りた。「最後にもう一度する気はないのか?」彼の目は暗くかげっている。
「いまの言葉は聞かなかったことにしておくわ」
「来いよ、カレン」キャシディは彼女の髪をつかんだ。
「やめて」
 カレンが抵抗すると、キャシディは彼女の髪を放すかわりに、その首をつかんだ。キャシディは特別力をこめているわけではなかったが、その気になれば、カレンの首くらい簡単に折ってしまうだけの力を持っていることを、彼女は知っていた。カレンは恐怖に支配されたくなかった。キャシディは彼女を傷つけたいという欲求に駆られている。その気持は理解できないわけではなかったが、許せるはずもない。
「放して、キャシディ」カレンはきっぱりと言った。
「ぼくはきみの好みを知りつくしている。どこを愛撫《あいぶ》されるのが好きか、どこにキスされたいか」キャシディは彼女の唇を指でなぞった。彼の呼吸は乱れ、目には興奮の光が宿っている。「さあ、ベッドに来るんだ」
 怒りを燃えあがらせ、カレンはキャシディをにらみつけた。「あなたを憎むわ」
「憎めばいいじゃないか」キャシディは身を乗りだした。
 彼はキスしようとしているのだと察し、カレンはさっと顔をそむけ、同時に手を振りあげた。怒りにまかせて夫の頬をたたくと、大きな音がした。
「なにをするんだ」キャシディは彼女の腰に腕を回した。「ぼくの母親は父の人生を台なしにした。父を切り刻むように苦しめた。だが、ぼくは父とは違う。きみに人生を台なしにされたりはしない」
 一瞬、カレンはおびえずにはいられなかったが、やがて冷ややかな怒りがこみあげてくるのを感じた。キャシディが怒りにわれを忘れているのを見るのは初めてだ。自分でもコントロールできない衝動に駆られながら、彼は苦しんでいる。
「放して。さもないと警察を呼ぶわ」
 キャシディはびくりとしたが、彼女の目をのぞきこんだままだった。「呼びたければ呼べ。だが、死ぬまで後悔するぞ」
「あなたがなにをしたって、これ以上わたしを苦しめるのは無理よ。もう充分に苦しんでいるんだから」
「もしビッキーの親権を渡さないと言ったら?」
 カレンの視界がぼやけた。彼女は大きく息を吸い、意識を保とうとした。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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