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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ロマンス

ギリシアの聖夜

ギリシアの聖夜


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ルーシー・モンロー(Lucy Monroe)
 アメリカ、オレゴン州出身。姉の影響でハーレクインのロマンス小説を読み始めた。大学在学中に“生涯でいちばんすてきな男性”と知り合って結婚し、子供が生まれてからは母親としての道を選んだ。十八歳の夏に家族で旅行に行ったヨーロッパが忘れられず、今も時間があれば旅行を楽しんでいる。

解説

 目覚めたとき、イーデンは病院のベッドにいた。ほかの女性に気持ちが向いた夫に離婚を切り出した直後、トラックが彼女たちの車に突っ込んできたのを覚えている。イーデンは凍りついた。アリスティドはどうなったの? 医師に尋ねると、彼はまだ意識が戻らないという。数日後、イーデンはついに昏睡から覚めた夫を見舞った。だが安堵のあまり涙を浮かべるイーデンを見ても、彼はなんの反応も示さずに言った。「きみは誰なんだ?」

抄録

 イーデンが唇を震わせると、アリスティドはキスを深めた。彼女は抵抗せず、アリスティドに口のなかを探求させ、今では全身を震わせていた。
 ウエストに腕をまわして、アリスティドはイーデンを抱き寄せた。イーデンの腕がアリスティドの首に巻きつき、彼女が舌をからませてくるのが感じられた。その感触は驚くほどなじみあるものだった。信じられないことに、この記憶にない妻をベッドに押し倒して、愛を交わしたくなったほどだった。
 アリスティドはキスをやめた。「きみの味は知っている」
「ほんとう?」イーデンの声に期待の響きを聞きとり、アリスティドは彼女を思い出せないことに初めて良心の呵責《かしゃく》を覚えた。
「頭は覚えていないけど、体はきみを知っている。それは確かだな」
 イーデンはたじろいだ。傷ついたらしい。
「よかったよ」
 イーデンはアリスティドの首から手をおろし、放してくれと言いたげに彼の胸を押した。「わたしたち、ベッドに関してはなんの問題もなかったわ」
 今度はアリスティドがたじろぐ番だった。二人のあいだでうまくいっていたのはベッドのなかだけのような言い方に聞こえる。
 アリスティドはイーデンを放した。彼女はうしろにさがり、うつむいてコートを撫でつけた。アリスティドは気持ちを落ち着かせようとした。ちょっとしたキスで、これほどの欲望を感じたことは今までになかったように思える。肉体的にいつもこんなに燃えあがりやすかったのだとしたら、自分の結婚生活にも大いなる意義があると言える。
 むろん息子の誕生にも大いなる意義があった。
「今日はセバスチャンが来るとばかり思っていたよ」
「お義兄《にい》さまは車のなかで待っているわ」
「きみが来るとは思っていなかったんだ」
「昨日の喧嘩のことは家族には話してないから」
「当然、みんなは病院にはきみが迎えに行くと思ったわけか」
「ええ」
「どうして話さなかった?」
 イーデンはあきれ顔で彼を見た。「わたしたち二人の問題をほかの人にも話せというの?」
 彼女の言うとおりだ。自分自身、私生活については母や兄も含め、人にはほとんど話さないではないか。自分にとっては謎《なぞ》の存在だが、イーデンは親友よりもぼくのことを知っているんだ。そうと気づいて、アリスティドは狼狽《ろうばい》した。
「いや、他言は無用だな」
「やっぱり、そうでしょう」
「つまり、きみはぼくの気持ちを考えて、行動したってことかい?」
「そうでもないの。昨日はあなたがどう思うかってことはあまり考えていなかったわ」
 なぜか、アリスティドにはその言葉が信じられなかった。「ほんとうに?」
「ええ。心配したあなたにコートを渡してくれって頼まれた、とルイス先生は言っていたけど、わたしは信じなかったわ」
「彼が親切でしたことだよ」イーデンの言うとおり、ぼくは彼女を気づかわなかった。
 いまいましいことに、罪悪感が生まれていた。
 イーデンは顔をそむけたが、アリスティドは彼女が傷ついた表情を浮かべるのを見逃さなかった。
「わたしもそう考えたわ」
「ぼくがそんなにきみを怒らせたんだったら、どうして家族に話さなかった?」
「不安の種を増やしたってしょうがないからよ」イーデンは彼のほうへ冷静な顔で向き直った。
 唇に赤みが残っていなかったら、少しまえにキスをしたとは思えない顔だ。
「クーロス家は結婚や家族関係を重視しているわ。わたしたち夫婦に問題があるとお義母《かあ》さまやお義兄さまが知ったら、心配するわ。これ以上、混乱を招くことはないもの。事故と記憶喪失。その二つでもう充分、心配させたんだから」
「家族のまえでは幸せな夫婦のふりをしようというのかい?」ぼくは家族には嘘《うそ》をついたことがない。妻なら、そのことは知っているはずだ。
「それは無理でしょう。ただ、わたしへの敵意をむきだしにするのは、二人きりのときだけにしてほしいの。テオにも親の不仲を感じとられたくないわ。このところ、あの子の生活も乱れていたから」
「きみは、ぼくたちがこのまま喧嘩を続けるのを前提に話をしているね?」
「今の状況じゃ、喧嘩は避けられないでしょう」
「結婚がうまくいっていないような言い方だね」
「その逆だからよ。あなたの家族も息子も、わたしたちの仲のいいところしか見ていないからよ。このニューヨークの旅まではうまくいってたわ。でも、今はわたしの忍耐力がゼロ近くまで低下してるの」
「どうしてなんだい?」
「あなたの記憶が戻るまで、その話はしたくないわ」
「ぼくのせいなのか?」
「カサンドラ・ヘリオスがわたしたちの生活のなかにいるかぎりは。彼女はわたしたちの仲を裂こうとしているのよ。もう彼女の画策に知らないふりをするつもりはないの。喧嘩の原因は彼女なんだから」
「彼女は社員で、友達なんだよ。そんな言い方をするのはやめてくれ」
「わたしは妻にすぎないってことね……でも、記憶があろうとなかろうと、妻に変わりはないわ」
 アリスティドが非難に言葉を返そうとしたとき、看護師が車椅子を押して病室に入ってきた。
「なんです、それは?」アリスティドはきいた。
「病院のきまりです」看護師は答えた。「階下まで車椅子で移動してもらうことになっているんです」
 イーデンの目が興味深げにきらりと光った。だが、彼女はなにも言わなかった。彼が車椅子に乗って、押されていくつもりなど毛頭ないと、わかっているのだろう。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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