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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ディザイア

待ちわびた夜

待ちわびた夜


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆3
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著者プロフィール

 ハイディ・ベッツ(Heidi Betts)
 中学生のころからロマンス小説を愛読していた。処女作を出版して以来、数々の賞を受賞した経歴の持ち主。動物愛好家でもあり、怪我をした動物の手当てをして自然に帰してやることもしばしばだという。

解説

 図書館司書のグウェンは今日、誕生日を迎えて愕然とした。これまでの人生に欠けているもの……それは男性経験だ。これからの人生を楽しむために、彼女はセクシーな姿に変身し、地元で人気のナイトクラブに出かけた。だが彼女が夜遊びに不慣れなことを一目で見抜いた男性がいた。クラブのオーナー、イーサンだ。彼はグウェンに近づく怪しげな輩を追い払い、家まで送ろうとした。しかし、彼女はこのまま帰りたくはなかった。どこに行きたいのかというイーサンの質問に、彼女は思いきって答えた。「あなたの家よ」
 ★イーサン自身のロマンスは、うぶなヒロインを相手に、どのように展開するのでしょうか?★

抄録

 ネイルや化粧を施したのち、同じ通りにあるブティックに行くように言われた。ブティックにいたのは長身の黒人女性で、髪に鮮やかな赤紫のアクセントを入れた彼女は、肩ひものない黒のワンピースと十センチもの高さの細いハイヒールをグウェンにあてがった。
「返事がないところを見ると、こういう場所には慣れていないようだね」イーサンは苦笑しながら言った。鮮やかな黄色のタクシーがとまったので、彼はドアを開け、乗りこむ彼女に手を貸した。
 後部座席の隣に乗りこんでくるイーサンを見て、グウェンは眉をひそめた。はめをはずすのはもうたくさんだ。今日はまわりの人々の話さえ理解できなかった。
 そして、このハンサムで洗練された男性が助けてくれたのだと思ったら、みるみる涙があふれてきた。
「ねえ、緊張することはないんだよ」
 イーサンは手を伸ばし、親指でグウェンの涙をそっとぬぐった。その動きにつれて、ブルーのスポーツジャケットの前が開き、胸がのぞいた。ぴったりした黒のTシャツに包まれた胸板は、広くがっしりしている。男性の胸に目を奪われたうえに、その彼がすぐそばにいるのだ。グウェンの喉はからからに渇いた。
「君の姿が目に入った瞬間、クラブには慣れていないとわかったよ。とはいえ、〈ザ・ホット・スポット〉としては歓迎するよ。クラブのようすを見に来てくれるのはうれしいんだ」
 イーサンはそう言って、なごませるような笑顔を見せた。グウェンは手足の先から緊張が抜けていくような気がした。なんて親切な人なのかしら。クラブのオーナーというのがほんとうなら、場違いなところにぽつんと来た哀れな女の世話をやくより、もっとすることはあるだろうに。あの気持ち悪いポリエステルのスーツの男についていくところだったのを、イーサンが助けてくれたのだ。ほんとうに運がよかったわ、とグウェンは思った。
 私はなにを考えていたのかしら? そうまでして、バージンを捨てる必要なんかないじゃないの。
「で、どこに住んでいるんだい、グウェン?」イーサンは運転手のほうに顎をしゃくった。「このタクシーに家まで送ってもらうよ」
 住所は舌の先まで出ていて、口にすればよかった。でも、言ってしまったら、タクシーはそこに行って、彼女を降ろし、イーサンはクラブに戻ってしまうだろう。なんの冒険もしないうちに、今夜は終わってしまうのだ。わざわざ髪型を変え、新しい服を手に入れ、別の人間になりきろうと努めたことは水の泡になってしまう。しかも、三十一歳のバージンのレッテルはついたままなのだ。
 先刻飲んだアルコールのせいか、胸がむかむかする。グウェンはパニックに陥って叫んだ。「だめ!」
 イーサンはどういうことかわからないながらも、なんとなく愉快な気分だった。「だめ?」
 タクシーの薄暗い後部座席でイーサンのまなざしを見つめながら、グウェンはかぶりを振った。「家には帰りたくないわ。ここに来たばかりなのよ。今日は誕生日なの。だから、家に帰るのは……」
「家に帰るのは?」
 なにかでたらめをしてからよ、と言いたかったが、出てきた言葉はこうだった。「帰る気分になってからにしたいの」
「つまり、クラブに戻りたいというのかい? 僕から見ると、いい考えとは思えないんだがな。だって、アップルマティーニを二杯か三杯は飲んだだろう? 怒らないで聞いてほしいんだが、これ以上飲んだら、君はふらふらになってしまう。しかも、君に誘いをかけた男はまだ中にいるんだ。また君を口説いてくるかもしれない。ほんとうにそれでいいのかい?」
 いいえ、そんなのいやだわ。でも、このまま家に帰ったら、上掛けにくるまって、泣きながら眠るしかないのだ。そうなったら、情けなくて、二度と起きあがる気力がなくなってしまうだろう。
 グウェンは大きく息を吸い、顎を上げて言った。「とにかく、まだ家には帰らないわ」
「家に帰るのはいやで、クラブにも戻りたくないとすると、どこに行きたいんだい?」
 ある考えがふっと魔法のように頭に浮かんだ。エロチックな衝動に突き動かされる。「あなたの家よ」
 イーサンは驚いて眉を上げた。私のDNAにも悪女の遺伝子が少しは流れていたんだわ、とグウェンは思った。
「僕の家ね」彼は繰り返した。「本気なのかい?」
 グウェンはイーサンのまなざしをとらえながら、唾《つば》をのんだ。膝の上でビーズのバッグを握り締め、呼吸が乱れないように必死に整える。そして、うなずいた。
 イーサンはまじまじとグウェンを見つめた。彼女の香水のスパイシーな香りに包まれる。そして、彼の下腹部にまっすぐ興奮が伝わった。
 クラブから女性を連れて帰るのは初めてのことではない。でも、背が高くなく、とび色の髪の女性に目をとめるようなことはあまりなかった。それも、ほんの数杯アルコールを口にしただけで、足元がおぼつかないような女性に。これまで彼が誘いをかけてきたのは、自分のしていることがどういうことかわかっている女性であり、クラブに来るのも、たいていは男をさがすことこそが目的の女性たちだった。
 なのに、グウェンには不思議に気をそそられた。たとえば歩き方だ。生まれたての‘きりん’みたいにぎこちない。高いハイヒールなど、めったにはくことはないのだろう。そして丈の短い黒のワンピースを下に引っ張ろうとするしぐさ。形のいいヒップをめだたせるセクシーな服など着慣れていないと思われる。
 いずれにしろイーサンは、まだ彼女から離れたくない気がした。
 イーサンは、料金メーターを倒しただけで、辛抱強く待っている運転手のほうを向いた。「聞いただろう? 僕の家に行くことにしたよ」運転手に住所を告げ、取り返しのつかないことにならなければいいが、と彼は内心思った。


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