和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>オレ様
著者プロフィール
水瀬 結月(みなせ ゆづき)
兵庫県出身/天秤座/血液型 A型/誕生日 10月23日/趣味:ふかふか布団で昼寝です!
リーフ出版、オークラ出版、ビブロスなどより作品を多数発表。
兵庫県出身/天秤座/血液型 A型/誕生日 10月23日/趣味:ふかふか布団で昼寝です!
リーフ出版、オークラ出版、ビブロスなどより作品を多数発表。
解説
アズ・ノベルズ「花嫁は翡翠に奪われる」番外編! 表向きは同居、いや嫁入り!? 凌は資産家の息子、貴砺の家に引っ越してきたが、その豪邸ではかわいい新妻を迎えた幸せモード!? もう一つの新婚ラブラブストーリー!
抄録
荷解きもすっかり終わり、新しい生活がスタートして七日目の金曜日。
会社から帰宅し、ラフな服装に着替えてダイニングルームに入ると、貴砺はすでにテーブルについていた。
「おかえりなさい、貴砺さん。今日は早かったんですね」
「ああ、凌もおかえり。早く席につくがいい」
急かされて、凌は不思議に思う。
王が引いてくれた椅子に座ると、すぐにメイドが給仕をはじめる。まず見事な漆塗りの箸を置かれ、凌はそれを凝視した。鮮やかな螺鈿細工が施されている。
「きれいです。はじめて見るお箸ですね。新調されたんですか?」
「箸だけではないぞ」
テーブルを挟んで向かい側に座った貴砺が、口角を上げる。何か楽しい企みがあるというような表情だ。
メイドが次々と料理を運んでくる。今夜のメニューは純和風だ。凌が和食党だから、屋敷で和食を出される回数が格段に増えたという。
最後に、ほっこりと湯気をたてるごはん茶碗と汁椀が、目の前に置かれた。
凌はきらきらと眼を輝かせる。
「すごい……! とても存在感のある食器ばかりですね」
一つ一つが際立っていた。それなのに食卓全体の調和が取れている。それは食器が自己主張をしながらも出すぎることがなく、むしろ料理を引き立てるという自分の役割を心得ているからかもしれない。
「気に入ったか?」
「はい、とても」
「それはよかった。私たち専用の食器だ」
満足気な貴砺の双眸を、凌は驚いて見つめた。
「専用、ですか?」
「そうだ。すべて、私たちが日常的に使うものだ」
「新しく、揃えてくださったんですか?」
「凌はこういうのが好きだろう?」
さらりと言った貴砺に、凌の胸が、きゅっと甘く鳴る。恋人が自分のためを想ってしてくれたということが、何よりも嬉しい。
「もっとも、茶碗と湯呑みは兄夫婦からの祝いの品だが」
そう言われて、凌はまじまじと食器を見つめた。もしかしてこれは、俗に言う『めおと茶碗』のようなものではないだろうか。一般的なそれとの違いは、茶碗の大きさに差がないことくらいだろう。微妙に違う色合いと、呼応するような模様は、その二つが対であることを表している。
ふと、脳裏を何かがかすめたが、明確な形にはならなかった。
「どうだ?」
期待に満ちた貴砺の眼に促され、凌は茶碗を手に取った。ぴたりと手に馴染む。それは高級な骨董品を手にした時ととても感覚が似ていた。しかし今はそれよりも、炊き上がったばかりの白米の温もりが、手のひらに伝わる。胸がじんとした。貴砺と家族になれたような気がした。
「すごく……すごく嬉しいです。幸せです」
「そうか」
言葉は短い。けれど貴砺が、心から喜んでいるのがわかった。
――キスしたいのに。
凌はもどかしく思う。本当は、今すぐ貴砺の傍に行って、力いっぱい抱きついて、ありがとうと言いたいのに。キスして、それから……。
情のこもった眼で貴砺を見つめるが、部屋の隅に控えているメイドが気になった。
「いただきます、貴砺さん。今夜は一段と美味しく感じそうです」
夕食をじっくり味わいたいけれど、早くふたりきりになりたいとも思った。
*この続きは製品版でお楽しみください。
会社から帰宅し、ラフな服装に着替えてダイニングルームに入ると、貴砺はすでにテーブルについていた。
「おかえりなさい、貴砺さん。今日は早かったんですね」
「ああ、凌もおかえり。早く席につくがいい」
急かされて、凌は不思議に思う。
王が引いてくれた椅子に座ると、すぐにメイドが給仕をはじめる。まず見事な漆塗りの箸を置かれ、凌はそれを凝視した。鮮やかな螺鈿細工が施されている。
「きれいです。はじめて見るお箸ですね。新調されたんですか?」
「箸だけではないぞ」
テーブルを挟んで向かい側に座った貴砺が、口角を上げる。何か楽しい企みがあるというような表情だ。
メイドが次々と料理を運んでくる。今夜のメニューは純和風だ。凌が和食党だから、屋敷で和食を出される回数が格段に増えたという。
最後に、ほっこりと湯気をたてるごはん茶碗と汁椀が、目の前に置かれた。
凌はきらきらと眼を輝かせる。
「すごい……! とても存在感のある食器ばかりですね」
一つ一つが際立っていた。それなのに食卓全体の調和が取れている。それは食器が自己主張をしながらも出すぎることがなく、むしろ料理を引き立てるという自分の役割を心得ているからかもしれない。
「気に入ったか?」
「はい、とても」
「それはよかった。私たち専用の食器だ」
満足気な貴砺の双眸を、凌は驚いて見つめた。
「専用、ですか?」
「そうだ。すべて、私たちが日常的に使うものだ」
「新しく、揃えてくださったんですか?」
「凌はこういうのが好きだろう?」
さらりと言った貴砺に、凌の胸が、きゅっと甘く鳴る。恋人が自分のためを想ってしてくれたということが、何よりも嬉しい。
「もっとも、茶碗と湯呑みは兄夫婦からの祝いの品だが」
そう言われて、凌はまじまじと食器を見つめた。もしかしてこれは、俗に言う『めおと茶碗』のようなものではないだろうか。一般的なそれとの違いは、茶碗の大きさに差がないことくらいだろう。微妙に違う色合いと、呼応するような模様は、その二つが対であることを表している。
ふと、脳裏を何かがかすめたが、明確な形にはならなかった。
「どうだ?」
期待に満ちた貴砺の眼に促され、凌は茶碗を手に取った。ぴたりと手に馴染む。それは高級な骨董品を手にした時ととても感覚が似ていた。しかし今はそれよりも、炊き上がったばかりの白米の温もりが、手のひらに伝わる。胸がじんとした。貴砺と家族になれたような気がした。
「すごく……すごく嬉しいです。幸せです」
「そうか」
言葉は短い。けれど貴砺が、心から喜んでいるのがわかった。
――キスしたいのに。
凌はもどかしく思う。本当は、今すぐ貴砺の傍に行って、力いっぱい抱きついて、ありがとうと言いたいのに。キスして、それから……。
情のこもった眼で貴砺を見つめるが、部屋の隅に控えているメイドが気になった。
「いただきます、貴砺さん。今夜は一段と美味しく感じそうです」
夕食をじっくり味わいたいけれど、早くふたりきりになりたいとも思った。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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