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妖精は眠れない

妖精は眠れない


発行: アンジェリカ
シリーズ: アンジェリカ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★☆2
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解説

王子、将軍、魔導師、神官etc.逆ハーラブ!

「リツが夢を渡る妖精だからだ」――弁護士秘書として働く27歳のリツ。ある日突然、夢の中が異世界とつながって、彼女は17歳の美少女妖精になっていた! その存在はこちらの世界で幸運と平穏をもたらす神と同義らしい。妖精の定住化を望む異世界の人々。でも、その方法は、異世界人と○×△すること?! 夢で異世界トリップをするため、現実世界では睡眠不足で衰弱していくリツ。現実か異世界、どっちで生きるか選ばねばならぬ日が迫るなか、彼女の下す決断は? 愛する人は誰?!

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「ど、どうしてリツが……俺の部屋に?」
「窓から入ったよ!」
 鍵がかかっているのが外から見えたので、魔法で開けさせていただきました。
「な、なぜそんなことを」
「ちょっとアルに聞きたいこと、あって」
「……俺に? 本気か?」
 アルはとても良い顔をしている。動揺がよく伝わってくる、素晴らしい表情だ。
「本気も本気。アルにしか聞けない」
 アルははぁ〜っと大きな溜め息をついてから、頭に乗せたタオルを取った。
「……分かった。だがその前に服を着させてくれ」
 腰にタオルを巻いただけのアルが、私の方へ近づいてきた。
 ベッド下の引き出しに着替えが入っているらしく、アルが私の目の前で屈んだ。何ものにも隠されていないむき出しの筋肉を目の当たりにして、私は無意識に呟いてしまった。
「|雄《お》っぱい……」
「……は?」
 もちろんアルは耳を疑うだろう。しかし私だって負けない。
「立派な|雄《お》っぱいを……お持ちですね……」
 私の乳より大きいと思う。かつて話題になった男性用ブラジャーが、私の頭にぼんやり浮かんだ。
「……せめて胸筋と言って欲しいんだが」
 ごもっともな指摘である。アルは私と目を合わせないようにしてごそごそ数枚服を取ってから、再びバスルームへ戻っていった。
 服を着ている時ですら分厚い胸板というか、丸太のような腕というか、とにかく筋肉が半端なくついていると分かっていたけれど、生で見るのはまたひと味違っていた。人体の筋肉はこういう風に連なっているのかと明解なくらい一つ一つの塊が綺麗に分かれていて、何かの動作をする度に動かした部位の筋肉が盛り上がった。ボディビルの大会でもないのに、思わず「切れてるよー!」と叫びたくなるほどだ。もはやあれは人体ではない。芸術作品だ。
 そして、彼の体に刻まれた傷跡が気になった。肩や、腕や、脇腹……。あっという間だったので大きなものしか目に入らなかったが、鋭利な刃物で斬られたというよりは、大きな獣に引き裂かれたような、抉られたような傷に見えた。平和に見える国なのに、一体何と戦う必要があるのだろうか。
「待たせた」
 今度は私がいることを把握していたから、アルは扉を開けても驚くことはなく、黒いシャツと茶色のゆるパンツを身につけていて、頭にタオルを乗せたままのっそりソファに腰掛けた。いつもセットしてある前髪が、お風呂上がりだから適当に垂らしてある。淡い茶色の前髪は目の位置よりも長くって、こうなるとヤンキーにしか見えない。ちょっと笑える。
「……で? 何が聞きたいんだ」
 アルはマッティやクロードのように口説いてこないので、さっぱりしていてとても楽だ。ベタベタ触ってくることもなく、ある程度の距離を置いて接してくれるので、身構える必要もない。
「護衛の人を変えること。できる?」
「無理だ」
 バッサリ即答、至極簡潔。そうだとは思っていましたけれど。
「レオナールをリツの護衛につけたのはあいつの父親だ。いくら妖精の願いでも到底聞き入れられないだろう」
「うん、だよね。……教えてくれてありがとう」
 やっぱりか。まぁ、しょうがない。だったらこれから、自分の身は自分で守れるようもっと警戒すればいいだけなのだ。すればいい、というか、どうせもみ合いになったら私が負けるのだから、もみ合いという事態にならないよう気を付けるしかない。……と気を引き締めてみても、やっぱり怖いものは怖いわけで。そういう私の思いを察してくれたのか、アルが続けて口を開いた。
「何かあったら俺を頼れ。……俺で良ければ」
「……うん、ありがとう。助かるよ」
 こいつ。筋肉野郎のくせに。
 アルはこの世界に来たばかりの私を助けてくれた恩人らしいが、その時の私は気を失っていて今でもさっぱり思い出すことができない。彼との接触といったら鎮花祭に関連する場しかなく、あれこれ話をする機会すらなかった。私は彼の名前と見た目以上のことを何も知らないし、それは向こうも同じだろうと推量する。
 けれど、そんな彼にどうして私は聞いたのか。
 アルは必要以上の詮索をしないと思ったからだ。無口な人だという印象を得ていたからかもしれない。聞かれたことには「はい」か「いいえ」でしか答えないくらいの単純さ、素朴さ、潔癖さを私は彼から受け取っていたし、実際その通りであったので今もしっかり満足している。
 マッティに相談していたら、何があったのか根掘り葉掘り聞かれただろう。私の身に起こったことを、彼なら自分のことのように一緒に憤り、どうしたら良いか親身になって対策を考えてくれただろう。もしかしたら、レオを護衛から外そうと積極的な働きかけをしてくれたかもしれない。
 けれど、私は「レオに襲われた」という事実は隠しておきたかった。恥ずかしかったからだ。屈辱だったからだ。泣き寝入りをするのは本意ではなかったが、全てを明らかにして私が感じる屈辱と、被害を受けながらも黙っておくという屈辱を天秤にかけた結果、後者の方がまだ耐えられると判断した。だからこそマッティに相談するという選択肢を選ばなかったのだ。
「リラックスタイムにお邪魔した、ごめんね!」
 立ち上がって、窓を開けた。
「構わない。気を付けて」
「じゃあおやすみ」
「……おやすみ」
 あれ? 私、レオを外したいって名指しで言っただろうか。気付いた時には既に遅く、結局アルには聞けずじまいだった。まぁいいか、護衛といえばあいつ一択のようなものだったし、あの名前は口にすら出したくなかったから。

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