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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・36アワーズ

過去なき恋人

過去なき恋人


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・36アワーズ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 マリリン・パパーノ(Marilyn Pappano)
 海軍軍人の夫について合衆国各地を転々とする生活を送ったあと、現在は故郷の町を見下ろす丘の上で暮らしている。眺めのよさと果樹園つきの広い敷地に満足している彼女は、もう引っ越しをするつもりはない。執筆をしていないときは、庭でとれたりんごでジャムを作ったり(りんご泥棒に先を越されないかぎり)、池でボートをこいだり、草木の手入れをしている。

解説

 コンピュータプログラマーのジュリエットは、記憶喪失の男性、マーティン・スミスの助けになりたいといつもひそかに思っていた。私なら彼の身元を洗い出せるかもしれない。だからマーティンが協力を求めてきたとき、彼女は快諾した。調査のためにともに過ごすうち、うぶなジュリエットはどんどん彼に惹かれていく。だが、一方で不安も募った。マーティンの時折見せる厳しい表情が、とても普通の男性のものには思えなかったのだ。
 ★本作で明らかになるマーティンの正体とともに、市長殺害の謎も一挙に解決? お楽しみに!★

抄録

 彼女が帰宅したころを見はからって、マーティンはアパートメントを出た。はじかれたように立ちあがり、犬がついてきた。
 郵便物をとって家のなかへ戻ろうとしたとき、ワンピース姿のジュリエットは、マーティンがやってくるのに気づいた。彼のためにスクリーンドアを押さえると、犬がふたりの足もとをすり抜けて家のなかへ駆けこんでいき、廊下の向こうへ姿を消した。
「犬が勝手になかに入っちゃったわ!」
「そのようだね」
「さっさと追いだしてちょうだい」
 マーティンは家のなかに入って口笛を吹いたが、反応はなかった。いいにおいがしているキッチンへ行ったに違いないと思ったが、キッチンにはいなかった。家の裏手の廊下に面したドアはひとつしか開いていなかった。そのドアは、ジュリエットのベッドルームへ続いていた。
「利口な犬だ」マーティンはつぶやいてベッドルームに入り、肩越しにジュリエットに言った。「ロミオはこの家でもっとも寝心地のいいベッドを見つけたよ」そこは、彼自身が目をつけていたベッドだ。
「ロミオ? ロミオですって? わたしは犬は飼わないし、ロミオという名前の犬なんて断じてお断りよ。ジュリエットという名前で、いやというほどからかわれてきたんだから」ベッドルームに入った彼女は、ベッドに寝そべって枕《まくら》に頭をのせている犬を見ると、顔をしかめた。「ああ、やめて。ベッドで寝ているじゃないの。しかもその犬、におうわ」
「仕方ないな。ずいぶん長くさすらっていたみたいだから。ぼくが風呂に入れてやるよ」そう、いずれは。手を触れても噛みつかないくらいなれたころに、とマーティンは心のなかで続けた。
「しつけもできていないみたいだわ」
「ぼくがしつける」
「蚤《のみ》もいそうだし」
「蚤退治の薬を動物病院でもらってくるよ」
「わたしは働いているのよ」
「安全な場所さえ与えてやれば、餌《えさ》をあさったりしなくなる。この犬は飢え死にしかかっていたんだ、ジュリエット」
 彼女は吐息をついた。「とにかく、わたしのベッドで寝てもらっては困るわ」
「この犬専用のベッドを与えて、きみのベッドに上がろうとしたらしかればいい。そのうち理解するだろう」
「どんな餌をあげればいいの?」
「ドッグフードで充分だ」
「花壇を掘り返すかもしれないわ」
「きみはまだ花壇になにも植えていないじゃないか。ちゃんとしつければ大丈夫だよ。おいで」マーティンは彼女の手をつかんでベッドのそばへ引き寄せた。「こうやって」ジュリエットの背後に立ち、片手をこぶしに握らせる。「この手のにおいをかがせるんだ。ロミオ、きみの新しい――」
「ロミオじゃないわ!」
「わかった」マーティンは彼女の体を背後から包みこむようにして、そのこぶしを犬のほうへ近づけさせた。「ロミオじゃない犬、きみの新しいママに――」
「飼い主と言って」
「彼女はジュリエットという名前なんだ。最初はちょっととっつきにくいかもしれないが、だんだん好きになれるさ。大丈夫」
 犬は枕から頭をもたげて彼女の手のにおいをかぎ、手の甲をなめた。
「すごいな。きみのことを気に入ったみたいだぞ」
 ジュリエットは顔をしかめた。「いまのはそういう意味なの? この犬は好きだという感情を舌で表現するの?」
「ダーリン、人類も太古の昔から愛情を舌で表現してきたじゃないか」
「わたしはしてこなかったわ」
「そうか。じゃあ……」マーティンは彼女を自分のほうに向き直らせた。「こんなふうにするんだ」ジュリエットの手を口もとへ引き寄せて手の甲に舌をつける。「それからこんなことも……」彼女の髪をかきあげ、耳に舌を滑らせた。「それからこう……」
 何百回もマーティンとキスを交わしてきたかのように、ジュリエットは唇を開いた。彼の首に腕をからませると、身をすり寄せる。すぐそばにあるベッドを、マーティンは意識せずにはいられなかった。ほんの少しジュリエットを後ろへ下がらせれば、彼女をベッドに横たえることができる。
 そのとき、犬が低いうなり声をあげた。ジュリエットは驚いて体を引いた。はしたないところを見られた十代の少女のように、頬を染めている。そんな彼女の純真さを、マーティンはひどく官能的に感じた。
 ジュリエットは逃げだそうとしたが、マーティンは彼女の手をつかんで引きとめた。
 彼に背中を向けたまま、ジュリエットはうなだれた。「……ごめんなさい。わたし……いつもはこんなことをしないんだけれど……」
「いつもはベッドルームで男性とキスしたりしないのかい? よかった」
「そんなつもりじゃなかったのよ。あなたは……わたしはこれからもあなたに協力するから――」
「ジュリエット」マーティンは彼女を自分のほうに向かせ、その顔をのぞきこんだ。「ぼくがきみにキスしたんだ。きみをひと目見たときから、ずっとキスしたいと思っていた。きみは美しくて愛らしい。ぼくに協力してくれていることとはなんの関係もない。きみが欲しいからキスしたんだ。きみだってわかっているだろう?」
 ジュリエットはただ首を振った。
 ほほえんで、マーティンは言った。「では、いまのは警告と受けとめてくれ」


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