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伯爵と一粒の真珠

伯爵と一粒の真珠


発行: ハーレクイン
シリーズ: MIRA文庫
価格:800pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

かつて享楽を愛した伯爵は、光を失い孤独を抱えて生きていた。スコットランドを愛する作家が描く、人気シリーズ第2弾!

出征したまま行方知れずの弟を捜し、ミネルヴァは強い決意を胸に伯爵家の扉を叩いた。もはや、“ロンドンの放蕩男”と悪名高きラスミア伯爵に頼るほかない。弟は恥知らずな伯爵に心酔し、愚かにも戦地へついて行ったのだ。ところがミネルヴァは門前払いを食わされ、やむなく夜中に屋敷に忍び込む。そこにいたのは驚くほど見目麗しく、威厳にあふれた男性だった。だが顔には痛々しい傷が走り、青い瞳は視力を失っているようだ。怒りを忘れ、同情心が湧いたのも束の間、伯爵は彼女の話も聞かず、「出ていけ」と冷徹に追い払った。

抄録

「どうしてわたしも反発心を抱いていたと思うの?」
「なぜなら、僕がこれまで会った他の女性たちと違うからだよ、ミス・トッド。それもかなりの数の女性たちだと思ってもらってかまわない」
「心配しなくてもわかっているわ。どの醜聞記事にも同じことが書いてあったもの。ロンドン社交界を荒らしまくったのでしょう、伯爵」
「アーサーだ」ダルトンが言った。
「何が?」
「僕が反発していたのはアーサーだと言ったんだ。兄は完璧だった。何一つまちがったことはしなかった。どんなときでも、誰に対しても親切だった。きちんと結婚していた。父の自慢の息子で、父が亡くなると、僕ら全員が兄を自慢に思っていた」
「コヴィントン姉妹」
「コヴィントン姉妹?」
「彼女たち、三姉妹なの。わたしが反発しているのはそこ。いったいなんだって三人なのかしら? だって嫌なことが起こるのも三倍よ」
 ダルトンは笑みを噛み殺した。
「彼女たちは隣に住んでいて、わたしのことを生まれた日から見張っているの。母の生前は、何かあるたびに真っ先に母に知らせていたわ。“ミネルヴァが通りを走っていたわよ、ペチコートを丸見えにして”“お宅のお嬢さんったらヒキガエルを素手で持ち上げて、じろじろ観察していたのよ”“ミネルヴァったら、また男の子と遊んでいたの。本当に女らしくない子だわ”そのあとは、わたしの立ち振る舞いに逐一文句をつけ出したの。歩き方、姿勢、とにかく彼女たちが窓から見た何もかもに」
 ダルトンが何も返さずにいると、ミネルヴァは続けた。「彼女たちの甥が航海に出ていてね。よりによって彼女たちに小型望遠鏡を送ってきたの。彼女たちにとっては最強の武器よ。わたしが何をしているかを見るために、身を乗り出す必要もなくなったんだから」
「それで君は、その人たちを悩ませたいがためにわざと自分の評判を貶めるようになったとか?」
 ミネルヴァ・トッドはくすくすと笑った。思いがけず、もっともっと笑わせたいと思わせる声だった。
「実際のところ、わたしはそう評判の悪い女ではないわ。そういう部分もあるかもしれないけれど、でもそれは彼女たちを見ていると、つい舌を突き出してやりたくなったり、スカートを持ち上げてペチコートを見せたくなったりするから。あの姉妹のおかげよ、社交界で他人の意見に耳を貸すことがどんなにばかばかしいことかはっきりわかったのは。社交界はコヴィントン姉妹と同じ。人が失敗するのを今か今かと待ち構えている」
「だから君はわざと失敗してみせる」
「わざと失敗する必要はないわね。自然としてしまうから」
 その率直さにダルトンは驚かされた。
「コヴィントン姉妹のことで何より気に障ったのがね、母がわたしを愛していることが彼女たちにはわからないようだったこと。母はどんなときもわたしの味方だったわ。彼女たちは自分たちが母にわたしを非難すれば、母が頭からそれを信じると思っていたみたいだった。もちろん母は信じなかったわ。そうすべきかもしれないときでさえ」
「お母さんを失望させたのか?」
 ミネルヴァがあまりに長く黙り込んだので、ダルトンは余計なことを訊いたと詫びそうになった。
「ある意味では、父と母の両方を失望させたと思うわ。わたしが何をしたかではなくて」彼女は続けた。「何もしたがらなかったせいで。わたしは、両親が驚くようなことばかりに関心を持ってきたから。一番関心を持ったのが、何世紀も前に生きていた人たちのこと。地面を掘って、遠い昔の人たちが捨てたものを見つけて、彼らの暮らしを想像するのが好きだった。ダンスにも舞踏会にも行きたがらなかった。着飾るのも好きじゃなかった。それよりは昔のものを見つけに行きたかった」
 話せば話すほど、ダルトンは彼女に惹かれるものを感じた。それ自身が危険な兆候だった。ミネルヴァ・トッドに関心を抱くのは本意ではない。
「で、今君にはネヴィル以外に身内はいないのか? 面倒見のいい叔父とか叔母とか。たちの悪いいとこたちとか?」
「たちの悪いいとこなら二人いるわ」ミネルヴァの声はほほ笑んでいるようだった。「でもあまり顔を合わすこともないの。女性のいとこは結婚していて三人の子持ちよ。男性のいとこは銀行家。彼も既婚で、子供は四人。二人はそれぞれ別にサリー州で家を構えているの」
「つまりロンドンには住んでいない?」
「ええ」
「ということは、ロンドンには誰も身内がいないわけか」
「そうね。どうしてそんなことに興味を持つの?」
 なぜかはわからないが、彼女に関するすべてに興味が湧いた。おそらくは退屈のなせる技だろう。以前の自分なら、ミネルヴァ・トッドのような女性に関心は持たなかっただろう。愛想もない。甘い言葉もささやかない。率直すぎるほど率直な女性だ。女性特有の狡猾さを、たとえ備え持っているとしてもまるで使わない。これまで出会ったどの女性よりも強情で、それでいてすべてにおいて自分の意見を持っている。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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