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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ディザイア・エクストラ

ボスとの秘密

ボスとの秘密

著: リアン・バンクス 翻訳: 松村和紀子
発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ディザイア・エクストラ
価格:840円(税込)
10ポイント還元
形式:XMDF形式⇒詳細 
対応端末:パソコン ソニー“Reader”
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著者プロフィール

 リアン・バンクス(Leanne Banks)
 USAトゥデイのベストセラーリストにも登場歴を持つ彼女は、アメリカのロマンス小説界でナンバーワンの売り上げを誇る人気作家の一人。現在、夫と息子、娘とともに、生まれ故郷のバージニアで暮らしている。コミカルでセクシー、かつ読み終えたあとも印象に残るような人物が登場する作品を好むという。そんな彼女を、超人気作家ダイアナ・パーマーも「シルエット・ディザイアの作家陣のうちでもっとも優れた作家の一人」だと大絶賛している。

解説

 ジェニーは有名な靴デザイナーのアシスタント。上司のデザイナーのちょっとした計らいで、副社長マークのもと、重要な仕事を任されることになった。こんなチャンスは二度とない。今こそ自分を売り込まなくては。目立たない服装も地味な眼鏡もやめたジェニーに、名前も覚えてくれなかったマークが関心を示しはじめた。男性ってなんて愚かなのかしら? そう思いつつ、ジェニーもいつのまにか彼に惹かれていった。自分がマークの花嫁候補のリストに入らないのはわかっている。でも、つかの間の情事なら? それなら彼も応えてくれるはず……。
★2006年12月からシルエット・ディザイア・エクストラと称して、シルエット・ディザイアで人気の作家の長編・短編などさまざまな作品を刊行していきます。★

抄録

 彼女はマークを見上げた。ひどく沈んだ顔をしていた。「きっと、仕事で来たパーティで踊ってはいけなかったんですね? ブルックにせがまれてつい踊ってしまったんです。ばかみたいに見えたでしょうね。恥ずかしいです」
 踊っていたときの官能的な彼女と、今、目の前にいるひどくおどおどした彼女があまりに違うので、マークは不思議な気がした。「恥ずかしがることは何もない。裸になったわけではないし。君は踊っただけだ。君は……セクシーに見えたよ」
 彼女は驚いた顔をした。「ということは、副社長の面前であんなふうに踊った私を大目に見てくださるということですか?」
「そういうことだ」マークは彼女の腰が自分の腰に軽く当たるのを感じた。「何か飲みたいかい?」
 彼女はうなずいた。「喉がからからです。水を。さっきのマティーニのせいで、まだ少し頭がぼんやりしていて」
 最初に見つけたバーカウンターにはマティーニしかなかった。「配膳《はいぜん》室に水のボトルがあると思います」バーテンダーは言った。「給仕に取りに行かせましょうか?」
「いや、いい」マークは言った。「配膳室の場所はわかっているから」
「内部の様子をそこまでつかんでいるなんて、驚きました」マークのあとについて廊下を歩きながらジェニーは言った。「私なら配膳室の場所はスタッフだけがわかっていればいいと思ったはずです」
「配膳室は延々と続く一族の親睦《しんぼく》会の間、身を隠すのにいちばんいい場所なんだ」廊下を一つ折れたところでマークはドアを開けた。「ここだ。シャンデリアはないが、必要なものはそろっている」彼は二つ目に開けたキャビネットで水のボトルを見つけた。「冷えていないがいいかい?」
 彼女はうなずいた。
 マークはボトルの蓋《ふた》を取ってジェニーに手渡した。二人の指が触れ合い、火花が散るほどの衝撃が駆け抜ける。マークは彼女の目を見た。
「ありがとうございます」
 ジェニーはかすれた声で言い、しばらく黙って水を飲んだ。
 彼女が唇を舌で湿らすのを見ると、あらぬ誘惑がマークの心を強烈にとらえた。彼女がまた飲む。マークの心臓は激しく打ちはじめた。
「あなたも飲みますか?」彼女は言い、ボトルを持ち上げた。
 バンドはゆっくりとした、濃厚なビートの、官能的な曲を演奏していた。キスや愛撫《あいぶ》、もつれ合った体を連想させた。
「ああ」マークはジェニーが差し出したボトルを受け取った。彼は彼女が口をつけたところに自分の口をつけて一口飲み、それからゆっくりとボトルを彼女に返した。
 彼女はまた飲んだ。二人の視線が絡み合った。
 音楽のドラムビートがマークの体の芯《しん》にずしんと響いた。ジェニーに心を引かれてはならない理由は千もある。そう言い聞かせていたはずだ。だが彼は今その中の一つも思い出せなかった。そそのかすように空気が低周波で振動している。彼は息を詰めた。
 彼女の目に感情がひらめくのが見えた。欲望、恐れ、情熱。それとも、はにかみ? 一瞬、目を伏せたときに彼女が見せた表情は、はにかみだろうか?
 ジェニーは唇を噛み、ボトルをカウンターに置いて、意を決したようにマークを見た。
「踊りませんか?」彼女はかすれた声でささやくように尋ねた。
 そう誘われて驚きつつも、マークの胸は奇妙に高鳴った。彼女は僕の頭の中を読み取っているのだろうか。僕が彼女を欲しがっているのを知っている。だが彼女はそう問いかけはしなかった。マークは衝動に屈してはいなかったが、自制心が働くのももはや限界で、制御不能になりつつあるのを感じていた。
 彼女の誘いは仕組まれたものではない分、不意のことだった。だがマークには、自分自身の反応のほうがいっそうの不意打ちだった。
 マークは前もって考えて、物事を予測しておくほうが性に合っていたが、体じゅうにアドレナリンが注入されるような高揚感は好きだった。生きている実感が持てる。何度味わっても飽きはしない。
「一曲でも……」彼女は自信なげな、たまらなくセクシーなしぐさで肩をすぼめた。唇を噛み、開いているドアのほうへちらりと目をやった。彼女は何も言わなかったが、彼女の目がすべてを語っていた。
 マークはゆっくりとドアを閉めた。それでも音楽は壁を通して聞こえてきた。「いいとも」マークは腕を広げた。彼女はすぐさま彼の腕の中に身を預けた。彼女は甘いスパイスのにおいがし、彼の顎に触れる髪はシルクのようだった。
 ジェニーは彼の肩に片手をのせ、マークは手を彼女の背中に置いた。彼女の胸のふくらみが軽く触れると、彼は危うくうめきそうになった。彼女の感触はまさに女性そのもので、長い間マークが封印してきたものすべてがそこにあった。
 ゆっくり体を揺らしながら、マークは彼女の背中に置いた手にほんのわずか力を加えた。彼女はすぐさまそれに応《こた》えて腰をぴたりと彼に寄せた。彼は硬くなっていたが、彼女は気にしていないようだった。ジェニーがマークの髪に指を通す。彼はその感触を楽しんだ。やさしくてセクシーだった。
 マークは彼女のもう一方の手を持ち上げて自分のうなじにまわし、体をぴったりと合わせた。彼女は小さく吐息をもらして顔を仰向けた。彼女の目は率直に求めていた。彼は息をのんだ。
“手を伸ばせば彼女はおまえのものだぞ”そう心の中でそそのかす声がした。“彼女はおまえのものになる”と。
 禁欲の誓いが心の隅をかすめた。そのときの彼は、これ以上とんでもないことにならないように、まだ歯止めをかけられるところにいた。
 しかし、本能が彼の背中を押した。マークは彼女の脚の間に脚を割り入れた。女性の感触がなんとも心地よく、彼はたちまち熱くなった。ジェニーが応えるようにかすかに震える。興奮が体じゅうを駆けめぐった。マークは彼女の唇を奪いたくなった。
 奪いたくなった以上はもう、彼にはそれを奪うしかなかった。

*この続きは製品版でお楽しみください。

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