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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・アフロディーテ

ため息の午後

ため息の午後


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・アフロディーテ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ステファニー・ボンド(Stephanie Bond)
 米ケンタッキー州東部の農場で生まれ育ち、大学卒業後はコンピューター・プログラマーとして働いていた。MBA《経営学修士号》を取得するため夜学で学んでいたときに指導教官から文章力を認められてロマンス小説家を目指し、見事九七年に米ハーレクイン社からデビューを果たした。九〇年に結婚した夫とアトランタに住む。

解説

 デパート社員のアレックスは取り引き先の広告代理店を訪問し、経営者のジャックの社会人らしからぬ服装に眉をひそめた。さらにディナーにまで誘われ、憤りを覚える。彼との取り引きはやめるべきだと社長に進言するが、社長は翌日のプレゼンテーションを見てから決めるという。どのみちジャックに契約まで持ち込む手腕があるとは思えない。そう高をくくるアレックスだったが、当日、会場に現れた彼の姿に目をみはった。完璧な髪とスーツ……どこから見てもエリートビジネスマンだわ。彼女の反応を楽しむようにジャックの唇に危険な笑みが浮かんだ。
 ★ハーレクイン・アフロディーテ創刊を記念して、S.ボンドのRITA賞受賞作をお届けします。セクシーかつドラマティックな展開、そして読後感のよさをお楽しみください。★

抄録

「予備のヘルメットを準備しているなんて、乗客がたくさんいるのね」アレックスが言った。
 ジャックは肩をすくめた。「まあね」
「“常連の人”もいるのかしら?」
 アレックスは自分の爪を眺めている。どういうつもりできいたんだろう? 「一人いる」ジャックはアレックスのストラップを締めた。「実は、彼女のためにヘルメットを用意しているんだ」
「まあ」
 ジャックもヘルメットをかぶり、バイクに乗った。そしてアレックスに手を差し出した。
 アレックスはドレスを見おろして顔をしかめた。「こんな格好じゃ、みっともないわ」
 ジャックはにやりとした。「絶対見ないから」前を見つめる。だが、サイドミラーであますところなく眺めることができた。アレックスはパラソルと大きなバッグとスカートの裾《すそ》を器用に脇《わき》にはさんだ。淡い色の下着にレースがついているのが見える。アレックスが後ろに座ると、ジャックはうなり声を噛《か》み殺した。彼女はマネキンのように体を硬くしている。彼はエンジンをかけた。「力を抜いて」背中にやわらかな胸の感触が伝わってくる。
 バイクがゆっくりと進むうちに、アレックスはほんの少しだけ体の力を抜いた。
「怖くなくなったかい?」ジャックが尋ねた。
 アレックスはうなずいた。少しして、咳《せき》払いをする。「その……“常連の人”ってすごく大切な人なのね」
「ああ。母のことはいつも気にかけている」ほほえんだアレックスに、ジャックはサイドミラー越しにウインクした。そして思わず、腰にまわされた彼女のやわらかな手に触れた。「しっかりつかまっててくれよ」手を離し、スピードを上げる。
 ジャックは渋滞を避けるためだと自分に言い訳しながら、できるだけ遠まわりした。だが本当は、細くしなやかなアレックスの感触を楽しんでいたかったのだった。ようやくアパートメントに着いたとき、ジャックは月曜日を待ち遠しく思った。CMを撮影するからではなく、アレックスと会えるから。
 そんなことを思った自分に驚き、ジャックはアレックスがヘルメットをはずすのを手伝うこともできなかった。「そのうち君もバイク乗りになれるぞ」これじゃまるで、今後も一緒にバイクに乗ろうとほのめかしているみたいじゃないか。
 アレックスは乱れた髪を直し、目をしばたたいた。「移動手段ってバイクだけなの?」
「ああ。天気が悪いときは兄の車を借りるが」ジャックはアレックスにほほえみ、夕日に照らされたその美しさに心を奪われた。だが兄のことを口にしたおかげで、約束を思い出した。「君を部屋まで送って、ジャケットを受け取ったらすぐ帰るよ」
 アレックスの頭だけを見るようにして、ジャックはあとから階段をのぼった。部屋に入ると、彼女は急いでジャケットを持ってきた。
「ありがとう」ジャックは急に動けなくなった。「次に会うのは月曜の撮影だね」
 アレックスはうなずいた。
 ジャックは無理に立ち去ろうとした。「いい夜を」
「ジャック」
「なんだい?」
「ありがとう……楽しかったわ」
「そうだろう」アレックスの赤らんだ頬から髪を払う。「素直な自分を出せば楽しめるんだよ」今日一日、ジャックは彼女の気をなごませようと気を使っていた。だがアレックスの唇が開いたのを見ても、冷静でいられると思った。どんな味がするのだろうなどとは考えないと。
 そう思ったとたん、彼はアレックスを引き寄せていた。軽くのつもりが、唇が触れ合った瞬間、ゆっくりとさぐるようなキスに変わる。今日一日の我慢と欲求不満がこもった口づけだった。最初で最後かもしれないと思い、ジャックは心ゆくまで彼女の甘美な味わいを楽しんだ。体が痛いほどうずいている。アレックスがあえぎ声をもらすと、彼は体を押しつけた。自分がどんなに興奮しているか示すために。
 背後の廊下から鼻歌が聞こえ、ジャックは顔を上げた。近づいてくる人影を見て、アレックスの瞳が後悔に曇る。
「まあ!」白い髪を逆立てた長身の女性は、目をまるくした。「ごめんなさい。私、なにも見てないから」彼女はきびすを返し、急いで廊下を曲がって消えた。
 興奮冷めやらぬまま、ジャックはアレックスを見つめて眉を上げた。
「同じアパートメントに住んでいる友達よ」アレックスは身を引いて、放心したように唇を触った。深く息を吸いこんで吐く。それから、眉間《みけん》にしわを寄せた。「ジャック、今あったことは……」
 そのつらそうな声を聞いて、ジャックは張りついたような笑みを浮かべた。「親愛の情をこめた、ちょっとした好奇心さ。もうじゅうぶんだ」
 さまざまな感情が顔をよぎったあと、アレックスはとてもほっとした表情になった。「そうだったの。今日は……送ってくれて本当にありがとう。おやすみなさい」
 ジャックは閉まったドアをしばらく見つめた。アレックスの友達が現れなかったらどうなっていただろう? バイクに向かって歩きながら、さっきのアレックスの言葉を思い出した。
“少しの間なら自分をごまかせても、そのうちぼろが出る”まったくそのとおりだ。じゃまが入ってよかった。僕とアレックスは違いすぎるほどかけ離れていて、将来なんて想像できない。彼女はサラブレッド、僕は駄馬。プリンセスとろくでなし。
 バイクにまたがって、額をかいた。おかしな話だが、生まれて初めてほかの誰かになりたかった。
 ジャックはアレックスの部屋を見あげた。窓からもれる光がバルコニーの黒い鋳鉄製の手すりを照らしている。暗くなっていく中で、温かな光は灯台の明かりのようだった。いったい彼女は僕になにをしたのだろう?


*この続きは製品版でお楽しみください。

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