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ロミオとジュリエットの結末

ロミオとジュリエットの結末


発行: アンジェリカ
シリーズ: アンジェリカ
価格:900pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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解説

ジュリエンヌたったひとつの願いは……!?

隣国キアロモンテから遊学に来たアントニエッタ王女。その王女付き女官に配属されたジュリエンヌには、幼い頃に婚約したフェルディナンがいた。護衛騎士である美しいフェルディナンを愛しているジュリエンヌだが、彼の心はアントニエッタ王女に……? そんなジュリエンヌにキアロモンテの外交官であるロメオが近づく。ロメオとジュリエットの恋を再現できる、と囁くロメオ。だがジュリエンヌはフェルディナンへの愛を貫く。それが報われぬ恋であったとしても。せつないすれ違いのファンタジーロマンス!

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

 フェルディナンが戻ってきたら挨拶だけして帰るつもりであったはずなのに…なぜかジュリエンヌはこうして彼の私室のソファに一人腰を下ろしている。
 ジュリエンヌが彼の仮の婚約者になったのが三歳の時。今年二十三歳になったジュリエンヌとしては婚約者を足掛け二十年やっているため、彼の部屋も見慣れたものである。小さな頃はよくこの部屋で本を読んでもらったりしたものだ。
 それでも部屋の持ち主が大人になると同時に部屋も大人になる。玩具や童話の類で溢れていた部屋は、いつの間にか学術的な文献や歴史の本に取って代わり、昔の面影はまったく見当たらない。それでも、まったく知らない場所と思わないのはこの部屋の空気……ひいてはこの部屋の持ち主の空気が変わらないからだろう。
 それでも、持ち主のいない部屋というのはどうにも落ち着かなく、ジュリエンヌは小さく溜息を吐いた。
 ──どうしてこうなったのだろう
 まさにそんな気持ちである。
 寝室で着替えを済ませた彼が、何か飲み物を持ってくるとこの部屋を出たのが少し前のこと。
 何とも落ち着かない気分で、扉に視線を向ければ、それと同時に廊下に続く扉が開いてトレイを片手にフェルディナンが姿を現した。その瞬間に視線がしっかりと合って、彼は一瞬瞳を瞬かせた後可笑しそうに笑った。
「落ち着かない?」
 ローテーブルにトレイから─|黒すぐりのリキュール《クレーム・ド・カシス》瓶とグラス、チーズやナッツなどを並べてフェルディナンがジュリエンヌの隣に腰を下ろす。
「知っているはずなのに……知らない気がして……でも見慣れている部屋だから……何だか変な気分です」
 彼の問いに素直に答えれば、彼が再び可笑しそうに声を上げて小さく笑った。
「これはジュリエンヌが今日持ってきてくれたらしいね?」
 リキュール瓶の栓を抜きながらかけられた言葉にジュリエンヌは小さく頷いた。
「初物です。今年の黒すぐりは甘みが強いので、去年とは違った風合いが楽しめますよ」
 氷が入ったグラスにリキュールが注がれて、甘酸っぱい香りが室内に広がる。ジュリエンヌにとっては馴染み深い香りだ。
 二人でグラスを合わせて、口に含めば口内に香りと同様に甘酸っぱい味が広がる。
「確かに……今年は甘さが強いかな」
 口に含んで少しだけ顔を顰めたフェルディナンにジュリエンヌは小さく笑う。甘いものがそんなに得意ではないはずなのに、こうしてジュリエンヌに合わせて飲み物を選択してくれるのは彼の優しさだろう。
 こんな優しさに包まれながら、騎士団内であった面白可笑しい話を彼から聞いて二人で笑い合うのがジュリエンヌの楽しみだった。決して自分は悪乗りしない癖に、他人のそれを面白がって見ているのが彼だ。偶に巻き込まれてその被害にあうこともあるらしいが、最終的にその場を収めて収束させるのが彼の役目。根っからのお兄ちゃん気質なのだろう。だからこそ、こうして彼はジュリエンヌにも実の妹よろしく……|実弟《シャルロ》以上に可愛がってくれる。
 ジュリエンヌに何かを押し付けたりしない。シャルロのように嫌がらせをしたりもしない。いつも目の届くところにいて、見守っていてくれる……それがフェルディナンだ。
 ──真夏日に涼しい木陰を作ってくれる大きな木の様な人……。
 ジュリエンヌはこうして守られている。
 では、そんな大きな木は誰が守ってくれるのか……。
 隣に腰を下ろしていても見上げるほど大きい。それは別にジュリエンヌが小さいというわけではない。ジュリエンヌは標準的な身長だ。元々このベレコヴォワは武の家系であり、この家に生まれた男子はまず間違いなく騎士になるものと決まっている。その血筋故か、身長は高く、肩幅は広く、身体を覆う筋肉は厚い。
 ぼぅっとフェルディナンを見上げていれば、そっと手からグラスが取り上げられて間合いを詰められる。彼の整った顔があと少しの距離に近づいてきたところで、脳裏にアントニエッタの顔が浮かび、反射的にジュリエッタは顔を逸らした。自分の取った行動に気が付いたのは、柔らかいものが自分の左頬に当たった瞬間である。
「ジュリエンヌ……?」
 唇を離したフェルディナンが訝しげな視線をジュリエンヌに寄越す。
 しかし、一番自分の行動に驚いていたのは他の誰でもないジュリエンヌ自身である。自分が理解できなくて瞳を何度も瞬かせれば、困った様にフェルディナンが小さく笑った。
 さらりと髪を撫でられて、そのままフェルディナンはジュリエンヌの毛先に口付ける。そのまま今度は頬を撫で、顎を捉えて啄むような口付けが落とされた。
「僕からの口付けは嫌?」
 至近距離で問いかけられて、ジュリエンヌはふるふると頭を振る。
 口付けが嫌なわけではない。
 ただ、アントニエッタを思えば申し訳なくなって居た堪れなくなったのだ。
 このまま妹でしかない自分が彼の口付けを受けてしまっていいのかと……本当に受けるべき相手は自分ではなく他にいるのではないのかと……そう思ってしまったのだ。
 頭を振って否定をしたことに、フェルディナンは穏やかに微笑んだ。彼が「良かった」とひとこと呟いて、ジュリエンヌの頬に手を添え、額、目蓋、鼻、頬……と順に唇を落としていく。そして、最後に軽くジュリエンヌの唇に落とされたそれは、ちゅっと軽いリップ音を響かせて離れた後、次に触れ合った時にはぬるりとジュリエンヌの口内に侵入した。

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形式

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