和書>小説・ノンフィクション>ボーイズラブ小説>年の差
解説
「この家にいたいのなら、私のセックスの相手をしてみろ」
事故で亡くなった母親の願いを叶えるため、祖父である周一郎に会いに藤ノ宮家にやってきた弘人だが、彼には秘密があった。ひとつは本当の名前を隠し、弟である光の名前を名乗っていることだ。だが、資産家である藤ノ宮家で弘人は周一郎の甥であり片腕でもある久遠に秘密を握られてしまう。秘密を黙っていることと引き換えに弘人は久遠に身体を提供しなくてはならなくなるのだが!?
事故で亡くなった母親の願いを叶えるため、祖父である周一郎に会いに藤ノ宮家にやってきた弘人だが、彼には秘密があった。ひとつは本当の名前を隠し、弟である光の名前を名乗っていることだ。だが、資産家である藤ノ宮家で弘人は周一郎の甥であり片腕でもある久遠に秘密を握られてしまう。秘密を黙っていることと引き換えに弘人は久遠に身体を提供しなくてはならなくなるのだが!?
抄録
「嘘をついたままでは自分が辛いだろう」
久遠が弘人の瞳を覗き込んでくる。
「でも、俺……」
黙り込んで俯くと久遠の腕が伸びてきて、そのまま大きな胸に抱き寄せられた。
「またそんな泣きそうな顔をする」
まるで自分の存在を丸ごと包み込み、すべてのものから守ってくれるかのような抱擁だった。心地よさに目を閉じかけた時、額にそっとキスされた。
「弘人……」
ふたりの間に甘やかな空気が立ちこめる。心臓が騒ぎすぎて、自分の鼓動の音を久遠にも聞かれてしまうのではないかと思った。
「……あの、俺、喉が渇いちゃった。下で何か飲む物でももらってくるね」
久遠の腕をすり抜け、逃げるように部屋を飛び出した。ドキドキしている胸を押さえながら廊下を歩いていると、そんな自分が馬鹿に思えてきた。
少し優しくされただけでこんなに動揺するなんて、どうかしている。これじゃあまるで、久遠のことが好きみたいじゃないか。
好き……?
自分で思っておいて、その言葉に激しく動揺した。
好きってなんだ、好きって。相手は男で、しかも自分を追い出すために、いやらしいことを仕掛けてくるような人間なんだぞ。いくらセックスしたからって、あんなのはなんの意味もないことなんだ。それに、ここから出ていけば、もう関係なんてなくなってしまう相手で――。
だけど認めたくなくても自覚があった。確かに自分は久遠に惹かれている。
弘人は少し長居しすぎたのかもしれないと思った。長く過ごせば過ごすほど、この家とも久遠とも離れがたくなる。
周一郎には瑞季の言葉を伝えられた。きちんと受け止めてもらえなかったが、久遠の言う通り、自分はやれるだけのことはしたのだ。後はあのルビーの指輪さえ瑞季のところに持ち帰ることができれば、自分の目的はすべて達成される。
いっそのこと、と弘人は真剣に考えた。久遠の持っている鍵を借りて、あの部屋からひそかに指輪を持ち出すというのはどうだろうか。急用ができたと嘘をついて、一旦北海道に帰って瑞季の墓前に持っていく。そしてすぐ、またここに戻ってくるのだ。あの部屋は一か月に一度しか人が入らない。こっそりと戻しておけば、気づかれることはないはずだ。
さっき久遠が鍵を机にしまうのを見たので、保管場所はわかっている。自分さえ決断すれば、不可能な計画ではないのだ。
危険な賭だが、今の弘人にはそれが一番いいことのように思えた。
早くここから出ていかないと自分が辛くなる。
みんなとの、久遠との別れが、きっと辛くて辛くて、耐えられないほどに苦しくなる。
だから、そうなる前に早く――。
*この続きは製品版でお楽しみください。
久遠が弘人の瞳を覗き込んでくる。
「でも、俺……」
黙り込んで俯くと久遠の腕が伸びてきて、そのまま大きな胸に抱き寄せられた。
「またそんな泣きそうな顔をする」
まるで自分の存在を丸ごと包み込み、すべてのものから守ってくれるかのような抱擁だった。心地よさに目を閉じかけた時、額にそっとキスされた。
「弘人……」
ふたりの間に甘やかな空気が立ちこめる。心臓が騒ぎすぎて、自分の鼓動の音を久遠にも聞かれてしまうのではないかと思った。
「……あの、俺、喉が渇いちゃった。下で何か飲む物でももらってくるね」
久遠の腕をすり抜け、逃げるように部屋を飛び出した。ドキドキしている胸を押さえながら廊下を歩いていると、そんな自分が馬鹿に思えてきた。
少し優しくされただけでこんなに動揺するなんて、どうかしている。これじゃあまるで、久遠のことが好きみたいじゃないか。
好き……?
自分で思っておいて、その言葉に激しく動揺した。
好きってなんだ、好きって。相手は男で、しかも自分を追い出すために、いやらしいことを仕掛けてくるような人間なんだぞ。いくらセックスしたからって、あんなのはなんの意味もないことなんだ。それに、ここから出ていけば、もう関係なんてなくなってしまう相手で――。
だけど認めたくなくても自覚があった。確かに自分は久遠に惹かれている。
弘人は少し長居しすぎたのかもしれないと思った。長く過ごせば過ごすほど、この家とも久遠とも離れがたくなる。
周一郎には瑞季の言葉を伝えられた。きちんと受け止めてもらえなかったが、久遠の言う通り、自分はやれるだけのことはしたのだ。後はあのルビーの指輪さえ瑞季のところに持ち帰ることができれば、自分の目的はすべて達成される。
いっそのこと、と弘人は真剣に考えた。久遠の持っている鍵を借りて、あの部屋からひそかに指輪を持ち出すというのはどうだろうか。急用ができたと嘘をついて、一旦北海道に帰って瑞季の墓前に持っていく。そしてすぐ、またここに戻ってくるのだ。あの部屋は一か月に一度しか人が入らない。こっそりと戻しておけば、気づかれることはないはずだ。
さっき久遠が鍵を机にしまうのを見たので、保管場所はわかっている。自分さえ決断すれば、不可能な計画ではないのだ。
危険な賭だが、今の弘人にはそれが一番いいことのように思えた。
早くここから出ていかないと自分が辛くなる。
みんなとの、久遠との別れが、きっと辛くて辛くて、耐えられないほどに苦しくなる。
だから、そうなる前に早く――。
*この続きは製品版でお楽しみください。
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