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和書>小説・ノンフィクションハーレクインシルエット・ディザイア

涙にぬれた口づけ

涙にぬれた口づけ


発行: ハーレクイン
シリーズ: シルエット・ディザイア
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ダイアナ・パーマー(Diana Palmer)
 シリーズロマンスの世界で今もっとも売れている作家の一人。総発行部数は4200万部を超え、ニューヨークタイムズを含む各紙のベストセラーリストにもたびたび登場。かつて新聞記者として締め切りに追われる多忙な毎日を経験したことから、今も精力的に執筆を続けている。ジョージア州在住。大の親日家で、日本の言葉と文化を学んでいる。

解説

 秘書学校を出たばかりのケイシーは就職の面接に出向いた。大富豪キャリスター家が、秘書を探していると聞いたのだ。キャリスター家の当主ギルは、ゴージャスな雰囲気を持つ男性でしばしば雑誌の表紙も飾っているらしい。モデルのような美女たちがそんな言葉をささやき合うなか、ケイシーは面接を待つ列に加わった。だが面接室に入り、机の向こうに座る男性を見て、彼女は凍りついた。端整で男らしい顔に、嘲るような冷笑を浮かべてこちらを見ている。場違いな雰囲気の私のことを、心のなかでせせら笑っているのね。うわの空で面接を終えたケイシーの耳に、侮辱の言葉が届いた。「秘書に女性としての魅力はいらないから、君に決めたよ」

抄録

 突然、網戸が開き、ギルがポーチに出てきた。ブロンドの髪はまだ湿り気を帯び、毛先がところどころ跳ねている。青いチェックのウエスタンシャツに洗いたてのジーンズ、こぎれいなブーツ。いかにも働くカウボーイが身なりを整えてきたって感じね。ケイシーは一世紀前のカウボーイを想像してみた。
「修理工は来たか?」ギルはケイシーを見つけると、ぶっきらぼうにきいた。
「ええ、納屋に案内しておいたわ」
 ギルは優雅な動きで階段を下り、大またで納屋へ向かった。五分ほどたって、彼と修理工が納屋を出てきた。二人は握手をし、修理工は帰っていった。
「ヒューズだ」ギルはかぶりを振りながら階段を上ってきて、ケイシーの隣に腰を下ろした。「たった一本のヒューズのせいで配電が全部だめになるなんて。信じられないよ」
「ささいなことがときに大問題を引き起こすものよ」彼といると、ケイシーは落ち着かなかった。
 ギルは彼女の背後に片腕をまわし、ぶらんこを動かした。「君はいい香りがするな、ケイシー」ものうげに言う。「薔薇を思わせる香りだ」
「私、香水にアレルギーがあって。ひどいくしゃみが出ないですむのは花の香水だけなの」
「うちのおちびさんたちは?」
「ミセス・チャーターズと一緒にキッチンでクッキーを作っているわ」ケイシーはほほ笑んだ。「二人とも料理が好きなのね。私もよ。私たち、ミセス・チャーターズからいろいろ教わったわ」
 ギルは暗闇のなかで彼女を見下ろした。彼の片手がケイシーの編んだ髪に伸び、そっと引っ張った。「君は謎めいている」ギルはささやいた。「僕は君についてあまり知らない」
「話すほどのことはないわ。平凡な人間よ」
 ギルが身じろぎした。ケイシーは彼の力強い太ももが脚に触れるのを感じた。ちくちくと刺すような快感が全身を覆う。息をすると、のどにつかえるような気がした。接近しすぎだわ。
 ケイシーは彼から離れようとしたが、もう遅かった。たくましい腕に抱き寄せられ、力強い唇でぶらんこの背に頭を押しつけられた。そうして、ギルは思いのままに彼女の唇を貪《むさぼ》った。
 抵抗したい気持ちもあったが、実際は、すっかり力が抜けていた。ケイシーは背を伸ばして彼の首にしがみつき、唇を開いて彼を迎えた。ギルが体をこわばらせ、ためらい、息をのむのがわかった。次の瞬間、彼の唇は荒々しく無慈悲なものに変わった。彼はケイシーを膝の上に引き寄せて抱きすくめ、唇が腫《は》れてひりひりするまでキスをした。
 ギルは彼女の上唇をついばみながら、懸命に息を整えた。「僕にこんなことをさせないでくれ」
「私よりあなたのほうが体が大きいのよ」ケイシーは息を切らしながらつぶやいた。
「そんなのはまるで言い訳にならない」
 ケイシーの指が彼の唇をなぞってから下へ向かい、広い胸の上で止まった。彼女は驚きとともに厚く引き締まった唇を見上げた。こんなにハンサムで魅力的で裕福な男性が私のような女に目を向けるなんて。たぶん彼には眼鏡が必要ね。
 ギルが彼女の卵形の顔に触れ、柔らかな輪郭をたどる。温かく湿った暗闇が突然、遠く離れた異国になった。ケイシーは故郷に帰ってきたかのように感じた。感情の赴くままに、彼女はギルの腕を唇でたどり、曲げた肘に顔を埋《うず》めた。ギルの表情がこわばり、息づかいが荒くなった。引き締まった手が彼女の顎からのどを伝い下り、シャツドレスのいちばん上のボタンの上でためらうように止まった。
 ケイシーは彼を見上げた。体は今まで感じたことのない切望と喜びに燃えていた。
「ケイシー」ギルがささやき、長い指が官能的な動きでいちばん上のボタンを外し始めた。それが外れた瞬間、ケイシーの唇から低いあえぎがもれ、体がびくっと動いた。これは彼女にとって初めての世界なのだと、ギルは悟った。
 開いたばかりの襟の間から、彼の手が少しずつ滑り込んでいく。ギルは腕のなかのケイシーを見下ろした。彼女は僕にすべてをゆだねている。彼の体は欲望に震えた。
 だが、鎖骨の辺りの柔らかく温かい肌に触れた次の瞬間、家のなかから子供の笑い声が聞こえてきて、玄関のドアが開いた。
 ギルはあわててケイシーを座らせ、ぱっと立ち上がった。
「パパ、おかえり!」ベスが叫び、ジェニーと一緒に父親にかけ寄った。ギルは二人を抱き上げ、優しくキスをした。
「私、その……さっき頼まれた手紙を口述筆記する便箋《びんせん》を取ってくるわ」ケイシーも立ち上がった。
「行かなくていい」ギルの声はまだ少しかすれていた。「もう寝るんだ、ケイシー。手紙はすぐでなくていい。午前中に、ポーリーンにコンピュータのレッスンをしてくれ。彼女が代わりに牛の記録を入力できるように。ジョンは今晩遅くまで戻ってこないし、明日も早くから牛の品評会でサンアントニオに行く。オフィスのほうに急ぎの仕事はないよ」
 ケイシーは失望と安堵《あんど》を同時に味わった。ギルの要求を拒むことがだんだん難しくなっていく。ほんの数週間前まで、自分がこんなにみだらな女だとは思いもしなかった。どうすればいいのかしら。
「わかった、今夜はここまでにしておくわ」ケイシーは懸命に緊張を押し隠そうとした。「おやすみなさい、おちびさんたち」ベスとジェニーに笑顔を向ける。「ぐっすり寝なさい」
「お話して、ケイシー」ベスがねだった。
「今夜はパパがお話をしてあげるよ。ケイシーは疲れているからね。わかったかい?」ギルが言った。
「わかったわ、パパ」ジェニーはつぶやき、眠そうに頭を父親の肩に預けた。
 父娘《おやこ》は一緒に二階へ向かった。ケイシーはギルと目を合わせないまま廊下を歩いていき、自分の部屋へ向かった。私はぐっすりなんて眠れないわ。


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