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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン文庫

小さな悪魔

小さな悪魔


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン文庫ハーレクイン文庫コンテンポラリー
価格:500pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アン・メイザー(Anne Mather)
 イングランド北部の町に生まれる。息子と娘、二人のかわいい孫がいる。自分が読みたいと思うような物語を書く、というのが彼女の信念である。ハーレクイン・ロマンスに登場する前から作家として活躍していたが、このシリーズによって、一躍国際的な名声を得た。

解説

白々とした冬の館――年若いジョアンナは、悪魔の異名を持つ娘アニヤを躾けるために、家庭教師として赴いていた。アニヤの父ジェイクもまた顔に、悪魔のように痛ましい傷があり、世捨て人のように暮らしている。だが、20も年の離れたこの人は、ジョアンナに女性としての意識を呼び覚ます謎めいた魅力があった。ある日、アニヤの悪口を吹聴する家政婦を叩き出す事件が起こる。「べっぴんさんとふたりきりで楽しみなさるがいい」去り際の家政婦に、まるで男女の関係があるかのように揶揄され、以来、ジョアンナはジェイクに避けられるようになって……。

抄録

 ジョアンナは赤くなった。「アントニアはどこにいるんです?」
 ジェイクは重苦しくため息をもらした。「見当はついている」彼は続けるべきかどうかためらってから肩をすくめた。「山の上に羊飼い小屋があって、ときどきそこに行っているらしい。ここから三キロほどのところだが、きのうは霧がひどかったのであそこに向かうのは無理だった」
「そのこと……きのうからご存じだったんですか?」
「家のまわりと森や村を探したあと、残るはあそこしかないと考えたんだ」
「それならなぜ?」
「きのうのうちに探しに行かなかったか?」彼は頭を振った。「君にはこのあたりの事情がわかっていないらしい。今の季節にはよくあることだが、霧が立ちこめると、ぼくみたいな素人の登山家にとってあの山は危険なんだ。本職の救助隊でさえ霧が晴れるまで山には入らない」
 ジョアンナは窓の外に目を向けた。「でも、こんなに晴れていますわ」
「たった今晴れてきたところだ。着替えたらすぐあの子を探しに行ってみる。アニヤが運よくあそこに行き着いているといいが」
「あの子は怖がっていないでしょうか?」
「アニヤが?」心配そうな響きの中にも娘に対する一種の誇りが感じられた。「あの子は暗闇を怖がったりしないし、どこに行くにもビンザーがいっしょだから大丈夫だ」
「ビンザー?」
「きのう君が見たシープドッグ」彼は疲れたようにふっと息をついた。「じゃ、失礼」
「私も行っていいでしょうか?」皮肉っぽいまなざしに出合って、ジョアンナは頬を赤くした。「もちろん、アントニアを探しに」
「アニヤと呼びたまえ。そのほうがあの子も親しみを覚えるかもしれない。大して期待は持てないが」
「それで、連れていっていただけますの?」
「丈夫なウォーキングシューズはある?」
 ジョアンナはサンダルを見下ろした。これでは役には立たないだろう。「デザートブーツなら持ってますけど」
「デザートブーツ? 聞いたことないな」
「スエードの、くるぶしまでのブーツで、とても丈夫ですわ」
「結構」階段のほうに長い脚を踏み出しながら、彼は言った。「十分で支度して。コートも必要だろう」
 十分では朝食をとる時間も紅茶に文句をつける時間もなさそうなので、ジョアンナはトーストにバターとジャムを塗りつけて二階に持って上がった。
 起きたままのベッドのせいで部屋がだらしなく見える。ブーツのひもを締めたあと、手早く枕をたたきカバーを引き上げた。そのあと二分ほど残っていたので、ジョアンナは子ども部屋をのぞいてみようと思い立った。アニヤの身のまわりのもの、お気に入りのおもちゃでも見れば、彼女に近づくためのヒントが得られるかもしれない。最後のひと口のパンを飲みこみ、シープスキンのジャケットに腕を滑りこませながら廊下に出て、どのドアをあけたらいいものか、ざっと見渡した。自分の部屋とバスルームのドア以外に四つのドアがあるので、子ども部屋がどれかわかるはずもなく、彼女は唇をかんだ。
 ジョアンナは踊り場まで歩いて振り返った。階段から一番遠い端にある二つのドアはどうやらジェイク・シェルドンの部屋らしい。彼女は衝動的に残った二つのドアのひとつに近づき、耳を澄ました。でもドアは古くて厚く、そこから物音がもれてくるとは思えなかった。そして古いドア特有の鍵穴に気づき、ジョアンナはかがんで小さな穴から中をのぞいた。
「残念ながらはずれだ、ミス・シートン」背後からの嘲笑に赤くなって立ち上がり、ジョアンナは階段を上りきったところに立ってこちらを見ている男性を振り返った。「君が興味を持っていると知っていたら、ドアをあけておいたのに」意地の悪いほのめかしを打ち消す言葉を探して、彼女は唇をかみしめた。
「アニヤの部屋を探していたんです」皮肉っぽくゆがんだ唇を見ないようにしてつぶやいた。「どの部屋かわからなくて」
「君ののぞいていた部屋がそうだ」ジェイクはさっと彼女のわきを通り過ぎてドアをあけた。「今はゆっくり案内する暇はないが。でも、もし本当にここが見たかったのなら……」ジェイクはいらだたしげなジェスチャーをし、ジョアンナはばつの悪い思いで彼の前を通って中に入った。
 ジェイクは着替えを済ましていて、きのうの粗織りのチェックのシャツはいくらかましなコットンシャツに替わっている。ぴったりしたジーンズ、ダークブルーのコーデュロイジャケットを着た彼の前を通り過ぎたとき、アフターシェイブの香りがつんと鼻をついた。この男性には何かしら心を乱されるもの、傷跡のある男っぽい顔立ちによっていっそう強調された男性的魅力といったものがある。ジョアンナは今まで男性に対してこんな印象を抱いたことはなく、こんなふうに感じるのは自分に対する彼のあからさまな無関心のせいなのだろうと思った。
 子ども部屋もジョアンナの部屋と大差なく、冷たいむき出しの床に時代遅れの家具が置かれた、あまりにも実際的な部屋だった。階下でも不思議に感じたことだったが、ここにも人形や女の子らしいおもちゃは皆無で、ベッドわきに積んである本にしても少年の読むような冒険物語や年鑑のたぐいだった。ベッドはくしゃくしゃで、きのう父親にしかられたあと、少女がこっそり抜け出したときのままになっていた。そして部屋全体には、ここに住む人の魂がまださまよっているかのような、荒涼とした、孤独な空気が漂っていた。
「ご感想は?」


*この続きは製品版でお楽しみください。

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