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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・イマージュ

シンデレラの十年愛

シンデレラの十年愛


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・イマージュ
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 スカーレット・ウィルソン(Scarlet Wilson)
 スコットランド西海岸在住。8歳で初めて物語を書いて以来、ずっと創作活動を続けている。熱心な読書家で、児童文学作家イーニッド・ブライトンを読破したのち、人気の大作シリーズなどへと移行し、やがてミルズ&ブーン社のロマンスにたどり着いた。医療従事者でもある彼女にとって、医療現場と恋愛を描くメディカル・ロマンスは夢の取り合わせだと語る。

解説

たとえ実るはずのない片恋だとしても、彼を想い続けた“十年愛”に悔いはない。

19歳のルビーは旅先のパリで新年を迎えようとしていたとき、友人とはぐれたうえ、浮かれ騒ぐ群衆にのみこまれてしまった。困りはてた彼女を救ったのは、美しい瞳と黒髪のアレックスだった。名前しか知らないにもかかわらず彼に魅了され口づけを交わしたが、その後、迎えに来た黒ずくめの男たちとともに彼は去っていった。彼から連絡をするという約束もついぞ果たされぬまま、ルビーはロンドンに戻ってから報道でアレックスの正体を知った――なんと彼は、ヨーロッパにある公国の皇太子アレクサンダーだったのだ!つまり、平民の分際で彼と再会したいなんて、望むべくもないのね。それでも恋心を捨てきれず10年が過ぎた頃、彼が突然目の前に現れ……。

■2016年度RITA賞の最終候補に2作品同時にノミネートされた、いま飛ぶ鳥を落とす勢いの実力派作家スカーレット・ウィルソンのシンデレラストーリーをお届けします。最終候補のうちの1作である本作は、アレックス皇太子の幼い娘も交えた感涙必至の珠玉作です!

抄録

「手遅れにならないうちに子どもを産みたいというのがソフィアの最期の望みだった。嫌だとは言えなかった。ソフィアのことを大切に思っていたから。ぼくらに子どもが生まれれば、その子が二つの国の運命を握ることになる。ソフィアはたった一人の跡取り娘だった。彼女が死んでしまえば、そこで国が完全に途絶えてしまう。ぼくらは二人とも、それを望まなかった」アレックスは唇を強く噛みしめた。「きみにはもうわかっているだろうが、ソフィアの父王が死ねば、アナベルがレルナ国の女王になる。もしアナベルがまだ幼ければ、父親であるぼくが、ユーロニアとレルナ、二つの国の摂政となる」
 アレックスは顔を上げ、正面からまともにルビーを見据えた。悲劇に見舞われた幼なじみとの再会と約束。彼らは結婚し、子どもをつくった。絆を強め、二つの国の未来を安泰なものにした。なんと立派なことだろう。ルビーは込みあげる苦い思いをこらえようと必死だった。それでもわずかな救いがあった。アレックスは、ソフィアが彼のすべてだった、とは言わなかった。ソフィアのことを大切に思っていた、とだけ語っていた。
 ルビーは声が震えるのを感じながら、手に持ったグラスをもてあそんだ。「とても愚かな質問なのはわかっているんだけど、ほかに方法はなかったの? つまり、その……妊娠が、病状に影響したりはしなかったのかしら? そのタイプのがんになったら、妊娠は避けたほうがいいと忠告されるのだとばかり思っていたわ」
 アレックスは真剣な顔をした。「ソフィアは心底、一本気な女性でね。いずれ自分が死ぬとわかっていても、子どもを産むことを何よりも優先していた。妊娠中でも何かしらの化学療法を受けられたんだが、彼女は拒んだ。出産直後にいくつか受けたけれど、ひどく衰弱し、疲れ果てていて、アナベルと一緒に過ごす時間を延ばすためだけに治療を受けていた」
「それで、アナベルと一緒にいられたの?」
 母親の死がアナベルにどんな衝撃を与えたのか、ルビーは探り出そうとしていた。アナベルはまだ、ほんの赤ん坊だった。それは間違いない。そのとき起こったことが、アナベルの未来に影響を与えたりするだろうか? 幼児が最初に記憶を形成する時期については、さまざまな議論がある。三歳頃とするのがおおかたの研究者の意見だ。だがルビーはこれまでの仕事を通じて、その学説に疑問を抱くようなケースをいくつも見てきていた。
「数カ月を娘と過ごせたよ。可能な限りアナベルと一緒だった。ソフィアが死んだときも、彼女の腕の中にはまだ生後十一カ月だったアナベルがいた」
「あなたもさぞかし辛かったでしょうね」
「彼女はぼくの友達だった。子ども時代をともに過ごした仲間だった。父が病に倒れていなければ、ソフィアが乳がんをわずらわなかったら、どれだけ多くのことが違っていたか」彼の瞳に何かが影を落とした。辛い思い出が刹那に心をよぎったのだろうか。「ごめん、ルビー」アレックスがつぶやいた。
 ルビーは目頭を熱くした。もういいのよ、という言葉が瞳の奥できらりと輝いた。アレックスはすべてを打ち明けてくれていた。ルビーの目に光った涙は、二人だけにわかるその返事だった。
 アレックスが手を伸ばして、ルビーの頬に触れた――パリでしてくれたように。彼は指先でルビーの髪を取り、耳の後ろにかけた。
 長い沈黙の時が流れた。二人のあいだを、言葉にならないたくさんの想いが行き交っていた。
 アレックスがルビーの頬に触れた。彼女の胸には、あふれんばかりの感慨が湧き起こっていた。だが、やり場のない思いは消えていた。歳月が過ぎていた。十年間ずっと彼なしの日々を送ってきた。どれほどアレックスの影を消そうとしても、心の奥にいつも彼がいた。それでも、ルビーの思い出の中にいたのはあの大晦日のパリで出逢ったアレックスだ。人生のひとこまに残された遠い記憶でしかない。
 今目の前にいるアレックスが、現実の彼なのだ。一人の父親であり、二つの国の未来を背負って立つプリンス。国家への責務を果たすため、夢を諦めた男性。その彼の口から出た“ごめん”のひと言に、ルビーはこの上ない重みを感じた。
 十年間抱きつづけたのは、ありもしない幻だった。だが困ったことに、現実はその幻よりもさらに上を行ってしまっている。
 ルビーは頬に血が巡り、熱くなるのを感じていた。その一方で、アレックスはテーブル越しにルビーのほうへ腕を差しのべ、彼女の手を取った。
「感謝するよ、ルビー。ぼくのためにこんな大役を引き受けてくれて。娘のためにここまでしてくれて、本当にありがとう」
 そうね。彼の“娘のために”している仕事なのよ。ルビーはさっと立ちあがった。
「もう帰りましょう。宮殿に戻ってアナベルの保育プランをつくらなきゃ」
 アレックスはいつも親切だった。うっとりさせてくれる存在だった。そして今も、職務を果たそうとしているわたしに感謝してくれている。
 これはわたしの務めよ。アレックスはそのために、お金を出してわたしを雇っているんだから。
 アレックスに触れられたルビーの頬は燃えていた。素肌に刻印を押されたように熱かった。


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