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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクインSP文庫

白雪姫の奇跡

白雪姫の奇跡


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクインSP文庫
価格:400pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 シャーロット・ラム(Charlotte Lamb)
 第二次大戦中にロンドンで生まれ、結婚後はマン島で暮らす。大の子供好きで、五人の子供を育てた。ジャーナリストだった夫の強いすすめによって執筆活動に入り、百作以上の作品を著す。二〇〇〇年秋、多くのファンに惜しまれつつこの世を去った。

解説

ベリンダが恋人の兄ヴィンセントと初めて会ったのは、彼がふたりを別れさせるために自宅へ押しかけてきたときだった。きみとはただの遊びだ、弟には婚約者がいる――傲慢な態度でそう言い放つヴィンセントに反感を抱いた彼女は、きみと結婚したいと訴える恋人の言葉のほうを信じた。そして結婚の許しを得ようと先方の実家へ向かう途中、彼女は思わぬ事故にあい昏睡状態に陥ってしまった……。8カ月後、眠りから覚めた彼女の前に再びあの男が現れ、告げた。「弟は1週間前に結婚し、今はハネムーンを楽しんでいるよ」

抄録

 ヴィンセントが口をはさんだ。「まだ紹介していなかったな。ジェス、言うまでもないが、ベリンダ・ハントだ。ベリンダ、こちらはジェス・ミンターン。彼女はすべてに目を光らす怖い監督だ。彼女の言うことをよく守りたまえ、いいね」
「まあ、ヴィンセントったら! 真に受けてはいけないわ、ベリンダ。私にできることがあったらなんでも言ってちょうだい。そのために私はここにいるんですから。私がここを管理しているの。あなたにここで楽しく過ごしていただきたいわ」
 ジェス・ミンターンは働き者らしい手を差し出した。ベリンダはほほ笑んで彼女の手を握った。優しい目と物静かな声の彼女がいっぺんに好きになった。ジェスも同じ気持なのか、にっこり笑い返した。
「きっとここが気に入ると思います。とても居心地がよさそうですもの」
「することにも事欠かない」ヴィンセントが言った。「室内プールがあるし、厩舎には馬がいる。ビリヤード・テーブルもある。新鮮な空気の中を散歩するのも体にいいだろう。向こうの丘からの眺めはすばらしいんだ」
 ヴィンセントが窓を指差す。緑の丘の斜面が家のすぐそばに迫っているのが見えた。
「ベリンダが退屈するはずがないわ。さて、私はちょっと失礼してお茶をいれてきましょう」
 ジェスは足早に出ていき、ヴィンセントは暖炉のそばに立った。冷ややかな顔をしているが、こちらをちらとうかがう目の動きに、ベリンダは眉をひそめた。彼を知るにつれ、表情がだんだん読めるようになってきた。何かを隠しているみたいだ。
「ほかの患者さんたちはどこ? みんなでいっしょにお茶にするのでしょう?」
 ヴィンセントは肩をすくめただけで答えない。
「みんなは外に? それともじぶんの部屋なのかしら?」
 彼は妙に黙りこくっている。ベリンダの胸に不安が突き上げた。やはりヴィンセントは何かを隠しているわ。いったい何を?
「ほかにも患者がいるんでしょう?」ベリンダは青くなりながらきいた。
 ヴィンセントは冷ややかに見つめるばかりだ。
「どうなの? 答えてちょうだい!」
「いない」
 ベリンダは耳を疑った。「いないってどういう意味? 私ひとりきりなんてはずないわ」
「ひとりきりなんだ」
 ヴィンセントは平然と言った。彼の目は奇妙な光を帯び、唇には微笑さえ浮かんだ。からかうようなその微笑に、ベリンダはかっとなった。
「私だけでほかにひとりもいないんですって? いったいどういうこと? ここは回復者療養所じゃないのね。あの人は看護師じゃないわ。彼女は誰なの? 何者? 私は誘拐され、あの人が監視人ってわけ?」ベリンダはソファから立ち上がった。怒りで体がぶるぶる震えた。「私、こんなところにいるつもりはないわ。出ていきます」
 ヴィンセントをにらみつけてドアに向かったが、長身の彼が行く手をはばんだ。
「止めないでちょうだい!」
「ばかなことをするんじゃない」ヴィンセントはぴしりと言った。からかうような表情は跡形もなく消え、怒った目をしている。しかし彼は大きく息をすると、穏やかな声を取り戻した。「座りたまえ。君はまだ完全な体じゃない。感情を高ぶらせてはいけないな」
 ベリンダは彼の横をすりぬけようとした。彼は横に動いてまた道をふさいだ。ベリンダは怒りに任せて両手で彼の胸を押した。「邪魔をしないで!」
「君はここにいるんだ!」ヴィンセントはベリンダの手首をつかみ、ソファに引き戻そうとした。
「私に触らないでちょうだい! そばにいられるだけでもいやなのよ!」
 ヴィンセントの顔が激怒に引きつる。恐ろしい形相にベリンダはぞっとした。言われたとおり座るのが賢明かもしれない――とっさに思ったが、すでに遅かった。彼の指が手首に食い込み、乱暴に引き寄せられて体がぶつかった。その衝撃に喘いでベリンダは唇を開いた。
 ヴィンセントの顔が迫り、ベリンダは荒々しい力に征服された。ちょっとの間何ひとつ考えられず震えていた。こんなことが起こるはずがない。彼は私を嫌っているはず――私が彼を嫌悪しているのと同じくらい激しく。いったん引いた血がどっと顔に戻ってきた。これは罰なのだ。私を殴るかわりにキスで痛めつけているのだ。
 ふいにヴィンセントはつかんでいた手を放し、両腕で固くベリンダを抱きしめた。ベリンダは息もできず気が遠くなりそうだった。これは憎しみだわ、とベリンダは思った。唇がちぎれそうなキスに彼の憎悪を感じた。ベリンダの中にも憎しみが燃え上がる。そのあまりの激しさにくらくらし、目を開けていられない。立っている力もうせてベリンダはヴィンセントの腕の中でぐったりとなった。
 かたかたとティー・ワゴンを押してくる音にふたりは我に返った。ヴィンセントは渋々唇を離した。ベリンダは息を詰め、目を大きく見開いて、熱でもあるように頬をほてらせていた。ヴィンセントはといえば、彼自身の感情の爆発に驚き戸惑っているような顔をしていた。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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