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夜ごと、あなたに愛を囁く〜軍人公爵の淫らな悩み〜

夜ごと、あなたに愛を囁く〜軍人公爵の淫らな悩み〜


発行: ヴァニラ文庫
シリーズ: ヴァニラ文庫
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★☆☆1
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解説

俺を締めつけて誘うなんて、悪い子だ
百戦錬磨なおじさまが、無垢な乙女に恋の手ほどき

父が亡くなり、異母姉たちに金持ちの貴族の元へ売られることになったリーネ。愛されることに不慣れで流されるままに生きてきたが、父の元部下だというラディアスと知り合い、その包容力に惹かれていく。「俺の指が、おまえをかわいがっているんだよ」甘い囁きと共に与えられる、熱い口づけと淫らな愛撫。愛される悦びを教えられたリーネは……!?

※こちらの作品にはイラストが収録されています。
 尚、イラストは紙書籍と電子版で異なる場合がございます。ご了承ください。

抄録

「そういや、俺たちの前で濡れた服も脱げるような子だったな」
 川岸でのことを思い出したのだろうか、ラディアスはどこか納得したように言うと、リーネをちらりと見てため息をつく。
「……わかった。ここで突っ立ってる時間のほうがもったいないから、服は脱がないまま入るってことでどうだ」
「…………あなたが、それでよろしいのなら」
「はぁ。その意味、本当にわかって言ってるのかねぇ」
「え?」
「なんでもない」
 言いながら、ラディアスはリーネを少し大きめの浴槽の縁に座らせ、背中を覆うルロイと前を覆う自分の上着を取り払った。そしてその場に跪き、今度はリーネのブーツを脱がしてくれる。
「入れるか?」
 アンダードレス姿になったリーネは小さく頷き、ラディアスに背を向けて浴槽をまたいで足を入れた。指先が水面に触れ、波紋を作るのを眺めながら、少しずつ中に沈めていく。芯まで冷えているせいか、最初は痺れを感じていた。が、しばらく湯であたためたら、収まってくる。そうして時間をかけて湯に入り、ほっと息をついた。
「少し端に寄ってくれるか」
 ラディアスに言われたとおり行動すると、背後で彼が身体を沈めているのだろうか、湯が浴槽から豪快に溢れ出ていく。そして、すぐに両脇から現れた足によって、自分が彼の足の間にいることを知った。小さなリーネの身体は肩まで浸かれるが、体格が大きなラディアスはそうはいかない。視界に現れた彼の腕にはぴったりとシャツが張り付いていた。
 リーネはそれを見て、小さな手のひらで湯を掬い上げ、彼の腕にかけていく。
「こらこら、俺のことはいいから」
「でも、私のせいで」
「違う」
 水の動く音がして、後ろからぎゅっと抱きしめられる。
 たったひと言だというのに、彼の力強い声に惹き込まれてしまいそうになった。大丈夫、大丈夫。背中に触れる彼の胸を伝って、鼓動が聞こえてくる。
 穏やかで優しい、鼓動の音。
 それは彼の優しさを伝えているようだった。
「──あまり、そう自分を責めるもんじゃないよ」
 ふいに彼の手が動き、リーネの頭をがしがしと撫でた。その手のあたたかさに心が疼く。
「そんな娘の姿を、アーロンさんが見たいとは思わないからな」
 ふ、とつぶやかれたひと言に、どこか親しみを感じて振り返る。やはり。
「……父を……、知っているんですか?」
 そのときの彼の表情を見て、リーネは彼と向き合うように体勢を変える。そんな彼女の行動に、ラディアスは深く息をついて両腕を縁に預けて答えた。
「アーロンさんは、辺境伯の任を受けるまで王都にいてな。……俺の元上官だった。俺の隊にいるヤツらは、あんたの親父さんに世話になった者が多くいる」
 初耳だった。
 父はずっと辺境伯で、あの領地を守っているとばかり思っていた。
 年に一度の招集で王都へ向かうことはあっても、王都に住んでいたなんて話は聞いたことがなかった。しかし今になって考えてみると、姉たちがたびたび王都へ行っては、帰ってくるなり「戻りたい」とぼやいていた気がする。たいていそういうときは、留守番のリーネを呼びつけて買ったものの自慢をするため、覚えていた。自分が気にしていなかっただけで、父がもともと王都にいたことは考えればわかることだったのかもしれない。
「アーロンさんは、男気があって優しくて、……部下思いのいい人だったよ。それから、いろんな意味で親バカだった」
 いろんな意味とは、どういうことだろう。不思議に思うリーネに、彼は続けた。
「部下全員を我が子のように扱うんだ。夜通し酒を飲んで、そのまま朝を迎えたときが最悪だった。仮眠をとってる俺たちを抱きしめては、おはようって言いながら酒臭い顔で」
 それは、もしや。
「お髭じょりじょり……!」
「っはは、そうそう。それで起こすんだ。あれには参ったなぁ。……だから、事あるごとに抱きしめようとするのを、何度かわして逃げたことか」
 思い出を語るラディアスの声を聞きながら、リーネもまた父を思い出していた。彼の言うとおり、父は人を抱きしめるのがとことん好きな人だった。
「……騒がしい人だったよ、ほんと。あの人がそこにいるだけで、不思議と周囲が明るくなる。俺にとっても親父みたいな、太陽みたいな存在だった……」
 彼の語るリーネの知らない父の話は新鮮で、しかしそれでいていつもの父であることがわかるような内容だった。父はどこにいても父でいたことを知り、嬉しくなる。
「だから、アーロンさんが辺境伯になって王都を離れてからは、……いつもの毎日がつまらなく感じたよ。年に会えるのは一回だったが、そのときはいつも娘たちの話をしていた気がする。両手を広げると何も言わずに駆けてくる娘を抱き上げるのが、一番の楽しみだって自慢してたな。娘が笑うと自分も笑えてくるから不思議だって……、酒の席で親バカ全開になるから、俺たちは惚気でも聞かされてるような気分だった。それで決まって言うんだ。俺の娘はかわいい、世界一だ、誰にもやらん、でも──」
 途中で話を区切ったラディアスの視線が、ふいにリーネへ向かう。やわらかな琥珀色の瞳が優しげに揺らめいたと思ったら、彼が手を伸ばしてくる。
「ああ、そうか」
 言いながらリーネの頬を覆ったラディアスは、微苦笑を浮かべた。
「あんたは、ひとりで泣けない子か」
 彼の優しい声が、すんなり心へ落ちる。その指先は、まるで泣いてもいいと言うように、目元をなぞった。ほろほろと流れていく涙を拭う指先から、泣いていることを教えられる。


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