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和書>小説・ノンフィクションハーレクインハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル

侯爵と屋根裏のシンデレラ

侯爵と屋根裏のシンデレラ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ヒストリカル・スペシャル
価格:700pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 アニー・バロウズ(Annie Burrows)
 つねに本を読んでいるか、頭の中で物語を創作しているような子供だった。大学では英文学と哲学を専攻し、卒業後の進路は決めかねていたところ、数学専攻のハンサムな男性と出会い、結婚する決心をしたという。長年、2人の子供の子育てを優先してきたが、彼女の頭の中にある物語に興味を持ってくれる人がいるかもしれないと思い、小説を書きはじめた。

解説

ひとりで屋根裏部屋にいるほうが、孤独を感じなくてすむのに……。

家族を失ったヘスターは伯父の家の屋根裏に住み、下働きをしている。ある日、屋敷近くの道を歩いていたとき、勢いよく駆けてきた馬車に轢かれかけ、どぶに落ちてしまった。馬車から降りてくる男性を見て、彼女はあっと驚いた。黒髪に真っ黒な瞳、服まで黒ずくめの彼は、レンズボロウ侯爵――伯母から、従妹の見合い相手と聞かされている人物だった。彼は泥だらけのヘスターに蔑みの一瞥をくれると、謝るどころか罵りの言葉を放ち、連れの馬番に言いつけた。「時間を無駄にしている場合ではない、持ち場に戻れ!」そして再び馬車に戻り、伯父の屋敷へと走り去っていった。

■レディでありながら忙しく立ち働くヘスターと、そんな彼女の質素な身なりから家政婦だと思う傲岸不遜な侯爵。二人は事あるごとに火花を散らしますが、やがてその摩擦は恋の炎となって……。リージェンシー・ロマンスの旗手A・バロウズの傑作が誕生しました!

抄録

「編み物をやめて、話をしてくれ」身を乗り出し、怒りに震えている彼女の手に自分の手を重ねた。
 へスターはその手をさっと引き、身をこわばらせた。いや、これは彼女のほうが正しいだろう。ぼくはきわめて慎重に行動しなければいけないのだ。ぼくが彼女のことを真剣に考え始めたとトーマス卿が疑って、彼女をぼくの活動範囲から追い出す作戦に出てはいけないから。レンズボロウは手を引いて、ふたりのあいだのテーブルに置かれている、ほつれた毛糸を手に取った。
「話すって……」へスターの声はかすれていた。頬が赤く染まり、首まで赤くなっている。「何を? 話すことなんてある? ジュリアとフィービーのところへ戻って、わたしのことはそっとしておいて」
「まだだ」有無を言わせぬ口調だった。「政治の話がしたいんだ。どのみち、あの姉妹は政治的な意見など持っていないだろうし」
「わたしもそうよ。少なくとも、あなたのような男性が高く買ってくれそうな意見は持っていないわ」
 へスターの目が伯母を探した。その表情には心配と罪悪感が入りまじっている。レンズボロウは椅子をわずかにずらして、へスターの視界に彼女の伯母が入らないようにした。
「でも、きみの意見が奇抜だとしても、ぼくはちっとも驚きはしないよ。きっとぼくを楽しませてくれると思う。だから聞かせてくれ。ウェリントンがナポレオンに圧勝したことを、きみはどう思う?」
 へスターは思わず息をのんだ。彼が無神経なのは知っているが、苦しんで死んでいく人々のことを話題にして会話を楽しもうとするほど無神経な人だとは思わなかった。
 毛糸が落ちて、ぴかぴかに磨かれた寄せ木張りの床の上をころがっていくのもかまわず、こういう人に深い軽蔑の意を表するにはどんな言葉を使ったらいいかと懸命に考えた。
「あなたはワーテルローの戦いを輝かしい勝利だと考えているようね」非難をこめた声で言った。「どんな犠牲を払ってでもナポレオンを阻止するというウェリントンの決意を称賛しているんでしょう」
「きみは違うのか?」レンズボロウはにわかに身を乗り出した。もし彼女がぼくと反対意見の持ち主だったら、当てがはずれてしまう。
「大勢の人を死に追いやった彼は悪人よ。残された未亡人や孤児の悲しみを思えば、輝かしくもなんともない。復員しても、そのあとはいい生活ができるわけではないわ。国のために戦って手足を失い、仕事にも就けない生活に耐えなければいけないのよ。それなのに、政府からなんの援助もないのはひどいと思うわ」
 フォーリー大佐はレディ・へスター・クエルデンに会いたがるだろうな。彼女なら、傷の下にある彼の人間性を見てくれるだろう。相手の好き嫌いを見た目で決める人ではない。
「それで……政府は何をすべきだと?」
 本当に興味がありそうな声だったので、へスターは困惑して、彼に顔を向けた。「救済措置よ、もちろん。あなたのような立場の人は……」
 声がすぼんで消えた。彼の顔が一メートル以内のところにある。称賛らしき表情を浮かべた目がこちらに注がれていて、へスターは一瞬、何を言おうとしていたのか忘れてしまった。彼の目は真っ黒ではなく、琥珀色が散った焦げ茶色なのだと気づいた。
「ぼくのような立場の者は……なんだい?」続きを促す声があまりにも優しかったので、まるでレンズボロウ卿らしくないと、急に思えてきた。
 唾をのみ込んでも、彼の目から目を離すことができない。それが気に入らなかった。彼の目がちょっと変わった魅力的な色だと気づいたからといって、それがなんだというの? 彼の心は黒いままなのよ。
「そのための法案を通過させるべきよ。彼らは脅威だから世の中から排除しようというのはいけないわ。彼らの凶暴性がわたしたちに自由を確保してくれたのよ」
「議会に法案を通すには、ひとりが声をあげるだけではだめだ」
「侯爵でも?」
 彼がため息をつくのが聞こえた。
「あなたのような有力者は、やろうと思えば何かできるわ。たとえば、慈善団体はあなたがパトロンになってくれたら喜ぶでしょうね。寄付しようという人々の列ができるわ。寄付すれば、あなたのご機嫌を取ることができると思って」
「慈善団体か」レンズボロウは考えをめぐらせた。「信託基金でもいいな」
 弟の名前で基金を作れば、彼の連隊の扶養家族たちを救済してやれる。弟のいい追悼になる。どうしてもっと前にこういうことを思いつかなかったのか。
 この女性がぼくをその気にさせてくれたのだ。誰とも違う考え方と行動をする、この非凡な女性が。
「弟がワーテルローで戦死したんだ」静かに打ち明けた。
 へスターがはっと口に手を当てた。悲しげな彼の顔を見上げた彼女の目に悔いの涙が浮かんでいる。
「ごめんなさい。考えなしにしゃべってしまって。あなたを傷つけるつもりはなかったの……傷つけてしまったわけだけど。でも、あなたが身内を亡くしたと知っていたら、あんなことは言わなかったわ」
 彼女の嘆きを軽くしてやろうと、レンズボロウは説明した。「バートラムは戦闘を冒険とみなしていた。自分の好きなことを、思うようにやって死んだんだ」
 ようやくこの真実を声に出して認めると、痛む心に鎮痛剤が注ぎ込まれたような気がした。弟の死を命の無駄遣いだと考えていたから、こんなにも悲しかったのだと不意に気づいた。へスターの手に感謝のキスをしたくてたまらなくなり、レンズボロウは再び彼女の手を取った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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