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カリアキスの秘密の跡継ぎ

カリアキスの秘密の跡継ぎ


発行: ハーレクイン
シリーズ: ハーレクイン・ロマンス
価格:600pt
形式:XMDF形式⇒詳細 MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン ソニー“Reader”スマートフォン タブレット
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著者プロフィール

 ミシェル・スマート(Michelle Smart)
 イギリス人作家。ぬいぐるみより本を抱いて寝るのが好きだったというほど、生まれながらにして本の虫だった。まだ少女のころ読んだおとぎばなしに、ロマンスの片鱗を感じていたという。「本はいつも胸をときめかせてくれます。まるで初恋のように」と語る彼女は、自分の書くロマンスが、読者の心にもそんなときめきを届けてくれることを願っている。

解説

彼が愛しているのは私の体だけ。それを承知で結婚できるの?

出版社に勤めながら幼い息子トビーを一人で育てるジョアンは、アゴン国王の伝記を執筆するため、王国へ飛んだ。前夜、インターネットで見た王族たちの姿を目に焼きつけたまま。5年前、ジョアンは旅先でテオという男性と出会い、恋に落ちて、トビーを身ごもった。だが、それきり彼からの連絡はとだえた。そのテオに、アゴンの王子テセウスはうり二つだったのだ。テセウスこそテオだ。身分を隠して私を弄んだだけだったのね。予想どおり、再会した彼は別人のように冷ややかな態度で、ジョアンは決意を新たにした――トビーのことは秘密にしようと。

■テセウスが息子の存在を知ったのは偶然のこと。彼は激怒し、王室典範を盾に非情なプロポーズをしたために、二人の心の距離はさらに広がってしまいます。ハーレクイン・ロマンスの人気作家ミシェル・スマートの渾身作です。

抄録

 そのとき、すてきな男性だと思った。自分にチャンスがないことはわかっていた。彼は大好きな映画スターと同じくらい手の届かない存在だった。当時から彼の周囲には崇拝者が絶えず、誰もが彼の言葉に耳を傾け、彼のジョークに笑っていた。彼のような男性が自分みたいな娘に目をくれるはずはないと思った。せいぜいからかわれるのが落ちだと。
 その彼が私をかばい、守ってくれた。淡い恋心が燃えあがり、彼に夢中になったのも無理はない。
 それでも、自分の気持ちが通じると思うほど世間知らずではなかった。世の中はそんなに甘くない。ハンサムで長身のギリシア人はシャイで太ったイギリス娘に恋はしない。友達になるだけならまだしも、恋人? まさか。
 それがある日、友人たちと一緒に泊まっていたキャビンに彼が現れた。髪はぼさぼさで目が血走り、手にはジンの瓶を持っていた。
 初めてキスされたとき……あのときも彼の目には今と同じ表情が浮かんでいた。
 まさか酒に酔い、悲しみに暮れた男性にバージンを捧げることになろうとは思ってもいなかったけれど、後悔はしなかった。それも、トビーを授かったからではない。
 あの夜、彼は確かに私を必要としていた。それは嘘ではなかった。彼は酒でふらつく頭を私の胸に預けてベッドに横たわり、私は彼の髪を撫でながら話を聞いていた。兄弟と互いの強いライバル心のこと、十歳の誕生日に祖父からペンナイフを贈られ、三人で何時間も的当ての練習をしたこと、敗者には罰ゲームが待っていたこと。
 それから、いつどうしてそうなったのか、ふいに空気が変わり、彼が口をつぐんで、私の目をじっと見つめた。その目に浮かぶ表情は未知のものだったけれど、磁石のように引き寄せられた。
 夜空に星がなくてもかまわなかった。花火が上がっていなくてもかまわなかった。そんなものは必要なかった。きらきら輝くあの瞬間、私は彼のもので、彼は私のものだった。あの一夜、私は確かに必要とされ、愛され、求められた。それが恋する胸を希望とぬくもりで満たした。
 あのすべてが嘘だったなんて思いたくない。
 一時間前、期待に胸を躍らせてシャワーを浴びながら、やはりトビーのことを打ち明けなければならないと悟った。これ以上テセウスに黙っていることは良心が許さない。
 テセウスは傲慢でぶっきらぼうだけれど、寛大で思いやり深い一面もある。権力を持ってはいるものの、それを濫用することはない。確かにテオではない。でも、五年前に恋した男性の面影を感じる瞬間がある。
 伝記を書きおえるまでは待とうと思った。彼にとって伝記はすべてだ。口では愛を否定していても、祖父である国王を心から愛していることはわかっている。
 あと少しで片がつく。遅くとも二日後には伝記を書きあげ、真実を伝えることができる。彼の人生を引っくり返す真実を。
 ジョーは後ろめたさでいっぱいだった。テセウスに対するときめきと、重大な事実を隠している不安で、一緒にいる一秒一秒が苦しくてならなかった。兄がスキャンして送ってくれたトビーの絵を危うく見られそうになったときには、心臓が飛び出すかと思った。
 今またその心臓が早鐘を打っている。ただ、リズムはさっきとはまるで違う。彼のまなざしが私を食べてしまいたいと言っている。このミント色の膝丈のワンピースと黒のサンダルほどセクシーな装いは見たことがないとでもいうように。
 胃に蓄積された緊張と興奮がいよいよ喉から飛び出しそうになったとき、テセウスの手がうなじに伸び、髪にもぐりこんだ。彼はそのまま足でドアを閉めると、もう一方の手を頬に伸ばし、顔を寄せて唇を重ねた。
 もし体が自然発火するものなら、火を噴いていただろう。ジョーは全身がかっと熱くなり、下腹部に強いうずきを覚えた。テセウスの唇は力強くもやさしく、惑わすようでいて抑制されている。舌が唇を割って入り、頬の上で彼の指がやさしく円を描いた。
 何もかもが頭から押しやられ、テセウスの存在で埋めつくされた。かすかにコーヒーの香りがする熱い息、温かく力強い手、全身から発せられる熱気……。
 ジョーはテセウスの首に腕を回した。彼がさらにキスを深めながら腰に手を当てて引き寄せると、二人の体はぴったりと合わさり、ジョーは喜びにひたった。
 すると突然、テセウスが体を引き離し、キスは唐突に終わりを告げた。
 彼はジーンズのポケットに両手を突っこみ、目を閉じてののしり言葉を吐いた。「すまない。こんなつもりじゃなかった」
「私もよ」ジョーはたまらず顔をそむけた。自分の目にありありと浮かぶ罪悪感をテセウスに見られたくなかった。
「君は僕の頭をおかしくする」
 赤裸々なその告白に、ジョーははっとして視線を戻した。そこにあったのは欲望だった。彼女への欲望だった。
 危険な海へと流されている気がした。どうすればその流れから抜け出せるのかわからない。まして、頭から爪先まで体じゅうがうずいている。もしもう一度彼に触れられたら、私はみだらにもそれに応えてしまうだろう。
 これほど大きな隠し事をしながら、どうしたらキスなんてできるの? たとえ彼がトビーの存在を知ったとしても、そこから何かが芽生えるなんて夢物語にすぎない。あと数カ月もしたら、彼は花嫁探しを、お后探しを始めるのだから。
 テセウスは一拍分長くジョーの視線を受けとめ、それから乱暴にドアを開けた。
「行こう。君にそんな目で見られていたら、僕は自分の行動に責任を持てなくなる」
 ジョーはすぐには動けなかった。欲望と理性が頭の中で闘っていた。
 かろうじて理性が勝った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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