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和書>小説・ノンフィクションボーイズラブ小説兄弟

Love & Trust

Love & Trust

著: 榎田尤利
発行: 大洋図書
レーベル: SHY NOVELS シリーズ: Love & Trust
価格:893円(税込)
10ポイント還元
形式:MEDUSA形式⇒詳細
対応端末:パソコン スマートフォン タブレット
みんなの評価 ★★★★★17
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著者プロフィール

 榎田 尤利(えだ ゆうり)
 蟹座でO型。心が広いようで、実は根に持つタイプなのだそうです。でも記憶力が悪いので、なにを根に持っていたのか忘れてしまいます。それはそれで、平和。

解説

 「愛と信頼はワンセット」書類から盗品まがいのものまで何でも運ぶ美形の運び屋兄弟、天と核が経営する“坂東速配”にある日、厄介な依頼が! 預かったのはなんと生きている子供だった!? 厄介な荷物には厄介な揉め事が付きものだから、さあ大変。素直で優しい天の幼なじみ・正文に、核に固執する大物ヤクザ・沓沢。スキンシップ過剰、愛情過剰の坂東兄弟、天と核が夜の街で大暴れ! 毎日をクールにタフに、あきれた男たちが繰り広げる痛快愛情物語。

抄録

「寒いよ、アニキ」
「ああ、毛布が一枚あっちにいってるからな」
 あっちとは、つまり正文と子供の側である。
「ん〜……さむ……アニキ……」
 天が擦り寄ってきた。
「いいよ、おいで」
 抱き寄せて、体温を分けてやる。ベッドの端で正文が動く気配がしたが、無視した。べつに悪いことをしているわけではないのだ。
「あったけぇ……なぁ、アニキ、ぎゅうってしてよ」
「天、今じゃおまえのがでかいんだぞ」
「でかくてもおれが弟だもん。ぎゅうって、してくれよォ」
「甘ったれめ」
 リクエストどおりに抱擁してやると、ベッドがみしみしと軋んだ。兄弟とも身長一八〇を越えているのだから無理もない。
 正文がまた動く。子供も起きたらしい。背中側なので見えはしないが、おそらく子供の目を塞いだのだろう。教育上の配慮という奴か。
「ん〜しあわせ〜。アニキ、おはようのキ、」
「ちょっと、ままままま、待ったッ!」
 とうとう我慢の限界に達した正文の声はひっくりかえっていて、核はもう少しで笑いだすところだった。天は奇声に顔をしかめる。
「ンだよメソフミ。うるせーぞ朝っぱらから」
「あ、朝っぱらはこっちのセリフだよっ。は、裸で兄弟で、抱き合って、なにしてんの!」
「ああ? マッパじゃねーぞ。パンツはいてっぞ、ほら。…………おっと」
 朝ゆえの生理現象に気がつき、さすがの天もすぐに毛布を戻す。
「正文、おはよう。夕べは世話になったな」
「かっ、かっ、核さん、」
「その呼び方はなんだか水戸のご老公の脇侍みたいだなあ。ふたつしか違わないんだから呼び捨てでいいぞ」
「ええっ、そんなのダメだぜ!」
 背後から核を抱きしめながら天が口を尖らせた。
「おれのアニキを、どーしてメソフミが呼び捨てにすんだよっ。そんなのダメダメ!」
「じゃあ正文にもアニキって呼ばせるか?」
「だあめ! だってアニキはおれだけのアニキだもんッ」
「ふふ。我が儘な奴」
 濃紺のシーツの上、しなやかな二匹の雄豹のようにじゃれあう。
 兄弟にはいつものことでも、正文にとっては異常事態勃発なのだろう。ベッドの上にペタンと座ったまま口をパクパクさせていたが、やがて声の出し方を思いだしたようだ。
「と、とにかく離れてくださいッ」
「なんで」
「なんでって、テンちゃん!」
「なんでそんな大騒ぎすんだよ。兄弟なんだから仲が良くて普通だろ。あ、おまえひとりっこだからな、ヤキモチやいてやがんな?」
 ズレまくった返答に、正文がぶんぶんと首を振る。
「ちがーう!」
「だから大声出すなっつーの。おまえは昔っから、ちょっとしたことで騒ぎすぎなんだよ。またいじめっぞコラ」
「そ、そんな脅しはもうきかないぞ! おれはもう大人なんだ!」
「バーカ。大人ってのはなー、自分でおれは大人だ、なんて叫んだりしねーんだよ。なあアニキ?」
「まあそうからかうな天」
「ちぇ。アニキ優しいからな……な、おはようのキスして」
「ギャー!」
「正文も落ち着け。我が家の慣習だから気にしないでいい。見たくなかったら目をつむってろ?」
「そーだよ、目ェ閉じてろバカ。アニキ、んン…………」
「ん〜」
「ぎゃー! やめろー!」
 大騒ぎする正文を無視して、兄弟の『朝の慣習』は続いた。
 自分たちのスキンシップが、普通よりやや過剰だという自覚はあった核だが、正文の反応を見るに「やや」どころか相当度を越しているようだ。だが特に反省する気はない。世界でふたりきりの兄と弟である。愛し合っていてなにが悪いと思っているし、今更軌道修正は無理である。
 天にキスしてやりながら核が目を開けると、すっかり目を覚ましてしまった子供がキョトンとこちらを見守っている。正文は後ろを向かせようとしたのだがかえって興味を示してしまったらしく、そばににじり寄って観察しだす始末だ。
 しばらく兄弟をじっと見ていた子供は、やがてくるりと正文に向き直った。
 そして、顔を真っ赤にしている正文ににっこりと笑いかけ、小さな顔を寄せてくる。
 そしてちゅう、と自分も真似をしたのだった。
 言葉もない正文を、やっとキスを終えた兄弟が笑った。


*この続きは製品版でお楽しみください。

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